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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第二章 マジで死ぬかと思ったよ
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2-4 イフリートの恐怖

 一緒に魔法科の教室へと向かって移動していると、前方に今までレイシアの事を馬鹿にしていた、同じ学科の連中が見えて来た。


 どうやら教室から出て、友人とお喋りなどしているようだな。


 ここは剣と魔法の世界だと思うが、なんとも平和な雰囲気がある。

 今ここだけを抜き出せば、ほのぼの学園ものって感じに見えるのだが、イフリートが紛れ込んでいるよ! なんて違和感バリバリな状況だろうか・・・・・・まあ僕なのだが。


 そしてそんな僕の姿を見付けると生徒達は例外なく、慌てて廊下の端に避けるように移動する。

 あー、そんな態度するとからかいたくなるよな~。特に今までレイシアの事をからかっていた連中には・・・・・・


 スライムの時は自由に手が伸びたのだけど、今回は右手に炎の鞭を出して、その生徒に向かってぶんぶんと振り回してみた。

 おーおー、慌てて逃げて行く。


 「バグ、止めなさい」


 うーい。


 まあ逃げちゃったしこれ以上からかえないから、どっちにしても止めるしかないのだけどね~


 軟禁されていた間にいろいろ試したから、いろいろとからかう方法はあるのだけど、まあ今日のところはこれで許してやるか!

 これって僕がいじめっ子になっている?




 僕達が教室の中に入って行くと、中にいた生徒達の雑談がぴたりと止まって、張り詰めたような緊張感が漂って来た。

 教室内の視線を全部集めちゃっているではないか。

 こっちの方が緊張してしまう。


 だが彼らにしてみれば、僕が暴れないかどうかが気になるのだろうな。余計な事をしなければ、暴れないぞ?


 「おはようレイシアさん、バグも」

 「おはよう、ブレンダ」

 「キュイ(よー)」


 今までと違い、ブレンダが挨拶しながらレイシアの隣の席へと座って来た。

 こんなところも今までと違って来たのだなーって思いながら、まあレイシア自体は相変わらず後ろの方の席に着いた。

 最近いろいろと係わり合いを持っていたから、だいぶ親しくなったのかもな。いい傾向じゃないか?

 見たところ、友達なんて一人もいない感じだったから、同性の友人を作っておくことは大事な事だろう。


 まあこんな事、僕か気にするような事ではないのだろうがな。




 しかし教室内の雰囲気はさほど変わってはいないようだ。


 見下していたのが、警戒に変わったくらい? 意外に大きな変化だな。


 前に座っている生徒達はそんな僕達の様子が気になるのか、ちらちらと様子を窺っているな。

 からかってやりたい気持ちもあるのだけれど、あまり手の内を見せるのもなんかしゃくだ。


 しかしちらちら見て来る生徒達は、何気に気が散ってうっとうしいぞ。

 特に何かに集中して作業している訳じゃないけれど、気になって仕方がないのだ。これなら完全無視の方がましだな。

 お前ら、それ得意だったのだろう? こっちの事など気にするなよ。


 ここに来るまでの廊下で見せた炎の鞭を出して、こっち見るなと振り回して抗議する。

 あー、なんか余計にちらちら様子を窺って来るようになってしまったか?

 選択を間違えて、逆効果になってしまったようだ。


 でも何もしなかったとしても、やめたかどうかわからないしな。


 そう考えつつ続けていると、やがて生徒達もこっちを窺うと鞭が飛んで来る事から、なるべく見ないよう気を使うようになった。


 今までと違い、油断ならないモンスターになって、下手に刺激したらやばいって感じかな?

 ここは結果オーライと思っておこう。




 「今まで最弱のモンスターだったスライムが、炎の上位精霊になったんですもの。凄い大出世よね」

 「さすがにドラゴンは無いって思っていたけど、上位精霊も予想外過ぎだよ」

 「もうバグに関しては、常識が通じないって思った方がよさそうよねー」

 「でも、例えばゴブリン辺りに進化したとしたら、前の戦法が使えなくなるから進化というより退化になるね」

 「確かに、それは大幅な戦力ダウンね。って事はバグの場合の進化は、以前よりも戦術の幅が広がる方向に進化するって事かしら?」

 「どうなのかな、まだ一回だけの進化だから情報が足りないかも。それに今回の事で、気軽に進化させる気になれないし」

 「確かに。流石に姿が見えなかった時は、やっちゃったって思って焦ったわよ」


 周りの視線から開放されたのがわかったのか、レイシア達は気軽にお喋りを始めていた。


 監視されながら気軽なお喋りは無理だろうな。


 何とか教室内も落ち着いたと思ったらいいのだろう。僕達限定であろうが・・・・・・


 そんな雑談をしていると、教室にケイト先生がやって来た。


 今更だが、日本の学校みたいにチャイムとかがないのだよな。これでよく集合時間などがわかるものだ。集団活動に支障は出ないのだろうか?


 それにしても、何となく先生に会うのも久しぶりに感じる。

 挨拶代わりに手を上げると、少しビクッとするのが面白かったりする。


 今回の進化はたまたま上手くいっただけで、今でも微妙に恨めしい気持ちは残っているのだ。


 ケイト先生はちょっとやりにくそうな感じで、魔法の授業を始めた。

 微妙に泣きそうな表情をしていないか?


 結果的に酷い事にはなっていないのだから、ここらで許しておくかな。懲らしめる事には成功していそうだしね。




 特に何事もなく午前の授業が終わり、僕達は食堂へと向かう。

 いつもなら僕も一緒にご飯を食べるのだけど、流石に精霊になった僕にとって人間の食事は触れただけで燃えるだけの物質だ。見ても特に食べたいともなんとも思わない。

 感覚的に、ご飯って認識がなくなっている。

 どちらかといえば、燃える物? あえて言えば燃やして遊ぶ玩具って感じか。


 料理をご飯と思えなくなっていた。

 体の変化に、意識が引っ張られているのだろうか?




 まあいいや。スライムの時にも感じたのだが、そこまで美味しいとも思わなかったからな~


 実際特に何も食べていなくても、お腹が空いたって感じはしないし。


 こっちはそう考えていたのだが、レイシアは僕用に皿を用意しているようだった。

 一緒に食べる気満々だな。


 でも、今現在の僕の全身を見回して首をかしげる。


 どうやらレイシアも気が付いたようだ。

 ご飯を一緒に食べられないのかって感じでこっちを見て来たので、そうだな・・・・・・食べるならこれって感じで、厨房の中に入ると、空いている料理用の炎を少しだけ食べて見せる。

 なんていうか、人間の頃でいえば水を飲んでいる感覚に近いかな?

 確かに火を吸収出来たのだが、別にお腹が膨れる訳でもない感じ。あえて言えば、吸収出来るだけって感じだ。


 意識してみれば、周囲の空中にある魔力を吸収してから、どうやらそっちがご飯ってところだろう。

 つまり、あえて何かを食べる必要性がない。

 火を食べて見せたのは、いわゆるポーズに過ぎないだろうな。こっちはこっちでちゃんと食べているから、気にしないでってパフォーマンスだ。




 それを見てレイシアやブレンダは、なるほどって感じで何か考えながら自分達のご飯を持ち、テーブルへと向かった。


 「一緒に食事するなら、調合で使うアルコールランプを持ち歩くのがいいかもしれないわね」

 「確かに、それなら持ち運びも便利だしいいかもしれないね」


 あー、確かにそれなら一緒に食事って感じになるかもな~


 まあ今の僕としては、そんなにがつがつ食べる感じじゃないのだけれどね。

 だけど、レイシア達は一緒に食事をする事に拘っているようだ。

 召喚主としての矜持とかがあるのかな? 使役するのなら、ご飯は用意しないといけないとか・・・・・・出来ればご飯抜きで、自由をください。




 お喋りしながらの食事が終わり、午後から実技の授業に行く為、レイシア達が着替えに向かった。でもって今回は部屋の外で待たされる。


 精霊とはいえ、さすがに男の姿をしているのが、どうやら気になったようだ・・・・・・

 スライムと違って、さすがにペット感覚じゃあいられないよな。


 まあこっちも微妙にいたたまれなくなるからいいのだが。前みたいに怒っているとかじゃなければ、正直居づらい。


 それにしてもこれ、両手にバケツ持っていたら、廊下に立たされているみたいだな。


 僕が学校に通っていたのなんて、何年前なのだか・・・・・・廊下に立たされるなんて小学校くらいだから、遥か昔の光景だな。

 そんな事を考えていると、余計に虚しいと言うか寂しいと言うか、ズーンとした空気になる。

 まあ廊下に立たされるなんて経験、した事が無かったがな。


 今になってこんな気分を味わうとは、異世界ってあなどれん。




 そもそも何で異世界に来て廊下に立たされなきゃいけないのだ?


 同じまたされるにしても、どこか別の所で自由に過ごしたいものだな。本・・・・・・は読めないから、外で経験集めとか魔法の訓練辺りが楽しそうだ。

 それならいくらでも待っていられるだろう。


 女性の着替えは時間がかかるからな・・・・・・


 ポツポツと部屋から出て来る少女達が、そんな僕を見てビックリしながら移動して行くを横目で眺めた。

 こういうのも気まずい!




 しばらく待っていると、着替えたレイシアが出て来たので、一緒に訓練場へと向かう。


 スライムの時と違って、自分の意志で動いているっていいなと思う。


 ちなみに浮遊しているが、自然と動き方がわかる。当たり前のようにあっちに行きたいと思っただけで、そっちに進むようだ。ここら辺りはこの体が理解しているのだろう。


 さて座学とは違い、実技はレイシアにとって苦手な授業である。

 それは何度か見ていたのでわかっている。


 座学の授業なら前のめりで勉強しようとしているようだが、実技の方は足取りが重そうだ。

 運動が苦手な子は、こんな反応だよなー




 訓練場に着くと、いつも通り基礎魔法からの復習を周りの生徒達が始める。


 その生徒達の最後尾で、本当に気乗りしない感じで、遅れてレイシアも基礎の魔法を使用した。


 「我と踊れ、ファイア」


 今までと違い極々短い詠唱と共に、レイシアの指先に燃え盛るような炎が出現する。

 魔法を使った本人の方がびっくりしている感じに見えた。


 今までと違い、魔力がするっと流れたな。


 これまでは使えても、風が吹けば消えそうな弱々しい炎ではなく、ごうごうと燃え上がるような炎だ。

 上達したじゃないか。いや、これって上達になるのか?


 まあ召喚師なら、これでいいのかもしれないな。


 そう思っていると、周りの生徒達が、えっ? って感じで動きを止め、レイシアに注目しだした。

 今までまともに詠唱すら出来てなかったのに、いきなり力強い炎を呼び出したのだから、そりゃあビックリもするってものかもね。


 炎が出た時、僕は魔力の流れを感じて何が起こったのかを理解している。


 多分これは以前の僕の逆バージョンで、今度はレイシアが契約を通じて僕から炎の力を受け取っているのだろう。

 種がわかってしまえば、納得出来てしまうので、僕は驚く事もない。


 しかし炎を出した本人のレイシア自身が、よくわかっていないようだな。

 今だ自分で出した炎に驚いていた。




 でもこれって多分火属性だけじゃないかな?


 いろいろ試した時、逆に僕は火属性だけしか使えなくなっていた訳だし・・・・・・レイシアはまだ気付いていないのだろう。


 あー、そういえばレイシアのMPを使うのなら、他の属性が使えたりするのかな?

 ちょうどいいので試してみるか~


 「キュルル(氷よ)」


 とりあえず、氷を出してみる事にする。


 自分と対極の属性なのでこれが成功するのなら、どの属性も使えるって事だと思う。

 果たしてその結果は・・・・・・無事にレイシアからMPを貰い、氷を生み出す事には成功した。

 ただ一瞬で溶けて、水になり蒸発してしまったけど・・・・・・


 生み出せても使えね~


 これ植物とか出せたとしたら、一瞬で燃え尽きるな。金属なら溶ける? いやそこまでの火力はないか。


 この事から実体のある属性は、相性が悪いって事がわかった。


 という事で、お次は実体のない属性を調べてみるかな。


 「キュキュ(闇よ)」


 手の先が暗闇に閉ざされる。


 なんか手が闇に食べられている感じがして寒気がする。おそらく気分的なものだけれど、あまり使いたくないぞ。


 多分今の僕なら無理をすれば、氷も使える感じだな。

 そして問題なく使えそうな属性は光辺りだと予測する。


 いろいろ試している隣では、予想通り火属性のみ使えるようになったレイシアが、他の属性に四苦八苦しているのが見えた。




 ――――――



 精霊について・・・・・・By 精霊科担当教師




 精霊に付いて説明しよう!


 まあ、説明はいいのだが、私にはあまり出番はないのかな? まだ名前が無いようだ。無念・・・・・・


 仕方ない、授業・・・・・・いや説明を続ける!


 基本的に精霊とは、別世界の住人である。

 彼らは魔力の塊であるが故に、肉体を持っていない。

 だから当然、魔力のこもっていない武器などで傷付く事はない。


 凄く厄介な事には違いないのだが、その精霊が持つ属性以外の魔力を込めた物で叩けば、十分にダメージを与えられる。

 つまり、それ程恐れることはないって事だな。




 精霊の厄介なところは通常武器が効かないというところにあるのだが、それ程気にする事はない。


 たいていの精霊は、むやみやたらに人を襲ったりはしない。


 例外は狂える精霊だな。

 精霊が狂ったりするのは、大抵が人間による何らかの魔力実験が原因だ。今はあまり聞かないのだが、昔はあったらしい。


 まあ、遭遇した時には倒してしまっても問題はない。

 他の精霊から怨まれるって事はないようだからな。逆に感謝されるって話もある。


 そこら辺りの事情は、さすがに文献にも内容だな。




 さて作中に出て来たイフリートだが、火属性最上位の精霊であるとされている。


 本来こんなところで出て来る存在ではないのだがな・・・・・・異世界・・・・・・精霊界とも言うが。何かあったのかもしれないなー


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