26 平和の絵
しばし憤慨していたリュウ達であったが、アイス達に宥められて落ち着きを取り戻して部屋が静かになると、グランがリュウの前で姿勢を正す。
「では、私はドクターゼムにお仕えすれば良いのですね? マスター」
「マスター……いや、お前を起動したのは俺だけど、お前を……お前の元を造ったのはドクターだから、お前のマスターはドクターだよ。グランゼムの意志を継いでドクターの役に立ってくれ」
「分かりました。マスターをドクターゼムと定めます。リュウ」
「ちょっと! 敬称をちゃんとつけなさい! 基本設計をしたドクターにマスター移譲されてもグランの創造主様なんだからね!」
リュウに訂正されて主人を再設定するグランだが、その為に優先度が低くなったリュウを呼び捨てにした事でココアに叱られる。
生まれたばかりのグランにしてみれば、マスター以外は一般人扱いで細かい序列など分からないのだから仕方ないのだが。
「失礼しました、姉上。そしてリュウ様。若輩故、色々とご指導下さい」
「お、おう……」
「姉上……う、うふふ……」
即座に呼び名を改めて謝るグランに、少し照れるリュウと嬉しそうなココア。
ココアは姉上という新鮮な響きも、初めての目上としての立場も気に入った様である。
超高速で序列を組み直し、データベースから最適な言葉を選択するグランは皆に違和感などまるで感じさせず、するりとその場に溶け込んで行く。
「わ、分からない事が有ったら、何でも聞いてね? よろしく、グラン!」
「はい、よろしくお願いします。ミルク姉さま」
そして人一倍嬉しそうにグランに声を掛けるミルクは、グランが自分を姉として対応してくれた事で、先程の暴露の事も忘れて既に泣きそうになっている。
「ミルクぅ、良かったね!」
「はい! アイス様ぁ」
そんなミルクに声を掛けるアイスも、目尻を拭って微笑むミルクに嬉しそうだ。
「そうだグラン、彼女はアイス。本名はアイシャンテ・エール・ヴォイドと言って星巡竜という種族……だ。見た目は人と変わんないけど、人より遥かに長生きで、竜力という力を使って数々の奇跡を起こせるらしいけど、個体によって能力が違うから詳細はよく分からん……とにかくその存在を知る者からは、神様とかその使いとして崇められている種族らしい。が、俺に言わせればこいつはただの食いしん坊だ……」
「ひ、酷いよう! そこは言っちゃダメぇ!」
「「ご主人様ぁ……」」
だがグランにアイスを紹介するリュウの余計な一言に、アイスが真っ赤になって抗議し、ミルクとココアが主人にジト目を向ける。
「馬鹿だなぁ……これはグランにとって、いや、人類にとって大事な情報だぞ? 神にも等しい存在が実は食いしん坊とか、めっちゃ親しみ易いじゃん! それともアイスは皆に畏れ敬われる方が良いのか?」
「う、ううん……でもぉ……」
「だろ? だからグランも普通の女の子として接してやってくれ」
「分かりました。これからよろしくお願いします、アイス様」
「え……あ……う、うん……よろしくね、グラン……」
しかしそれもニィっと笑うリュウに問われるとアイスの答えはノーであり、そのまま流されて釈然としない様子ながら、グランにぎこちない笑顔で応じるアイス。
してやったりな主人の様子に、ミルクとココアのジト目が深まっている。
「それとこっちはロダ少佐。俺やドクターがお世話になったレジスタンスの少佐で出来の良い兄貴みたいな頼れる存在だ」
「それは嬉しい評価だね。アレクシー・ロダだ。よろしく、グラン」
「よろしくお願いします」
ミルク達の視線をスルーするリュウが最後にロダ少佐を紹介すると、その評価にロダ少佐は目元を和らげながらグランと挨拶を交わす。
「んん? アレクシー・ロダじゃと? はて、どこかで聞いた様な……そうじゃ! 十年程前、士官学校主席ながら卒業を前に失踪、その莫大な違約金を巡って家族の財閥と軍が揉めに揉めたという……その失踪者の名じゃ!」
「マジでぇっ!?」
「「えええ~!?」」
しかしロダ少佐のフルネームを聞いてドクターゼムが古い記憶を掘り起こすと、リュウ達は驚きの声を上げるのだが、アイスは意味が良く分からなかった様で首を傾げている。
「よくそんな古い話を覚えてましたね、ドクター……」
「研究施設でも納入していた薬品メーカーが入れ替わって大混乱したんじゃ……。当時わしは総責任者じゃったからの、方々のメーカーから是非我が社に、とアホ程貢物が届いての……あれは、ええ思い出じゃった……」
「それって賄賂じゃん! 受け取ったらダメじゃん!」
肩を竦めるロダ少佐が苦笑いを溢すと、ドクターゼムがどうして覚えていたかを話し出すが、ふと遠い目をしてニンマリと笑みを浮かべた事で一同を唖然とさせ、リュウは思わず突っ込んだ。
「堅苦しい奴じゃ。ええ品をくれる所には、見返りを用意してやらんでどうする! 大体な、クソ真面目な奴ほど浮足立ってバレるんじゃ。わしがそんなヘマする訳がなかろう!」
「い、いやいやいや、バレるとかそういう問題じゃ――」
「なるほど。頂点に立つ者は、清濁併せ呑む覚悟が必要なのですね」
「はぁ!?」
「「えっ!?」」
だが逆にドクターゼムに言い負かされそうになって唖然としながらも慌てて食い下がろうとするリュウは、グランの納得したかの様な割り込みに固まり、ミルクとココアも驚いた様にシンクロした。
「うむ! そういう事じゃ」
「違えよ! グランお前、頭大丈夫か!?」
「勿論です。ドクターを今後円滑にサポートする為にも、私が備えるべきは高度な柔軟性だと理解しました」
「う……」
そんなグランに大きく頷くドクターゼムに素で突っ込み、グランに対して怪訝な顔を向けるリュウだったが、グランの言葉が全てを悟った上での対応なのだと理解したのか、そのまま言葉を失ってしまった。
生まれたばかりのグランではあるが、その超々高速な頭脳で既にデータベースを網羅しており、ドクターゼムが無茶を言っている事を理解していた。
それでも自身がドクターの役に立つ為には、そのドクターに出来る限り合わせる事が肝要なのだと判断していたのだ。
「うむ、それでこそわしの最高傑作じゃ。頼りにしとるぞ!」
「はい、ドクター! お任せ下さい」
グランの対応に顔を綻ばせるドクターゼムと、誇らしそうに胸を張るグラン。
その横では「大丈夫か?」「た、多分……」などとリュウ達が声を潜めている。
「しかしお前さん、大義の為だとは言え大胆な事をしたのう……確かあれを機に、ハイラル工業は随分傾いたはずじゃ……相当に恨まれとるんじゃないか?」
「とっくに私は勘当されてますよ。利益の為なら現政権のどんな非道な行いも容認してきた人達ですから、自業自得というものです。現政権も散々に民衆を利用してきたのですから、私も士官学校を利用させて貰ったまで。後悔など有りません」
ようやく話を戻したドクターゼムに尋ねられるロダ少佐は肩を竦めて見せたが、その答えは実にあっけらかんとしたものであり、ロダ少佐の覚悟の程が伺えた。
因みにハイラル工業という名称は、ロダ家の数代前の起業者の名前である。
「そうか。その覚悟が報われるとええの、少佐」
「はい」
そんなロダ少佐に頷くドクターゼムがしんみりと声を掛けると、ロダ少佐もまた静かに答えて小さく頷く。
そうして訪れるしばしの沈黙の間に、リュウはロダ少佐の己が信念を貫く生き様に感銘を受けたのだろう、ぶるりと小さく身を震わせて憧れのスポーツ選手を見る様に、ロダ少佐の横顔を見つめるのだった。
「でも大丈夫じゃないんですか? コアを失ったヨルグヘイム如きにアイス様のご両親が負けるとは思えません!」
「だな! アイスの父ちゃん達を信じて、俺達はここでやれる事をやるだけだ」
「うん!」
そんな中、ココアが何故か威張り気味にしんみりとした空気を払うと、リュウもハッと照れ隠しする様に同調して、アイスを筆頭に皆を笑顔にさせるのだった。
その後、昼食まではゆったりとした時間を過ごしたリュウであったが、昼からは会議室にてレント国王ら王国重鎮やエルナダ軍首脳部らに今回の騒動の詳細を報告すると共に、それによって明らかになった新たな問題に対しての自らの考えを披露していた。
新たな問題とは、コーザ・アルマロンド連合王国によるキエヌ聖国に対する食料物資の有無を言わさぬ徴収である。
これを当事者間の話し合いだけでは解決は難しい、とミルク達と話し合って判断したリュウは、この機会に各国をも巻き込んでしまおうと考えたのである。
「我が国やオーリス共和国だけでなく、魔人族……アデリア王国までも巻き込んで何をしようと言うのかね……」
「貿易です。人の地にある全ての国家を平和的に結んで、まだ見た事のない各国の文化や技術、美味しい料理や酒なんかを知れば、みんなの生活もより豊かになって争う事が馬鹿らしく思えると思うんです」
興味深そうに尋ねるレント国王に、リュウは初めて公の場で以前から考えていた事を口にする。
それを聞く者達の表情は好意的なものから否定的なものまで様々であるが、発言する者は無く、皆それぞれに思案している様である。
「ふうむ……確かに他国の料理や酒などは味わってみたいものだのう……しかし、人は欲深いもの……それが富を生み出すと分かれば、独占しようとする者も現れるだろう。新たな争いの火種になりはせんかの?」
しばしの沈黙を破ったのはフォレスト伯爵であった。
好意的に話し始めた伯爵であったが、眉をしかめると懸念を口にし、じろり、とリュウに鋭い眼光を向ける。
「それは各国間に条約なり協定なりを結ぶとか、新たに法律を作ったり、そういう事が起こらない様にチェックする組織などが必要になるかも知れません……けど、先ずはやってみる事が大事だと思っています。初めての試みですし、想定外の事も色々と起こるかも知れませんけど、その都度皆で相談して修正して……そうやって誰もが概ね満足できる形にしていければ、と……な?」
少し緊張した様子でフォレスト伯爵に応じるリュウは、ミルク達と相談した事を思い出しながら言葉を紡ぐが、自身でも無難な物言いに終始している事に気付いてミルクに応援を求める。
「はい。初めは数も少なく、取引し易い物から始める事になるかと思われますが、これが形となればこの国はその中心地となります。なので各国の物資の管理や流通経路の安全の確保、また先程伯爵様が仰られた懸念事項に対する牽制など、掛かる責任は大きなものとなります。ですがその責任を見事果たして見せれば、各国から絶大な信頼を得られる事は疑いありません」
主人に笑顔を返して後を引き継いだミルクは、臆する事無く主人が躊躇していた部分から切り出し始め、主人を内心ハラハラさせる。
だがこの場に居る者が耳障りの良い言葉だけで納得するはずがない、と承知していたミルクのお蔭で、誰もが真剣に聞き入っている様子である。
「ただ正直に申しまして、取引自体で利益を出すのは難しいです。むしろ他国より裕福なこの国は、貧しい他国を援助する立場となるでしょう。ですが物資の管理や治安維持には新たな雇用が生まれますし、流通が拡大すれば経済はより活性すると思われます。援助を受ける国もまた、恩を返すべく頑張るでしょうし、この国には各国から惜しみない称賛が贈られるでしょう」
更にこの話の核心へと話を続けるミルク。
元々リーザの事も有って、魔人族と人間族が仲良くなったら、とのリュウの思い付きから始まったこの話は、コーザ・アルマロンド連合王国とキエヌ聖国の実態を目の当たりにして、ミルクも成功させたいと思う様になっていた。
そんなミルクの正直で、ちょっぴり名誉心をくすぐる話に、王国重鎮だけでなく各騎士団の団長、副団長達もが唸っている。
本来、騎士団長や副団長などは会議などに参加しないのであるが、エルナダ軍が会議の場に同席する様になった為に、数合わせと念のため、という意味で参加する様になっていた。
「何より、援助を受ける側は状況の改善を武力に頼るよりも、この流れに乗る方が遥かに有益だと知るでしょう。もし万が一きな臭い事になったとしても、各国との繋がりが有れば事前に察知する事も、連携して対処する事も十分可能です。最後になりますが、人の地には満足に暮らせる人々が居る一方で、苦しむ人々が居ます。貧富の差はそう簡単に埋める事などできませんが、何もしなければ変わり様もありません。ご主人様がそんな状況を変えたい、と想い描くこの『平和の絵』は、到底一人で描ける代物ではありません。それこそ全ての人の手で完成されるものです。なのでどうか一緒に『平和の絵』をこの人の地に描いて下さいます様、お願い申しあげます」
「お願いしまっす!」
「「お願いしますぅ」」
話の合間に立ち上がって最後を締めようとするミルクに合わせて、リュウも赤い顔で立ち上がり、ミルクに続いて頭を下げ、アイスとココアが後に続いた。
リュウの顔が赤いのは、『平和の絵』なんて恥ずかしいセリフなど言った覚えは無く、乙女なミルクの完全なアドリブだったにも拘らず、まるで俺が言ったみたいじゃん、と身悶えしていたからである。
だがそんなリュウの想いとは関係なく、ミルクの言葉は会議室に居る全ての者に響いた様で、頭を下げるリュウ達に盛大な拍手が注がれる。
着席しながらミルクにジト目を向けるリュウと、それに気付く事無く僅かに頬を赤らめて嬉しそうに着席するミルク。
そんな二人の様子を、少し距離を置いた斜め後方から無表情のグランが見つめている。
グランは会議開始時に、リュウ達からドクターゼム専属のミルクとココアの弟として皆に紹介され、その見た目から少々混乱を招くのだが、ミルクを高く評価するレント国王や、今やココアのファンとなっているフォレスト伯爵が納得した事で、無事にリュウ達の身内として受け入れられていたのだった。
「ふむ……では、その話を進めるとした場合、準備には相当な時間が必要になると思うが……ミルクの考えでは、いつ頃から取引を始められると思うかね?」
「そうですね……各国の了承を得られれば、そこから遅くとも二週間以内には始められるのではないでしょうか……」
「えっ!? マジで!? あ……」
ようやく場が落ち着きを見せ、レント国王が前向きな方向でミルクに問い掛けた事で自然と笑顔になるリュウであったが、続くミルクの言葉に思わず場所も忘れて叫んでしまい、慌てて口を塞いで小さくなった。
だがそれを咎める者は居なかった。
声こそ発さなかったものの、誰もが気持ちはリュウと同じだったからである。
「は、はい……実は各国との条約や新たな法律などは、エルナダで流用可能な物をこの世界用にアレンジした草案を既に用意してあるのです。なので賛同する国家が一つでも有れば、それを皆様に吟味して頂く間に商人や護衛の方々を募って品物を用意すれば……それくらいで出発する事は十分可能なのでは、と……」
「なんと……もうそこまで用意が出来ておるのか……」
「いやはや、大したものだ……」
主人の反応に少々気恥ずかしそうにレント国王へ返答するミルクであるが、その内容にフォレスト伯爵が唸り、ノイマン男爵が参ったとばかりに笑みを溢す。
他の参加者も感心したり、呆気にとられている中、ミルクの能力を知るドクターゼムとココア、そしてグランの三人だけが平然としている。
「そこまで用意が出来ているという事は、ミルクには既にこの先の展望もある程度見えているのであろう? 聞かせてくれんかね?」
「はい。細かな問題までは予想出来ませんが、始まりさえすればこの流れは自然と大きくなっていくだろうと推測します。一国では無理な事も、他国の協力が有れば出来るのだと皆が知るからです。それに協力関係にある国とは戦争の心配も無く、資金にも余裕が生まれるので尚更です。数年もすれば、この取り組みに誰もが満足して頂けるのではないかと……」
「はっはっは! ここまでされては話に乗らぬ訳にはいきませんのう、陛下」
根拠が無ければこれ程の用意はすまい、と笑顔で尋ねるレント国王に、ミルクが自信に満ちた目で答えると、強面で知られるフォレスト伯爵が実に愉快だと言わんばかりにレント国王にそのまま笑い掛けて、その場の者達の目を丸くさせた。
確かに数々のシミュレーションから成功の確率を弾き出せるミルクは、ある程度結果が見えていた。
成功の確率が低いままミルクが提案を推し進める事など有り得ないのである。
「ふむ。一応皆に問うが、反対の者は居るかね?」
既にレント国王の腹は決まってはいたが、ずっと黙って座っている騎士団長らに向けて声を掛ける。
慣れぬ場で黙って座る彼らが気の毒、という一面も有ったかも知れないが、彼ら自身がどう考えているか聞いてみたい、と思ったレント国王なのだ。
「恐れながら陛下。我ら騎士団は陛下にどこまでも付いて行くまで。どうか御心のままに」
それに真っ先に臆さず答えるノイマン騎士団の団長、ルーク・ボルド。
騎士であれば当然ではないか、とでも言う様に堂々としている。
「それでは思考停止ではないか。陛下、先程の貧しい他国を援助するというお話に私は深く感銘を受けました。困窮する国に我らがマーベル王国が手を差し伸べる、これ程に誇らしい事がありましょうか。陛下のご温情に報いる為にも、心を新たに必ずやお役に立って見せましょう」
そんなルークに呆れ顔で口を挟むのは、先の戦いで敗れたエンマイヤー騎士団の団長、エイブ・ハウマンである。
領主であったエンマイヤー公爵が失脚した事でエンマイヤー騎士団は議論の末に処分を保留され、現在は現状を維持されたまま国王預かりという立場にある。
それにはエルナダ軍が居なければ、ここまで事態が悪化しなかっただろう事と、エンマイヤー公爵が全ては自分の一存で、騎士団は逆らえる立場ではなかった、と嘆願した事がその理由とされた。
実のところ、エンマイヤー騎士団を消滅させて膨大な失業者を出す訳にはいかなかったし、団員からの信望が厚い団長、副団長のみを処分しても、似た様な結果になる事が予想された為であった。
そんな処刑を覚悟していたエイブの驚きは大きく、国王陛下の恩顧に報いる事を改めて心に誓ったのだ。
だが実際には汚名を返上する機会など、そう簡単には訪れはしない。
そう思っていたエイブにとって、ミルクの語る内容は千載一遇とも言える機会を感じさせ、また大いに騎士道精神を刺激されたのであった。
「それに、大恩有るアイス様までが頭を下げられたのです。これに応えぬ選択肢は私には有りません」
エイブに続いたのは同じエンマイヤー騎士団の副団長であるランス・カークスである。
彼もエイブ同様に、これまでの行いを恥じて心新たに王国の為に尽くすつもりであったが、それ以上に命を救ってくれたアイスに恩義を感じていた。
今回の機会は是が非でも、とその拳に力が入るランスなのであった。
「よろしい。ではリュウよ、我がマーベル王国は貴殿の提案を受け入れ、他国との貿易に乗り出すと約束しよう。皆で描く『平和の絵』か……いやはや、どんな絵が出来上がるのか、楽しみだのう」
「はい! ありがとうございます!」
「「「ありがとうございます!」」」
騎士達の反応に満足気に頷くレント国王が貿易の提案受諾を決定しつつ、本心を覗かせて微笑んで見せると、リュウは即座に立ち上がって嬉しそうに頭を下げ、続くアイス達もそれに倣った。
その後、貿易が決定された事で更に具体的な話へと議題は移っていく。
そこには物資の運搬や通信で頼られ、意見するソートン大将らの姿も有る。
つい先日まで敵味方だった者達が同じ目的の為に笑顔で語り合う姿に、リュウがふと気付いて笑顔を溢している。
恥ずかしがるリュウはともかく、ミルクが口にした「平和の絵」という言葉は、ミルクが思う以上に、戦いに身を置いて来た彼らの心に響いていたのであった。
お待たせいたしました…
もう少し更新頻度を上げるべく
頑張りたいと思いますm(_ _)m




