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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第一章  気付くと僕は、スライムでした。
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1-6 魔法学科の授業

 歴史などの説明を適当に聞き流しながら、魔力とは何んぞやっといろいろ考えている間に座学が終わったようで、それぞれ生徒達が教室を移動して行く。


 他の生徒一緒ではないが、レイシアも本などを片付け教室を出て行くみたいだな。


 昼食を挟んだ後、レイシア達女子が向かった先はどうやら更衣室だな。


 ここにいるのは、どうやら午前中に教室にいた女子生徒なので、どうやらみんな同じ魔法使い系の学科なのだろう。

 科目は細分化していない。召喚科みたいな授業もあるのかと思ったぞ。


 生徒達は動きやすい服装といっても体操服ではなく、魔法抵抗が上がるんじゃないかって感じのローブへと着替え始めた。

 レイシアの肩に乗っていた僕は、そんな更衣室まで一緒に移動した為、役得だなって思う。まあそれを今の僕が見てもやっぱり性欲は無くて、嬉しいとも何とも思えなかったけれどね・・・・・・




 まあ詳しくは割愛して、訓練場みたいな場所へと移動して行く。


 校舎の外に出ると、他の更衣室で着換えたと考えられる男女の生徒達が一杯歩いていた。

 どうやらまとめて実技指導みたいな感じで、授業をするみたいだな。

 思っていたよりも全体の人数が少ないのかもしれない。

 レイシアの参加している魔法使いの教室は、大体三十人ちょっとってところか。


 周囲を見てみると、生徒の中には剣や槍、弓矢といった武器を持って移動する生徒なんかもいるところから、この学校は冒険者養成学校ともいうべき所で間違いないと予想する。

 なんとなく魔術師ギルド的な可能性も考えていたのだが、そっちならダンジョンに行ったりするより、魔導書の解読とかしていそうだったからな。


 そして見た感じ、剣や盾を持った生徒の数が圧倒的に多い。

 職業によって人数が違うだけみたいだ。

 魔法使いって、生まれつきの素質が必要そうだしなー




 その中でレイシアは一メートルくらいありそうな杖を持っており、他の杖を持った生徒達の後を追いかけるように、訓練場の一角へと向かって行った。


 やって来た所は、あちこちに魔法陣が仕込まれている開けた運動場みたいなところだった。暴発防止かな?

 肩の上に乗ったままそんな事を考えていると、運動場にはケイト先生が既に待っていた。


 「では皆さん、それぞれに間隔を空け安全を確認してから、基礎の火属性魔法からおさらいを始めてください。ただ順番にこなすのではなく、しっかりとイメージをする事。しっかり魔力を練りこむ事。発動してからも明確なイメージを崩さないで、最後までしっかり自分のイメージ通りに終了させる事。雑念を捨てて集中して取り込んでください」


 先生の指示を聞き、それぞれが軽く離れた場所で手に炎を灯したり、水の塊を呼び出したりといった練習風景が繰り広げられていく。ちなみにレイシアは呪文を嚙々で、ほぼ全ての魔法に失敗していた・・・・・・

 見事なまでのポンコツっぷりだなー


 「召喚、バット! その場で待機」


 これは魔法全般駄目だろうって考えていたのだが、唯一発動に成功すると思われる召喚魔法のみ、なぜか省略した魔法だった・・・・・・


 周りでレイシアより手早くおさらいを終えた生徒達が、呼び出されて待機するバットの羽音でこちらを見て来た。

 この時ばかりは、周りの生徒も不愉快だとでも言いたげに、長々とした呪文を唱えていたりする。


 あー、基礎も出来ないような生徒が何か一つだけ、飛び抜けた才能でも発揮したらそれは嫌われたりもするもするだろうな・・・・・・なんとなく今のレイシアの状況が理解出来てしまった。




 まあそれは今どうでもいいか。僕にとって大事な事はつい今しがた、レイシアが使った召喚魔法のおかげで魔力の流れみたいなものが、なんとなくといった感覚的な感じで理解出来た事だった。


 そしてそれと同時に自分の体の中にある魔力、多分ゲームだとMPと呼ばれるものが、圧倒的に足りない事実にも気が付いてしまったのだ。

 あー、僕には魔法的才能ってやつがないのね・・・・・・


 まあ、スライムになった時点で、ほぼ何もかもが絶望的だったのだけれど・・・・・・




 しかし才能が無いと分かっても、せっかくの異世界で魔法に対する憧れみたいなものはなかなかに捨てがたいな・・・・・・

 LVを上げたらMPとか増えないかなとか、未練たらしく考えていると自然と体がプルプルと震えて、まるで貧乏ゆすりでもしているようだった。

 どちらにしても、喉が無いから詠唱もままならん。

 これでは嚙々のレイシアの方がまだましな状況だなってレイシアの様子を窺ってみたところ、何かが視界の淵に見えた気がした。


 光の加減かな?


 特に何も見えなかったので、体を意図的に揺らしながら状況を再現してみようと考えたのだが、特に何もない。

 気のせいだったのかと思い、再び魔法について考え出したところ、薄っすらと自分の体に繋がる細い糸的な繋がりみたいなものが目に付いた。


 魔力の流れを見る力に反応して見える?

 ひょっとしてこれは召喚の主従契約とか、そういった繋がりってやつかも?


 魔力的に繋がっているのなら、この糸みたいなものからMPを吸い出せないものかな・・・・・・ご飯食べる時のようにチューチューと吸い出すイメージで・・・・・・


 そんな事を考えていると極わずかながらも、繋がっている糸が太くなり魔力が流れ込んで来た事に気が付いた。

 おー、やってみるものだな!

 そうとわかれば! 急いで火をおこすイメージを思い浮かべる。


 まあ初めだから簡単に、理科の実験でよく見かけるアルコールランプ的な小さな火を、現代科学的イメージで思い浮かべて炎を作り出してみる事にした。

 燃焼に関するイメージはばっちりだろう。


 (ファイア)


 口が無いので、心の中で呟いてみる。




 「なっ、ちょっと・・・・・・バグが何で魔法使っているのよ」


 レイシアの上げた声に、周りの生徒と先生の視線が集まるのがわかる。


 初めは何を騒いでいるのかって視線が、伸ばした手の先に灯る小さな炎を目撃し、驚愕のものへと変わって行った。

 やっぱスライムが魔法を使うって、変なのか・・・・・・


 「おいおい、何の冗談だよ。スライムが魔法使うなんて、聞いた事がないぞ」

 「もしかして新種のスライム?」

 「召喚主より先に、下僕が魔法使ってやがる」

 「皆さん、少し下がっていて下さい」


 ざわざわと、周りの生徒達が騒ぎ立てる中、ケイト先生が冷静な声を上げる。


 その生徒達を下がらせた先生は、レイシアの前まで来ると少し硬い表情でレイシアへと質問して来る。


 「単刀直入に聞きます。あなたはこのスライムについて、正確に状態を把握出来ていますか?」

 「すいません、私にはただのスライムとしか、把握出来ていません」


 それを聞いたケイト先生は、しばらく思案顔になる。


 あー、ひょっとしてひょっとすると、何かやばい事になるかもしれない?

 最悪どこかの研究施設とかで、解剖されたりとか・・・・・・




 「レイシアさん、しばらくこのスライムを借りる事は出来ますか?」


 僕は炎を消した手を思いっきりぶんぶんと左右に振って、嫌がって見せた。まあ、レイシアには嬉しがっているとか言われたけれど・・・・・・


 「ケイト先生。この子、バグはちゃんと私の支配下にあるので、暴走などの危険は無いかと思いますが」

 「魔法を使ったスライムの報告事例はありません。新種のスライムが誕生した可能性もあります。これは今後国を上げての調査をしなければいけない可能性がある問題なのです」

 「でも、この子は私が召喚した使い魔です」


 レイシアが必死に僕の所有権を主張する。


 短い付き合いではあるが、レイシアとしても手放せないって感じたのだろう。解剖されたら戻って来られないしな。


 「もしこの現象が、スライムだけでなく、他のモンスターにも出た場合、最悪全てのモンスターが魔法を使って来るという事態にも発展しかねません。今回の現象を特定する事は、人類全体の利益にも繋がります」


 これはいよいよ持って、やばかったりするのかな?


 人類全体とか言い出されれば、さすがに拒み切れない。


 宗教と同じで、こういう人類の敵みたいなレッテルを張られた場合、周囲全てが敵になって襲って来る可能性が出て来る。

 これはいよいよってなったら、レイシアを置いて逃げる事も考えなければいけないな。

 自分はスライムでしかないのだから、先生を含めて周り中の人から魔法攻撃なんかされた日には、確実にやられてしまうかもしれない。

 何かしらの対抗手段、脱出計画が必要になって来るかもしれない。




 「わかりました、どうしてもと言うのであれば私の立会いの元で、この子に危険が無いなら協力します」

 「ではしばらくの間は、窮屈な思いをさせるかもしれませんが、特別室にて待機を命じます」

 「わかりました、先生」


 その後直ぐに僕とレイシアは、魔法が使えない部屋に軟禁される事となった。


 軟禁されている間レイシアは教材を持ち込み魔法の勉強を、僕は最悪の事態を想定してこの状況を何とか出来ないかいろいろと考える事にする。

 まあ、スライムに出来る事なんかほとんどないけれどね・・・・・・それでも魔法が使えない状況っていうのは何とかしておきたい。

 たいした魔法は使えないのだが、いざって時に何が幸いするかわからないからな。


 そこで改めて部屋の中を見てみると、さすがに地下牢みたいな所ではないな。

 質素ではあるのだが、人が五人くらい入れそうな大きさの石造りの部屋だ。扉は鉄製で外には特に見張りはいないみたい。これは僕達が囚人じゃないからだろうな。


 反対の外側には、明り取りと空気の入れ替えの為か、天井付近に小さな鉄格子がはまっている。

 さすがに鉄格子とかスライムには無意味だろうな~

 人間、空気穴とか無いと窒息してしまうから仕方ないのだろうが。

 あの鉄の棒の隙間なら、余裕で本体の核が通り抜け出来そうだ。鉄の扉の方にも、監視用と思われる鉄格子がはめられているのだが、そっちも抜けられるだろ。元々人間用だから、よく見れば穴だらけって感じだ。


 いろいろと動き回るのは、レイシアが寝た後にしよう。




 その夜、さっそくレイシアが寝ている間に部屋を抜け出した僕は、まず魔法封じの仕掛けを潰しておく事にした。


 まずは外に出てみよう。


 人間には高い位置にある明り取りの為の鉄格子も、簡単に登れてすり抜ける事が出来てしまう。


 お約束としてこういう仕掛けは、魔道具を使ったり部屋の周囲に魔法陣を仕込んだりされているはずだ。

 大体そう予測を付けて、部屋の周辺を漁って行く。


 空調の為かメンテナンスの為か、隙間があるところに潜り込んでは天井や床下を探り、部屋の床下に魔法陣を発見した。

 まあ典型的な魔法封じの魔法陣だろう。って事で大体こういう魔法陣は、図形の一部を破壊すれば効果が切れる。


 そんな訳でチューチューと床を溶かし、魔法陣の破壊に取り掛かった。

 これでいざって時は魔法が使えるので、少しは有利に活動出来るかもしれない・・・・・・


 一夜にして対処出来たのは収穫だったな~


 後何をすればいいのかわからないので、わりと自由に行動しては出来る事が無いか探してみるとするかー




 数日して、いろいろやっているうちにそのままのネイミング、新種スライム調査団っていう偉そうな学者みたいなやつらがこの町にやって来た。


 「それでは早速、その魔法を使うスライムとやらを拝見させてもらおうか」


 なんだか偉そうな学者風の男が僕を見ながらそう言って来た。その目は本気で調査する気があるとは思えない。こちらを馬鹿にした感じの目をしていた。まあ所詮ただのスライムだからな。


 調査団のリーダーらしいき男に持ち上げられ、会議室のような部屋に移った。そこでひとまず僕が傷付かない範囲で体力測定みたいな検査を受ける。


 その結果、ドンドン調査団の連中が馬鹿にした目で見下して来るのがわかった。


 最後は知能テストなのか、羊皮紙が目の前に置かれたが、何が書かれているのかさっぱり理解出来なかった。すまん、現代人としての知能はあると思うのだが、この世界の文字は読めないのでさっぱりわからん・・・・・・

 何も反応出来ない僕を、知能が低いと判断していたよ。




 結論これはただのスライムであり、魔法は何かの見間違えであろうって事になり、調査団の鑑定結果は落ち着いたらしい。


 え? 何これ。それで終わり?

 まあ、解剖されなくてよかったけれどね。


 解放された僕達は、あいつら何しに来たのだ? って感じでその調査団の後姿を見送った・・・・・・




 ――――――



 デマに振り回される調査団・・・・・・By 教授




 最近の若者はよく似確かめもせず、やれ新種だ新発見だと騒ぎ立ておる。


 まずは相手をよく観察し、見間違えや勘違いではないかと確認してから報告してもらいたい者じゃ。

 そうすれば報告に上がった者のうち大半が勘違いや、見間違いだとわかるのじゃ。


 ついこの間もネズミ型ケルベロスだと報告を受けて向かったら、三匹のネズミがじゃれているだけだった。全くけしからん。


 今回のスライムも、何が魔法を使うスライムじゃ!

 碌な知能もないスライムに、魔法が使える訳がない。そもそも体内に魔力が欠片も存在しておらんのじゃ。


 せめてなにがしら普通のスライムとの差異がないかと調べてみたものの、多少野生のスライムより身体能力が高いくらいじゃった。

 これは召喚主の少女が、スライムの事を死なないように大事に育てていた結果じゃろう。

 単に成長しただけだわい。


 全くこれだから若い教師は・・・・・・生徒の方がまだがんばっておるのう。


 このように、新種の生き物を発見するのはそうそうある事ではない。

 それでもわしらは知的探求心を満たす為、今日も新種発見の報告を確認する旅を続けるのじゃ!


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