ジャーラ学園4
食堂の脇を通り抜けて、二棟の間にある、寮の玄関を入って右側の男子棟への道を折れて、階段を最上階の四階まで上がり、廊下の突き当りまで走れば、そこにグリアとシナプスが生活をする、四〇一号室がある。
「グリアっ」
その扉を引き開けて、フィーレは部屋の中へと飛び込んだ。
既にグリアは部屋の奥の二つ並んだ、左側の窓から日差しが差し込むベッドに寝かせられていた。
寮母のルメがグリアの枕元に椅子を置いて座っている。フィーレはグリアの元へと駆け寄る。
ルメに額の汗を拭われているグリアは、ゆっくりと顔を回し、今にも泣き出しそうに、自分の手を握る姉を見ると、笑みを浮かべた。
「姉さん。すごい汗だよ。シャツが透けてる」
グリアに言われて初めて気がついたフィーレは、それでも構わないと首を横に振ったが、タオルを手渡すルメが、背後を指差していた。
丁度そこにいるのは、部屋のシャワー室から出てきたばかりのシナプスで、髪をタオルで、雑に拭いているその体勢のまま、固まっていた。
「シャワー借りていいかしら」
シナプスはゆっくりと首を縦に振る。
「グリア様、大丈夫ですか」
その姿は、フィーレとほとんど変わらない。周りの生徒よりも、少し成長が早い分、彼女の今の姿は、シナプスにとっては、目の毒だった。
「丁度良かった。サラ、私これからシャワーを浴びるから、二人分の着替えを頼んでも良いかしら」
脱衣所の扉の隙間から、フィーレは顔だけを覗かせる。
ベッドの上では、起き上がって、こちらを真っ直ぐに見つめるグリアと、同じくベッドの上で、顔を赤くして俯くシナプス。そして、今の自分の体に張り付いた、シャツを見たサラは、直ぐにまた、背後の扉を引き開け、廊下に飛び出した。
「直ぐに戻りますからね」
ドアを閉めずに、言ったサラは耳を澄ました。シャワー室からは、水が硬いものを叩く音が聞こえてくる。
「グリア様も汗を掻かれたでしょう。もし、もう何もないようなら、私が戻ってきた後で、久しぶりに、一緒に入りましょうか」
「いいの」
「はい」
そう言い残して、サラは今度こそ、自分達の部屋へと走って行った。