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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第二章 マジで死ぬかと思ったよ
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2-13 戦いの行方

 ただどちらにしても、今の段階で僕らのパーティーでは手の打ちようがない事に変わりはない。

 そう考えている間にも、ジャイアントが僕めがけて拳を叩き付けて来たので、転がってその攻撃をかわす。

 転がりながら避けて浮上すると、そこでふと別のアプローチを考え付いた。


 「キュキュルウキュウル(深遠の底へ落ちろ、アースフォール)」


 今のところ何も出来ずに見守っているだけのフェザリオから魔力を吸収して、ジャイアントの足元に縦長の穴を掘る。

 さすがにこれ程のモンスターを目の前にして気絶されるのはまずいので、魔力消費量を加減した中途半端な魔法になってしまった。


 ジャイアントの足元に出来た穴の深さは、胸の少し下辺り。

 とっさに思い付いた方法を試すには、全然足りていなかった。自分の魔力を使いたい・・・・・・だが穴を掘る魔法は土属性で、火属性以外使えないから仕方が無いところだ。

 どうしたものか・・・・・・




 「大地に穴を穿て、アースディグ」


 それを見ていたブレンダが、僕の掘った穴をさらに広げ、ジャイアントを完全に落としてくれた。

 ナイスアシスト!


 おかげでジャイアントの頭一つ分は地面より下の位置に落ち、そこで見動き取れずにもがいているのが上から確認出来る。


 両手を下にして、穴にぴったりと収まるように落ちているので、早々抜け出せないだろう。

 しかし時間をかけてもがけば、こんな耐久力も無い土など、簡単に崩して抜け出して来るだろうな。

 急いで次の段階へ移行せねば!


 「とりあえず、動きは止められたみたいだけど、これからどうしたらいいのかしら」


 ブレンダが困ったって感じの声で、警戒したまま木の後ろから声を出す。


 「生き埋め?」


 レイシアが、首をかしげながら提案というか、効くのかなって感じの声を出す。


 「生き埋めにするにしても、これだけ力がありそうだと、穴を掘って時期に出て来そうな気がするよな」


 ランドルが言うように、確実な方法って気がしない。


 実際にこうしている今も、暴れているせいで少しずつ腕の周りの土に、隙間が出来つつある。


 穴に落として終わりなんて単純な方法で、仕留められる程簡単な相手ではないよ。




 やはり確実に倒すのなら、やはり息を止めないと駄目だ。


 「キュルキュユゆうキュル(炎よ荒れ狂え、ファイアストーム)」


 穴の中に炎の渦を呼び出した。でもってもういっちょっ!


 「キュルルキュウウ(風よ塞ぎ給え、ウィンドシールド)」


 レイシアから魔力を少し奪って、穴の出入り口を塞ぐ。


 腕力で呼吸を止めようっていうのがそもそも無謀だったのだが、方針は悪くなかった。

 なので、穴の中に空気が流れ込まないように風の魔法で空気の流れを切り離し、中の酸素を日の魔法で消費してしまおうという作戦だ。これならばっちりだろう!


 みんながなるほどって感じで、ジャイアントの最後を確信し、ようやく穴の側まで様子を窺いに出て来た。


 数分して、ジャイアントが顔を赤くして悶えるように暴れるのがわかる。

 さすがに生命力が高いな! まだ粘っている。


 観察する事さらに数分が経つ頃には、青い顔をして徐々に動きを鈍らせて行くのが見ていてわかった。

 ここまでくればもう安心だろう。さすがに土をどかすだけの力は残っていまい。


 結局やる事はスライムの時と、変わらないなーって考えつつ、ジャイアントの討伐が終わった事を実感した。




 「さて、おそらくは大丈夫でしょうけど、ジャイアントは生命力が強いから念の為もう少し時間を置きましょう。しばらくここで休憩して、討伐部位を回収したら帰還しましょうか」


 ブレンダがそう言って、僕らはのんびりする事にした。


 のんびりしつつ穴の淵から中を見ていたフェザリオが、ぽつりと呟く。


 「こんなでかいモンスターの、どの部分を持って行ったら討伐の証明になりますかね?」

 「しかも、大半が埋まっているからな・・・・・・」


 みんなが穴の周囲に集まって来て、微妙な表情を浮かべる。

 はっきり言ってしまえば、顔ぐらいしか出ていない感じ? もういっその事目玉でも持って帰えればいいのでは?


 「これだけの大きさなんだし、耳でいいじゃない?」

 「そうだな、じゃあそろそろいいかもだし、ちょっと行って来るよ」


 ブレンダの意見を聞いて、ランドルが討伐部位を取りに穴の中へと降りて行った。


 ジャイアントがまだ生きていたっていう事件も無く、皮膚の硬さに時間を取られはしたが、何とか無事に二つの耳を切り取る事が出来たようだ。


 討伐部位をブレンダがバックパックへと仕舞い、死体はこのまま土を被せて埋めておく。


 あれ? こういう異世界物の設定だと、死体はアンデット化するのでは?

 このままでいいのだろうか・・・・・・まあ、焼却処分したくても、燃えないのだが・・・・・・


 撤収準備が整ったところで、僕達は学校を目指して移動を開始した。




 一日かけて村まで戻って来ると、その日はそのまま村で休む事になった。

 というのも、学校がある町までの乗合馬車が朝じゃないと来ないからだ。


 町・・・・・・なんて名前なのか・・・・・・今だに地理とか世界観とか不明なままだなー。まあいいや。特に困らないしね。


 炎を消して周囲に驚かれないようにしていたので、宿には問題なく泊まることが出来た。


 特にこれといった揉め事もなく、乗合馬車に乗って町を目指す。


 行きに山賊が出るというトラブルが発生したので、帰りは道中も警戒を怠らなくなっていた。

 そこはちょっと成長したのかもね。


 しかしそういう時に限って何も起こらず、無論モンスターの襲撃もなくスムーズに町まで到着する。


 結局は行きでの一日だけが予定外といった感じになったかな。

 こうして初めての依頼は、一応無事に達成した事になる。


 さっと行ってさっとジャイアントを討伐するだけって思っていたのだが、結構内容の濃い冒険になったものだ。

 出だしから予定を狂わされ、ジャイアントも楽勝とはいえない結果になるとは・・・・・・中々予定通りにはいかないものだね。




 冒険者として鍛えて来たとはいえ、初めての冒険をやっと終え町に帰って来ると、みんな疲れた表情をしていた。

 まだまだ持久力に問題が残っていそうだな。これはそのうちに慣れるだろう。


 乗合馬車の乗り場から冒険者ギルドはわりと近場にあるので、学校に行って休みたいところを我慢して報告に向かうようだ。

 まあその方が気兼ねなく休めるだろうしね。


 報告自体は問題なく終わる。


 受付の人にはジャイアントの討伐達成を驚かれたけれど、ブレンダ達にはそれに付き合う元気はなかった。


 いろいろと話を聞きたそうだったけれど、受付の方も今は休ませようって感じで事務仕事だけ簡単に済ませてくれた。


 後報告する必要があるのは学校側だけだ。


 重い足取りで学校へと帰る。


 がんばれ! もう直ぐでゆっくりと休めるぞ!


 僕は精霊だから、人間みたいに疲れずにすんでいる。やっぱり人間って不便だな。

 レイシア達を見ていると、人間をやめてよかったって思えて来るよ。




 学校側への報告はケイト先生が受け持っていた。たぶんブレンダの担当教師だからだろうね。


 いろいろと無茶はしないようにとお小言を聞き、今回のクエストの反省会と、改善すべき所があるならばそれの改善をしっかりするようにと言われる。


 なんにしろジャイアントの討伐に向かって、無事に帰って来られた事は喜ばれた。


 どうやら魔法に関して、無効化まではいかないまでも高い抵抗力を持っていたらしい。魔法使いが相手にするには、相手が悪かったって事だね。

 もっと事前に情報を集めるよう言われたよ。

 そういえばこれって授業の一環だったのだな。

 普通に討伐依頼をこなして来たから、忘れそうだよ。




 そしてこれからの学校の活動は、このままギルドでクエストを受けていく事になるそうだ。


 個人又はパーティーで未熟だと感じる事があれば、座学や実技指導を受けつつ卒業を目指すらしい。


 ギルドに通うか、授業を受けるかは個人の自由になるそうだ。

 そんな訳で今後の活動は、ソロでなければパーティー単位でするようにと言われた。


 でも今日のところは各自ゆっくり休んで明日みんなで反省会、そして次に向けての準備などをする事になる。


 冒険が終わったばかりだからな~

 僕も疲れたよ・・・・・・




 ――――――



 今現在、ジャイアントと戦闘しているぜ!・・・・・・By ランドル&フェザリオ




 「おいおいバグ大先生様。ジャイアントに魔法が効かないってどういう事だよ・・・・・・こっちはバグ大先生が倒してくれるって話だったから、石を投げつけられても笑って許してやったっていうのに」

 「さすがにあれは、痛かったです」

 「はん、所詮はモンスター。結局最後に役に立つのは冒険者って事だよな!」


 「でもランドル。実際のところジャイアントを僕達で倒せるの?」

 「いや、倒せるかどうかっていうか・・・・・・倒さないと俺達先が無いからな?」

 「そんな・・・・・・。さすがにいきなりジャイアントなんて、無理に決まっているじゃないか!」

 「だよな・・・・・・俺達せいぜいリザードマンくらいしか倒せないのに、いきなりジャイアントなんて、無茶だよな!」

 「ええ。そのリザードマンですら五人くらいのパーティーで相手していましたから・・・・・・ジャイアントを倒そうなんて、十年は早いですよ!」

 「ちょ、十年はさすがにかかり過ぎだろ!」

 「そうですか? どちらかといえば、今持ち応えている方が不思議なんですが・・・・・・」

 「それは優秀な俺様が盾役でしのいでいるからな!」

 「あっ。バグさんがジャイアントを穴の中に落とした。なんか膜の様なもので覆って・・・・・・段々ジャイアントが動かなくなっていきますよ!」

 「はあ?」

 「完全に沈黙しましたね」

 「・・・・・・。・・・・・・さすがバグ大先生様! これからもよろしく頼んます!」

 「・・・・・・。」


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