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魔法使い格付けチェック

 エリザが吸血鬼であることを知っている人間はどれくらいいるのだろう。

 ジル達3人が知る事となり、ついでにコバン。

『先生』は当然知っているんだろうな。

 コバンはあれから私達の事を付け回したりはしていないようだが、ネタに困ったら記事にするんじゃないかと思うくらいには信用していない。

 まあ、その時はまたブッ飛ばせばいいか。


「メル、ぼんやりしてどうかなさったのですか?」

「いや……別に、なんでもない」


 吸血鬼……血を吸わない吸血鬼。

 昼間はトロいお嬢様だが、夜の間は怖いくらい凄まじい力を発揮できる怪物。

 普段がこれだからこの目で見るまでは信じられなかったな。


「あの……この度はありがとうございます。わたくしのためにあんなに駆け回っていただいて、その……とても嬉しかったですわ」

「お前のためにやったわけじゃない。いつも通り気に入らない奴を殴っただけだ」


 軽く流すつもりで気の無い返事をしたが、エリザは私の手を取り声を大にする。


「それでも! わたくしは感謝しています!」


 これだ、トロいようで急に押しが強いときがある。


 この学校に押し込められてから、前以上に自分というものがよくわからなくなった。

 特にエリザといると怒りで歯止めが利かなくなるという事があまりない気がする……。

 はあ、妙な感じだ。


「あ、そうだ……」


 やる事があるのを思い出した。

 まだしばらくこの学校に留まるのなら、せっかくだしもっと多くの魔法を習得してみてもいいだろう。

 そしてそうなるとこれから起こりうるであろう問題への対策が必要になってくる。


「あら、どちらへ行かれるんですの?」

「ちょっと魔工研究室へね。あたしも杖をカスタムしてもらおうかと思ってさ」


 コバンの鎖は厄介だった。

 またあいつをブッ飛ばすにしても今のままでは面倒だ、こっちもあんな風に便利なものがあれば楽になるだろうからな。


 ***


 魔工研究室へとやってきた。

 中では相変わらずマリネッタ先生が魔道具だか機械だかわからない何かをいじっている。

 仕事が多くて大変だな、……その仕事を増やしに来たんだけど。


「おや、また来たのかい」


 私に気が付いたマリネッタ先生が作業の手を止める。

 今はミデットはいないようだ。

 できれば秘密にしておきたいからちょうどいい。


「なあ先生、ちょっと頼みがあるんだけど」


 杖のカスタムをしたいという話を切り出したが、それに対する返答はごくシンプルなものだった。


「ダメだ」


 優良生徒が持っているものらしいからこの答えは想定していたが、こうはっきりと言われるとちょっとショック。

 そこを何とかしてもらえないかなあ。


 その時、背中にゾワッとした寒気にも近い気配を感じた。

 ……嫌な予感がする。


「あら、あなたがそんなにやる気を出してくれてるなんて、先生嬉しいな」


 この声は……あの化物女!?

 慌てて振り返ると、確かにあの女が立っている。

 いつもどこにいるのかわからないがいい機会だ。

 あんたには色々と聞きたい事があるんでね。


「ちょうどいいや、あんたには聞きたい事が――」

「却下」


 ぐえっ! な、何だ今の、デコピンか!? 

 話しかけたとたんにあいつが私の目の前に移動し、指一本弾いたように見えたが……それで私は逆さま状態で壁に叩きつけられているのか?

 ちょっとデタラメだろう、というか教師が生徒をいきなり殴るなよ。


 恨めしそうな私に構わず、『先生』はマリネッタ先生と話し始めた。


「ねえマリネッタ? せっかくこの子がやる気を出してるの、杖のカスタムは私からもお願いしたいわ」

「お言葉ですが『先生』、あれは一定以上の成績を複数教員に認められた者だけが許されることになっています。そうでなければ危険だという事をあなたもご存知のはずでしょう」


 やっぱり難しいか。

『先生』がどういう訳か後押ししてくれるのは助かるが、マリネッタ先生が思ったよりも反論してくる。

 簡単にはいかないようだ。

 さすがの『先生』も何やら考え込んでいる。


「うーん……じゃあここで特別試験やっちゃおう。メル、これから地下へ降りて持ってくるべきだと感じたものを持ってきてちょうだい」


 何を言いだすかと思えば、そんなに軽く特別試験なんて言っていいんだろうか。

 それにしてもこの学校に地下があったとは。

 持ってくるべきと感じたものというのがよくわからないが、そのくらいなら問題ないだろう。


 しかし、その提案に対しマリネッタ先生はより強く反論している。


「何という事を仰るんですか! 教員の監督もなく地下に生徒を行かせるなど、とんでもない事です!」


 その口調で地下が危険らしいという事はわかる。

 だが『先生』はその考えを変えない。


「大丈夫よ、私の見込んだ生徒なんだから。学院長には私から言っておくわ。……いいかいメル、この学院は大昔に古代エルフと言われる人々が魔法を研究するために作った施設だ。これは確かパンフに書いてあったから知ってると思うけど」


 そうだっけ?

 パンフはあまり細かい所まで読んでないから知らなかった。


「で、ここの地下にはかつての研究施設なんかが遺跡として残っているわけ。もちろん今は立入禁止。あなたはそこへ行って、さっきも言ったとおりこれだと感じたものを持って帰ってね」


 この化物の言うことだ、単純な話ではないのだろう。

 しかし杖のカスタムは是非やっておきたい。

 成績の認定ではできたとしても時間がかかる、これはチャンスだと思った方がいいだろうな。


「わかった、それでいいよ」


 私の返事に『先生』は満足そうな表情を浮かべる。

 対照的に後ろのマリネッタ先生はやれやれといった様子で諦め気味だ。

 教師としてどちらが正しいかは明らかだけど、この際利用させてもらおう。


「それならさっそく行ってもらおうかな。エリザ、入って来なさい」


 促されてエリザが部屋の中に入ってきた。


「あれ、なんだ来てたのか」

「わたくしも『先生』に呼ばれましたの。それに、メルがまた無茶をしそうでしたから」


 無茶な事にはなると思う。

 このタイミングで呼んだという事は一緒に行けという事なんだろうな。


「察しの通り2人で行ってもらうことになるわ。それと2つほど注意。これはあくまで魔法の試験、殴るな、蹴るな、問題は可能な限り魔法で解決すべし。多少は使えるようになってるでしょ? もうひとつは地下1階よりも下には行かない事、かわいい生徒を2人も失いたくはないからね……フフッ」


 その笑いは何だ、引っ掛かるなあ。

 前フリとか言わないでくれよ。


「そうそう、さっき聞きたい事があるとか言ってたね? もし試験に合格すればひとつくらいは答えてあげよう。それじゃ、がんばって」


 ほほう、面白い。

 目的が増えたな、ひとつと言わず答えてもらうとしよう。



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