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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第一章  気付くと僕は、スライムでした。
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1-8 ブレンダとスライム

 その後もどっちに進むかの指示、罠の発見及び解除や回避。あっ、罠の解除といってもここにあるのは落とし穴ばかりで、そういう特殊技能の無い僕は石を投げてここに罠があるよって教える感じだ。

 それでも注意を促さないと、気が付かずに落ちそうで怖いけれどね。


 でもって遭遇した敵の排除など担当しながら、どんどん奥へ奥へと進んで行く。


 道は今のところわからないから、まずは同じ場所を通らないよう進むのみだ。




 探索途中で他のパーティーの生徒達と何度か遭遇しりするが、特に揉める事もなくお互いに通り過ぎて行く。


 特に挨拶も何も無い淡々とした探索だな。


 しばらくそんな感じで進み続けある部屋にやって来ると、以前にも見かけたミノタウロスが前方の少し大きな部屋にいるのが見えて来た。

 多分以前僕が召喚された部屋だな。特に思うところも無く、もちろん前進と指示を出す。


 その指示で本当に一瞬だけ迷った様子だったが、レイシアはそのまま前へと進んだ。

 さすがに巨大なモンスターは怖いだろうが、信頼してもらえているのだろう。それに一度は倒しているから、少しためらっただけで指示に従ったのかもしれないな。

 だが後ろから付いて来ているブレンダは驚き、ミノタウロスに気付かれるのを嫌がってか、大きな音を立てる訳にもいかずに、その場で嫌々って首を横に振ったりしていた。


 もちろんそんなのは無視である。今までの上位者の威厳はどうしたんだって感じだな。まあこの反応も仕方ないだろうが・・・・・・




 そして部屋へと入り込むとミノタウロスも当然こちらに気が付き、ニヤって感じで笑いながら斧を振り回しながら向かって来る。


 「ちょっといくらなんでも正面からなんて、無謀過ぎるわよ!」


 とうとう堪え切れずに叫ぶブレンダ。

 悲鳴のようなその言葉を背中で受け、しかしそんな心配など無用とばかりに、レイシアは僕の事を弓なりに投げ付ける。


 目の前へと飛んで来る僕に気が付いたミノタウロスは、何だこんなものとでも言いたげに斧を使って攻撃して来た。今まで倒して来たモンスター同様の行動だな。

 違いがあるといえば、攻撃の後スライムの事など眼中に無いのか、次の目標としてレイシアに向かって突撃しているところだろう。


 まあ普通のスライムなんて、先程の斧の攻撃で吹き飛んだって思い込んでいてもおかしくは無いだろうな。普通ならね。

 しかし僕は知能があるスライムだ。


 激突の瞬間手足を伸ばして斧へと着地する事に成功している。さすがに斧の迫力とか、迫り来る速度にびびったけれど、あらかじめこう来るだろうって予測していたおかげで上手く捉える事が出来た。


 早速腕を伝い、これまでのように顔を目指して移動を開始する。サクサク行動しないと、レイシアが襲われるからな。


 こうしている間にもズシンズシンと重量感ある音を響かせ、ミノタウロスはレイシアを目指して移動している。

 しかし焦る事は無い。

 ここに来るまで散々同じような戦い方をして来たので、もう完全に手慣れてしまった必勝パターンだ。




 初めて対峙した時も思った事だが、スライムから見ると巨大過ぎるよなー


 斧の手元まではさくっと移動出来たものの、ここから頭には一足で移動出来そうも無い。やはり腕を伝って移動して行くしかないようだ。

 そうするとさすがに気付かれるだろうな~


 まあしかし、ミノタウロスってそんなに知能が高いモンスターじゃなかったと思うし、気付かれたからって即時対応して来られないだろう。

 そう考え、時間優先で肘の辺りに一度移動し、次に肩へと触手を伸ばして頭部を目指す。


 さすがに腕を這い上がる何かに気が付いたミノタウロスは、怪訝な表情を浮かべながら足を止めて、僕の方へと振り返って来た。


 わざわざ立ち止まってこっちへと振り向いた敵に対して、チャンスとばかりに飛び掛る。


 肩まで登って来れば、さすがに次の一歩で頭部まで移動出来そうだった。

 ミノタウロスもこちらを見ながらあれって感じになっているし、この隙にさっさと窒息を狙って行くぞ!


 今まで通り頭部へばり付きながら、呼吸を止めるように顔を包み込んで行く。

 ここに至りさすがにやばいって感じたのか、ミノタウロスが反応した。

 持っていた斧を捨て、両手で顔を覆っているゼリー状の液体をなんとかどうかそうと掻き毟る。

 おそらく指の間から漏れるようにすり抜け、意味を成していないのだろうなー


 こっちは体の中をグチャグチャかき混ぜられているようで、ちょっと気持ち悪いのだが・・・・・・いや、案外マッサージされているようで気持ちいいか?

 うーん、やはりぶっとい男の指で捏ねくり回されるなんて、気持ち悪いだけだな。

 そんな事を考えながら、ミノタウロスが動かなくなるのを待つ。




 その後、四・五分くらい暴れ苦しんだミノタウロスはゆっくりと倒れて行き、今までの敵同様に窒息死した。


 ミノタウロスはリザードマンなどより体力があるようだから、ちょっと長めに張り付いていないとやばそうだな。

 倒したって思い込んで、起き上がられるのはちょっと怖い。

 大丈夫だとは思うが、もうしばらくは張り付いているかな・・・・・・そう考えているとブレンダ達がこちらへと近付いて来た。


 「このスライム。本当にミノタウロスを一匹で倒せちゃうのね・・・・・・。さすがに目の前で見た後でも、信じられないわ・・・・・・」

 「私も、ミノタウロスを倒すところは今回初めて見たよ。前は時間稼ぎに呼び出してその後必死に逃げたから・・・・・・後で敵を排除した感覚が伝わって来て、驚いて引き返して来たら倒れたミノタウロスの上にバグが乗っていて、この子が倒したんだってやっと理解出来たの」


 「へー。それにしてもこのスライム。戦闘能力だけじゃなくて、異様に頭が良くない? 確か調査団とかいう人達の話しだと、どこにでもいるスライムで知能もたいして高く無かったって言っていたわよ? それに、魔法も使えないって結論になっていたわよね」

 「そういえば、授業の時以来、魔法を使ったところは見ていないよね」

 「次にモンスターが出て来た時にでも、魔法を使うように指示を出してみたら? あんたが召喚主なのだから、もし魔法が使えるのなら、何かしらの魔法を使うんじゃない?」

 「そうね、試してみてもいいかもしれないわね」


 僕を無視してそんな事を言っていた。


 たぶん魔法を使っている暇があったら、いつも通りやった方が手っ取り早いと思うぞ。

 舐めてくれる相手は、油断して隙を見せてくれるからな。


 そして魔法は、威力が無ければ倒すまでに時間がかかるものである。まあそんな会話している間も、しっかりと戦利品を拾っている辺りは、ちゃっかり冒険者しているけれどな!




 前回ミノタウロスから戦利品を収集するのが大変だったが、今回はブレンダに手伝ってもらいながらだったので、少しは早く回収出来たみたいだ。

 少しはっていうのは、ブレンダもさすがにミノタウロスを倒した事が無かったからだ。

 二人であーだこーだ言いながら収集していた。


 それが終わるとミノタウロスの後ろにある通路へと進む。こういうボスっぽいやつがいる部屋の奥が、大体正解のルートだからな。


 これが学校のダンジョンじゃなかったらお宝が待っていそうなのだが、まあ財宝があるとかは無いだろう。

 そもそもリアルダンジョンでも、金銀財宝のお宝は無いのかもしれないがな。ドラゴンなら持っているかな?




 しばらく進んで行くと部屋があり、中央に座っているリザードマンが見えて来た。


 先程の二人の会話からすると、あれを魔法で倒すのか・・・・・・

 厄介そうだから、いつも通りやりたいのにな。まあ強制力があるから逆らえないけれど・・・・・・


 「バグ、魔法を使ってリザードマンに攻撃!」


 レイシアはそう命令しながら僕を両手の上に乗せ、部屋に入る手前でさあやれとばかり両手を前に突き出した。


 それを見たリザードマンは中央から動かず、威嚇するように睨み付けて来るだけだ。スライムを見て、そこまでの脅威ではないとか考えているのかな?


 あー、はいはい。強制力が早く魔法を使えと訴えかけて来る。

 強制力が痛みの無いタイプでよかったよ。ただ訴えかけて来るだけだからな。それはそうと魔法か・・・・・・


 リザードマンに向けて魔法を発動させるのだよな・・・・・・両生類、爬虫類って確か寒いところは苦手だったと思うから、氷系の魔法がいいよな。

 液体窒素をイメージとした冷却魔法を思い描いて、リザードマンへと魔法を発動させてみるとするか。

 もちろん僕にMPなんか無いので、レイシアからチューチューするけどね!




 基本的に氷系の魔法は授業でも習っては無い。どうやら水の上位系統らしく、学校では習わないようだ。

 火系統だと素材が取れなくなりそうだし、水系統は逆に爬虫類は喜びそうだから、ここは凍り系統を選択してみよう。一撃で倒せなかったとしても、状態異常が発生して動きが鈍くなりそうだしな。

 魔法はイメージが大事だと言っていたので、さまざまなゲームで出て来た魔法がいい参考になりそうだ。


 (ブリザード)


 魔法を発動させると、リザードマンを中心とした一定範囲に霧のようなものが発生して、徐々にリザードマンの表面が霜に覆われて行く。ちょっとブリザードって感じじゃないが、一応氷系の魔法は発動したようだ。


 魔法が発動した当初、リザードマンは範囲外へと逃げ出そうと力強く足を踏み出したけれどその足も二歩目には止まり、そのままふるえて床にうずくまる。


 部屋の外から様子を見ていたが、そのまま眠るように動かなくなった。


 しばらくすると、リザードマンの体表面に霜が降りたように白くなって行く。

 まあリザードマンはそんな感じで氷像のように固まり、範囲内に包まれた床も氷に覆われたところで変化が止まる。


 その魔法の効果はレイシアにも現れていて、MPを吸い取ったので当然、魔法発動に必要なMPをレイシアは失ったのだった。

 その結果を受けたレイシアが、急激な精神の疲労によりよろめき、ブレンダが慌てたように支えていた。




 「ちょっと突然どうしたのよ。あんた何もしないで、立って見ていただけじゃない」

 「あれ、なんか魔法使い過ぎた時みたいに、頭がふらついたの」


 ブレンダはそれを聞いて、少し思案した後に発言して来た。


 「あー、そういう事か・・・・・・。この子、元々魔力なんか持っていないのよ。召喚であなたと繋がる事で、足りない精神力をご主人様である貴方からもらって、魔法を使っていたとかじゃないかしら」

 「だから調査団の人達は、気が付かなかった?」

 「そうね、魔力の魔の字も持っていないスライムなら、どう調べても魔法が使える訳が無いものね」


 なる程って感じでリザードマンが凍っている様子を見詰める二人・・・・・・


 「それにしても、リザードマンを倒したこの魔法、これって何かな?」

 「おそらく、学校では教えていない魔法なのは確かね。魔術師ギルドとかで教わる軍事用の魔法かしら?」

 「そうだとしても、何でスライムがそんな魔法を知っているのかしら?」

 「魔力が無くてそもそも魔法を使えないっていうのに、知識だけは持っているっていうのも変な話よね」


 二人が不思議そうにこっちを見て来る。

 こっちはMP切れでふらついた時に投げ出され、そのまま床の上着地していた。


 このダンジョン、うっすらと砂埃が積もっているから、あまり床にいたくないのだがなー

 そんな僕を、レイシアは私も魔法が使いたいって感じの視線で、ブレンダはUMAでも見るような目付きだった。

 どれだけ考えても、多分答えは出ないだろうね~


 そして当然なのだが、カチコチになったリザードマンからは戦利品を取る事が出来なくなっていた。


 しばらく杖で殴ったり、ブレンダが火の魔法で暖めたりしていたけど、時間がもったいないと言って二人はそのまま諦め、先へと進む事にしたようだ。

 それにしても杖で叩くって、原始的だな・・・・・・




 ――――――



 実はスライムって強いの?・・・・・・By ブレンダ




 「何よ何よ何なのよ・・・・・・あのスライムはいったい何? レイシアさん・・・・・・相当運がいいですわね」

 「お嬢様、報告が届きました。特殊なスライムは発見出来なかったそうです」


 私の呟きを聞いたのか、執事が声をかけて来た。


 彼にはレイシアの連れていたスライムのように、知性を秘めたスライムを探してもらっていた。もしそんな特殊なスライムが他にもいたのなら、何かしら役に立ちそうだわ。


 「そう、ありがとう」

 「いえ、それでは失礼します」


 やはり早々見つかるものでもないようね。まあ直ぐ見つかるようなら、レイシアさん以外から情報が入っているでしょう。

 ということは、後は召喚すれば知能が宿るパターンくらいかしら?

 これは万が一を考えて自分で召喚した方がいいのかしらね?


 まずは知能の高いスライムが召喚出来るかどうかから調べましょうか。


 時間は有限。特殊なスライムの情報を手に入れてからでも遅くはないわね。

 召喚士を雇ってスライムを呼んでもらいましょう。


 ・・・・・・。

 「なんだこれは! いったい何が起こった!」

 「旦那様、これはブレンダお嬢様の実験だそうです」

 「実験だと? 倉庫をスライムだらけにするのがいったい何の実験になるというんだ。ええいこうしてはおれん。ブレンダを、ブレンダを呼べ! いったいあいつは何を考えておるんだ!」


 「スライムフェチ?」

 「・・・・・・。ブレンダ―――!」


 ブレンダの父の叫び声が屋敷の離れに響き渡る・・・・・・


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