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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第一章  気付くと僕は、スライムでした。
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1-9 ドベから一番に

 その後、いくつかの別れ道でモンスターに遭遇するも、特に問題もなく最奥と思われる部屋へと辿り着いた。


 学校で訓練用に使っているダンジョンだけあって、最奥にボスはいないようだな。

 まあちょっと手前にいたミノタウロスがボスの代わりって感じだったけれどね。あれは避けようと思えば避けられる存在だから、おそらく僕達以外誰も手を出さないのだろう。

 というか、初心者が手を出せるモンスターじゃないな。


 代わりにこの最奥にある部屋は、ちょっと豪華な部屋の中に台座が置かれていて、そこに石板が数十個は置かれていた。

 部屋や台座などは年代を感じさせるよう所々崩れて砂になっている部分があるのに、石板だけは真新しく見えるので、ちょっとちぐはぐな感じあるいは偽物っぽく見える。

 まあ課題としてもってこいってだけのアイテムだろうし、それっぽく見せているだけだろうな。


 本物のダンジョンとかなら、歴史的価値のありそうな石版だったのだろうが、この石版自体には価値は無いのだろう。

 ちなみに何が書かれているのか見てみたけれど、さっぱりわからなかった。まあこっちの文字が読めないみたいなので、これはわかりきっていた事だったな。




 台座に置かれた石板を見つつそんな事を考えていると、レイシアが早速石版を拾い上げた。

 石版の数は、事前登録でパーティーに一個配置されているので、今現在ここに辿り着いたパーティーの数が、それによって判明する。という事は・・・・・・


 「ひょっとして、一番乗り?」

 「ええ、おそらくミノタウロスの部屋を通過出来れば、最短コースで進む事が出来ますわ。前回私達のパーティーも、マッピングしながら進んでいたけれど、ミノタウロスがいる部屋を避けると、かなり遠回りのコースになるのがわかりましたから」

 「前回ミノタウロスの部屋を通ったけれど、時間外だったわよ?」

 「貴方の場合は、意味もなく通っただけでしょう。どうせ適当に通って迷い込んだだけよ」


 予想通り、石版が一杯あるなって思ったら一番だったよ。


 ミノタウロスを避けて移動すると、かなり時間をロスする造りになっていたのだな。

 とすると今までドベだった成績が、いきなり一番になる予感! 僕の成績ではないが、これは狙わないと駄目だろう!


 意味のない口喧嘩が始まりそうだったので、手を上げて出口を指示する。


 「はいはい、さっさと帰りましょうね」


 それに気が付いたブレンダが、なんか納得いかなそうな感じで出口へと向かう。

 レイシアもそれに続き、最短コースで外へと向かうよう指示を出して行く。一度通っているので、敵も罠も大概は解除されており帰りの時間は凄く早かった。壁に印を付けてあるので、迷う心配など無いのだ!


 強化実習の終了条件は前回と同じ学校に帰り報告する事らしいので、ダンジョンを抜けただけではまだ終わりではない。


 僕は前回の森で迷った事を思い出し、ダンジョンを出た後も指示を出し続けた。




 迷うことなく森を抜け、後はレイシアでも辿り着けるだろうとのんびりしていると、ふと思った事がある。そういえばブレンダってレイシア以上に何もしていなくない?


 一応これで成績が決まるのだよな?

 しかもパーティーを組んでいたので、メンバー全員の成績になるはず。何もしていないのに一緒にいただけで一番の成績になる?


 そう考えると、なんだか無性に楽をしているのが腹立つな。


 僕は移動中、隣を歩いていたブレンダにペチペチとそんなに強くない攻撃をして、憂さを晴らす。


 「ちょっと急になんなのよこの子」

 「ブレンダ、何か気にさわる事でもしたんじゃないの?」

 「ちょっとやめなさいってば、何もしてなかったじゃない、貴方からもやめるように言いなさいよ!」


 レイシアはうーんって考え込むと、僕の様子を伺いながらひょっとしてって感じで発言した。


 「あー、今回のダンジョン。何もしていなかったから怒っているんじゃないの?」

 「そんなの貴方も一緒じゃない」

 「私はご主人様だからいいのよ!」


 二人がそんな事を言ったのを受け、そういえばがんばったのって僕だけじゃないかと気が付かされた。


 レイシアが方向音痴だからルート決めも僕だ。ろくな魔法も使えないので、モンスターとの戦闘も当然僕だ。このパーティーには盗賊職がいないので、罠の発見も僕だ。全部僕じゃないか!


 知らず知らずのうちに、主だから僕とセットとして考えていたようだな。確かに召喚されて使われる立場ではあるが、僕だけしか働いていないというのは納得出来ないよな。

 だから帰りの道中、二人に対してペチペチと攻撃を繰り返した。




 「はぁ、ブレンダが余計な事言うから、私まで攻撃されたわ・・・・・・。私ご主人様なのに」

 「役立たずだったから、叩かれても仕方ないわよ。私の場合は貴方達の行動調査だって、初めに言っておいたのに攻撃されたんだから、こっちの方が散々よ。ちゃんとしたパーティーなら、私だってそれなり戦いでも何でも活躍したっていうのに」


 ブレンダが行動しなかったっていう理由自体には納得出来たのだが、出来るのにやらないって宣言にムカつく。

 いや、僕の実力を見る為っていうのはわかるのだが、ある程度見ればそれでよかったのでは?


 結局最後まで何もしなかった理由にはなるまい。


 それでいて結果だけは持って行くのは納得いかないぞ。せめて教師側に回っているのなら何も言わなかったのだが・・・・・・

 そんな訳で僕だけが働かされて、それでいて評価は二人が受け取る・・・・・・しかも好成績だろう? 納得いかないよね?


 なんかムカつく、僕はまた二人への攻撃を再開させた。こんどは先程よりちょっと強めに!


 「ちょっとブレンダ、いちいちバグの事怒らせないでよ。こっちまで巻き添え食らうじゃない」

 「巻き込まれているのはこっちの方よ。何で貴方はご主人様のはずなのに、やめさせられないのよ!」

 「そんなの知らないわよ、やめろって何回も言っているのに、こっちの命令全然聞かないのよ」

 「あんたのスライム、絶対何か変だわ! 呪われてるとかじゃないの?」

 「よっぽどのレアスライムなだけよ」


 ペチペチ攻撃は続行だ!




 ダンジョン実習に伴い事前情報を授業で聞いた限り、今回僕達が潜って来たダンジョンは二層だけの小型ダンジョンだという話だった。


 モンスターはいるが、ほとんどの場合が一体だけうろついていたり、ミノタウロス意外にそこまで脅威度の高い敵は配置されていないらしい。


 罠も設置されているものの、盗賊技能があれば何とかなるのだそうだ。これは実際よく見れば見分けられたので、必要最低限の技能があれば問題ない程度だろう。

 まさに訓練用ダンジョンって感じだった。


 そんなダンジョンだが、今回早朝から攻略が始まって森を出た後、途中で昼食を取った事から大体四時間くらいで目的を達成出来たと思う。


 おそらく他所のパーティーも、時間はまちまちだが今日中には帰って来られる程度のダンジョンなのだろう。レイシアには無理だったらしいがな。

 そう考えると午前中に帰宅出来ている僕達はかなりのハイペースで攻略したって事になるな。


 やはりミノタウロスを避けないで進めたのが大きいのだろう。後罠にかかって地下に落ちなかったのも大きいだろう。




 ペチペチしながらダンジョンの事を考えていると、ブレンダが休憩にしましょうって声をかけて来た。


 空を見上げれば太陽は真上に来ており、そろそろお昼だとわかる。


 ずっと働いていたので、僕も何か食べたくなった。そこでペチペチ攻撃をやめると、ブレンダとレイシアがよしって感じで小さくガッツポーズをするのが目に入る。

 お二人さん、随分仲良くなったのだな! タイミングバッチしだったぞ。


 残念なところは、そういう連携はダンジョンとかで発揮して欲しいものだな。休憩時間に連携してどうするよ・・・・・・


 ペチペチ攻撃が止んだのが嬉しかったのか、二人はテキパキと食事の用意を進めて行く。


 出て来た食事はぺったんこに潰れたパンと、干し肉。

 夜の休憩って訳でもないので火を焚く事もなく、ただ取り出した携帯食をむしゃむしゃと食べるだけだった。

 パンも干し肉もどちらも硬いせいか二人の間に会話はなく、ただ時間だけが過ぎて行く。


 今回は僕用に同じパンと干し肉が用意されていたのが嬉しいところだ。

 どちらも保存食なので硬そうだが、チューチューと溶かすので食べ物の硬さなど僕には気にもならない。


 実際二人よりも早く食事が完了する。

 パンは直ぐ溶けたが、肉の方は少しだけ時間がかかったかな。まあ誤差の範囲って感じだろう。




 隣では固いパンと肉を、苦労して食べている二人がいる。


 これはちょっと時間がかかりそうだ。というか、こいつら歯とか顎がかなり丈夫なのだな。やっぱりスライムに転生してきて正解だったかもしれん。


 人間で転生して来ていたら、歯が折れたりパンを目の前に餓死していたりして・・・・・・ありえそうで怖いな・・・・・・


 味の方も、パンは味も素っ気もなくただ腹を満たすだけって感じのものだった。素材の味を楽しもうって感じだな。単純に調理技術が足りないだけかもしれないが。

 干し肉の方は痛まない工夫のせいで塩っ辛く、あんなのばかり食べていたら直ぐに高血圧になりそうだなって思う。もう少しましなものって無いのだろうか?


 昔の日本なら藁に味噌を染み込ませて即席の味噌汁とかあったよな。それはそれでどうなのだって感じだが、今ならそれでもご馳走になるだろう。


 美味しいものが食べたいな・・・・・・


 外国に行くと、日本食が食べたくなるって話はよく聞くが、今がまさにそうだ。転生してからそこまで日にちは経っていないのだがな~


 ぼんやりしていたらどうやら休憩は終わりのようだ。

 火も使わない休憩だったので、二人の食事が終わると直ぐ町へと歩き出した。


 ここから先はただ歩くだけだから僕の出番はないだろう。野盗とか来ないか警戒するくらいかな~

 それも森と道が離れれば見通しもよくなるので隠れる場所もなくなる。後はのんびりと肩に乗っているだけで良さそうだ。




 町までの道中、僕は触手を振り回していた。

 何故かっていえばさっきのペチペチで気が付いたのだが、転生して来たばかりの頃よりも素早くなっている気がするのだ。

 ひょっとしてひょっとすると、この世界もゲームのようにLVがあって成長出来るのかもしれない。でもってゆくゆくは最強スライムに・・・・・・


 既にミノタウロスも倒せるから、相当強くなりそうな予感がするな。

 というか、そのミノタウロスが相当いい経験値になったのではないだろうか?

 あれって普通にボスだよね。


 レイシアの肩の上だが、その場でいろいろ動いてみたり触手を振り回して確かめてみる。


 あー、たぶん移動速度は変わらないな。触手ならかなり切れのいい動きが出来るようになっているのだが。

 移動はのそのそ動くだけだから、これがスライムの全力歩きっぽいな。

 まあ触手で引っ張ればかなり早く移動出来るからいいのだがな。


 こうなってくるとゲームではお馴染みのステータスとか、表示してみたいものだよね。何かそういうのないのかな?

 あったとしても今の僕では誰かに聞く事も、そういう装置を利用する事も出来そうにないな。




 「この子、まだまだ戦い足りないのかしら?」

 「食後の運動とか?」

 「そんなに戦いたいなら、ダンジョンでもっと戦えばよかったのに」

 「訓練用ダンジョンなんだから、そんなに一杯モンスターは出て来ないよ」

 「そうね。わらわら出て来られても、こっちが困るわ」


 身体能力を確認していたら、ブレンダがそんなことを言って来た。


 でもって散々働いた僕に、戦闘狂みたいな言い方をして来る。というか食事前の状況を思い出したよ。


 せっかく思い出したのだからペチペチ攻撃を再開した。思い出させてくれてありがとう!


 「バグやめてー」


 本気で攻撃する意思が無いからなのか、レイシアに命令されても特に強制力は働かない。基準がわからないなー


 二人は僕の触手を掌で受け止めつつ、町へと歩いて行く。


 お互いに本気ではないっていうのが伝わったのか、先程までとは違い、スキンシップみたいなやり取りになっていた。

 そのやり取りは町に入り学校に着いた後も続き、以前報告に訪れたケイト先生がいるらしい部屋の前までずっと続けた。


 さてレイシアよ。

 今まで落ちこぼれと言われて来た評価を覆す時が来たぞ。


 偶然でも呼ばれたからには、ここから優等生へと駆け登って行くのもいいかもしれないな~

 どうやら僕が主人公ではないようなので・・・・・・サポートするよ?




 ――――――



 ダンジョン実習・・・・・・By 冒険者養成学校の生徒達




 生徒A「あなたがつまらない罠なんかにかかるから、随分と出遅れてしまったじゃない」

 生徒B「ごめーん。でもでも気が付かなかったんだから仕方ないじゃない。それに地下に落ちた訳じゃないからまだ遅れは取り戻せるよ!」

 生徒C「だな。焦りは禁物だぞ!」

 生徒D「もう直ぐミノタウロスが出る部屋だな。あそこを通れれば遅れなんて一発で取り返せるのにな~」

 生徒A「ちょっとやめてよね。あんなの先輩達でも倒せないわよ」


 生徒C「なあ、そのミノタウロスなんだが・・・・・・倒れてるぞ」

 生徒A「え?」

 生徒B「へ? あ! 本当だ、ラッキー」

 生徒D「いやいやいや。何でミノタウロスが戦う前から倒れてんだよ! おかしいだろうが!」

 生徒B「そんなの別にどっちでもいいじゃん。これで遠回りしなくてもいいんだし、一気に遅れを取り戻せるよ!」

 生徒C「まあ確かにそうだが・・・・・・なんか納得いかないな~」


 生徒A「ま、まあいいわ。みんな進むわよ! 後せっかくだし討伐部位を回収出来ないかしら?」

 生徒B「さすがにそれは他の奴に取られているみたいだな。まあ当たり前だろうが」

 生徒A「仕方ないわね。先を急ぐわよ!」

 生徒BCD「「「おー」」」


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