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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第二章 マジで死ぬかと思ったよ
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2-3 バグと対決後の後処理

 「ケイト先生! その子はバグです!」


 お互いに覚悟を決め、さあ決着をと踏み出した瞬間、僕らの間に割って入って来たのはレイシアだった。


 急に間に飛び出して来たら危ないだろうって思いつつ、慌てて攻撃を止める。


 レイシアは二人の間にあって、僕の方へと顔を向けて来た。

 そして涙目になりながら睨んで来る。

 どうやら僕の行動に文句があるようだ。っていうか、レイシアには僕が見えているのか?

 いやそれ以前に、他の先生やケイト先生にも見えていたか・・・・・・




 「やっと追い付いた。もうレイシアもバグもいったい何やっているのよ」


 レイシアに遅れること少し、教室に入って来たブレンダもレイシアの隣へとやって来る。


 何だこれ、ひょっとして何か勘違いでもしていたのか?

 ブレンダの様子からは緊迫感もちょっと前の悲壮感も何も無く、いたっていつも道理の様子に戻っているようだ。


 まあいつもっていう程、付き合いは長くないのだが。


 「あー、レイシア。やっぱりバグは何か勘違いしているわね」

 「とりあえず、バグお座り」


 え、わんころと合成されたからってそんなの嫌だよ。


 命令された瞬間思わずそう反論したくなったけれど、それより先に体が反応しようとした。くっそ、強制力か!


 強制力に抗い、断固としてお座りを拒絶する。


 まあ必死に耐えるので精一杯になって、その場でプルプルしているけれど。意地で座り込もうとするのを押さえ込んだ。

 そんな僕を見て、座らなかったけど特に攻撃出来ない状態だと判断したのか、レイシアはケイト先生の方に向き直る。


 状況説明ってやつかな?




 「ケイト先生、すみませんでした。この子、錬金術の合成で進化したバグなんです。合成した直後、姿がまるっきり見えない状態で、初めは失敗して死んじゃったんじゃないかって思ったんですが、教室を飛び出して行った透明な何かがいたってわかって、今まで探していたんです」


 合成進化の事を一気に説明していた。その内容に思わず、ポカーンとしてしまう。


 聞いた内容からすると、今の僕は死んで幽霊になった訳じゃないって事だよな。

 とすると、進化先が幽霊だったって事になるのか? それはそれで嫌なのだが・・・・・・


 「えーっと、それで何で私はバグ君に襲われる事になったのかしら?」


 なんとなく呆然としながら先生が呟く。


 気が抜けたような、生気のない声だった。


 先程まで死を覚悟していたから余計かもしれないな。


 おっと、油断するとお座りしそうになる・・・・・・何とか強制力に耐えつつ、続きの説明に耳を傾ける。

 そもそも今の僕って耳、あるのかな・・・・・・?


 「レイシアから聞いたんですが、バグの進化を薦めたのってケイト先生じゃないですか。合成する時バグって物凄く嫌がっていて、それを強制的に進化させちゃったんですよね。合成が終わってみれば肉体が無くなっていたので、バグとしたら死んで零体になったんだと錯覚したんじゃないかと思いますよ」


 次の説明はブレンダだった。




 悔しい事に、大体ブレンダが予想した通りの動機だな。思わず頷いてしまう。

 だが勘違いであったとしても、謝るつもりは無い!


 今でも別の生き物と混ぜられるなど、真っ平ごめんだ!


 「キュルキュルル・キュル?(ひょっとして、ちゃんと進化したって事か?)」


 それはそれとして、あれほど暴れまくって勘違いでしたって・・・・・・嘘だろう。思わず確認してしまった。


 こうなると、会話出来ないっていうのが良かったのかもしれないな。

 いや、恥ずかしいのは変わりないのだが、言い訳しようにも言葉が通じないのだし、うやむやになるだろう。


 でも合成されたって言うのは、正当な怒りなので問題ないのかな?


 結果的には死人も出なかったと思うし・・・・・・それで勘弁してくれ・・・・・・


 「おー、なんか喋っているけどよくわからないし、耳障りな言葉ね。まあなんとなくなんだけど、貴方死んでいないわよ」


 改めて聞くと、何となくホッとしてしまった。あ! 駄目だ。気を抜くとお座りしそうになる。気合気合!

 ていうかこの命令、いつまで続くの!




 結局自分の種族は何になったのか・・・・・・確認するように自分の手を見てみる。

 そこには炎に包まれた人間の様な手があった。あ、足は?

 下を見てみるけど、そこに足は存在していない・・・・・・


 えー、これじゃあ幽霊かどうか、はっきりわからないのだが・・・・・・


 陽炎のようにゆらゆらと揺らめく下半身がある。ただし腰より下は透き通るかのように消えていて、よくアニメなどで表現されているような幽霊そのもののようだった。

 ねえこれどっち、結局は幽霊? それともこういうモンスター? 誰か姿見の鏡を持って来てくれ・・・・・・


 きょろきょろとしていると、ケイト先生が僕を見て、こう言った。


 「今のバグ君は、ファイアエレメンタルって呼ばれる精霊ですね」


 え?

 犬っころと卵で、何で精霊になるの?

 どこに精霊の要素ってあったの? しきりに首を傾げる。


 いろいろ疑問はあるが、精霊か。


 それなら確かに幽霊っぽいやつもいるよな。

 なんか生きていてよかったけれど、いろいろと納得出来ないよな。




 そして今回いろいろと暴れまわった僕は、前に一度入った魔法封じの部屋(修理済み&強化済み)で、校舎の修繕と怪我人の完治が確認されるまで、軟禁される事となった。

 反省しろって事だろう。


 いや、危険だから生徒から隔離しておけって事か?


 穴だらけの部屋だから、こんな部屋僕には無意味なのだが、まあおとなしくかな。


 そうそう前回ここに入れられた時と違うところは、今回は僕一人がここに入れられているというところだ。

 いや普通に前回、レイシアがここに閉じ込められていたのがおかしいのだが、初めての別行動になる。


 レイシアとの付き合いは短いので、そこまで気にもならないのだがな。

 ただ問題としては、暇だって事だ。


 逃げようと思えばこんな穴だらけの部屋は、さっさと逃げられるのだが、まあ暴れ過ぎたっていう負い目もあるのでおとなしくしていよう。


 こういう時魔法書でもあれば読みたいところなのだが、文字は読めないしそもそも持って来てって言っても、言葉が通じない。暇だ~




 そんな感じで暇を持て余していたところへ、レイシアとたぶん教師かな? 中年の男性がやって来た。

 その男は扉越しに、こっちをじっと観察して来る。

 まるで動物園のパンダにでもなったかのようで、落ち着かないのだが・・・・・・しきりに首をかしげて、なにやら考え込んでいるようだった。


 何と言えばいいか、ちょっと変質者かって言いたくなるな。

 いったい何だろう?


 「これはファイアエレメンタルじゃなく、より上位に位置するイフリートじゃないかと思います」

 「先生それって、上位精霊では・・・・・・」

 「はい、火属性の最上位精霊かと。私としても、上位精霊を見るのは初めてですよ」


 マジか・・・・・・


 二人の会話を聞いてみると、どうやらこの男性は精霊科の教師をしていて、ケイト先生の見立てに不審を抱いたというのだ。


 ファイアエレメンタルにしては、火力が強過ぎたのが引っかかっていたのだそうだ。


 専門が違うから間違えたってところか?




 それにしてもそんな上級の精霊を、こんな部屋に入れてもなんの拘束にもなっていないのだが・・・・・・


 思いっきり扉も壁も、実体を持っていない今の僕は通り抜けられる。


 だって炎引っ込めたら、幽霊みたいになんでも素通り出来ちゃうのだ。

 これって意味がなくないか?


 今考えればやり過ぎだって気はするので、逃げたりはしないけれどね。


 せっかくだし、この機会に自分に出来る事を調べておこう。そんな感じで暇を潰す事にした。


 壊した建物の修理と、怪我人の治療が終わるまで、ここに軟禁するって話だからな。これからかなり、暇な時間を過ごさなければいけないだろう。


 もちろん邪魔な魔法封じは再び壊させてもらう。魔法も使えるようだし、検証するには邪魔なのだよ。

 素通り出来るので、いくらでも壊しに行ける。

 強化されていると入っても見た感じ、多少抵抗が強くなったかなって程度にしか感じなかったよ。

 轟々と燃える手で撫でていたら、普通に魔法陣は壊れていた。実にあっけないものだ。




 散々暴れた割には六日という期間で解放された理由は、おそらくここが異世界で魔法の力があったからだと考えられる。だって校舎の修繕も怪我の治療も魔法で出来ちゃうのだから、そりゃあ元の世界より治すのは早いだろうね~


 まあそれはそれとして迎えに来たレイシアと会うのも、六日ぶりともなればなんだか随分と久しぶりだなって感じる。


 僕はスライムの時のように肩には乗らず、彼女の横に浮いて付いて行く事にした。


 さすがに全身炎に包まれた上体の僕を、肩に乗せるとかはないな。

 特に意識しなければ、周囲に炎が燃え移ったりはしないのだが、顔の直ぐ傍で火が燃えているっていうのはなかなかの恐怖を誘うだろう。

 後単純に僕の体がでかくなったという事もある。


 足がないだけで、レイシアくらいの人型の大きさがあるのだ。肩に腰掛けていたら邪魔になるだろうな。


 だから立ち位置は気にならないくらいの距離で、同じ目線で横に並んだ。


 まんま幽霊だな・・・・・・




 本来そこまで気を使う必要性はないのかもしれないのだが、こちらが立ち位置を決めていると、何となくレイシアがそわそわしていた。


 わずかな間だけれど、肩に乗せていたのが当たり前って感じになっていたのかもな。慣れないようだが、それも今だけだろう。


 慣れない位置関係で教室までの廊下を進んでいると、そこにいた男女問わず生徒達が、僕達を避ける様に左右に退くのが見て取れた。


 確か以前は馬鹿にした視線を送っていた生徒達だと思うが、今の彼らは目を合わさないよう壁際に寄り、嵐が通り過ぎるのをじっと待つかのようにおとなしくなっている。

 早速僕の事が知れ渡ったのだろう。


 さすがにスライムは馬鹿に出来ても、イフリートを馬鹿には出来ないだろうな~

 下手にちょっかいを出したら、燃やされかねん。

 さすがに僕もそんなのが歩いていたら、逃げるね。まあそんな危険な存在が僕自身なのだが・・・・・・




 それにしても、前に比べればまだましになったといえるのだろうか?


 この状態が良いか悪いかはなんとも言えないのだけど、レイシアはどう思っているのかな?


 誹謗中傷が無くなった事は、プラスになっていると考えられるが、はっきりいってこれは恐れられているって感じだからな。苦手な人間は苦手とする状況だろう。


 普段は見えないように存在感を消していた方がましだろうか?


 ちょっと炎を消して反応を見てみるか。


 透明になって姿を隠した僕に反応し、レイシアが首をかしげて横を見る。


 「バグ?」


 ちょっと不安そうな感じ。周りの生徒達については元々気にしていなかったってところかな?


 うーん。姿を消すのはあまりお勧めしないか。

 どちらかといえば、僕がいない方に不安感があるようだ。


 炎をまとって姿を現す事にした。

 レイシアが気にしないのだったら、僕は僕のままでいいや。


 こちらの姿を確認して、安心したような表情をしていた。それどころか、新しい距離感にも慣れたようだな。

 さすが冒険者! 適応能力が素晴らしいぞ!




 ――――――



 今日は飲みに行こう!・・・・・・By ケイト




 他の先生方に叱られちゃった・・・・・・てへっ♪


 それにしてもまさかスライムの進化合成を進めてみたら、イフリートに進化するだなんてビックリね。


 イフリートといえばドラゴンと並び、神にも届きうる存在として知られる高位のモンスターよ。

 何でそんな上位精霊が、スライムからの進化で出て来るのかしら?


 おかげで今までレイシアさんを下に見ていた生徒さん達が、怯えちゃって怯えちゃってウサギみたいで可愛い・・・・・・いえ、震えて可哀想だったわ!

 まあこれに懲りたらあの子達も、他人を下に見たりしなくなってくれるでしょう~




 レイシアさんは私がずっと目にかけて、錬金術を習得した大事な生徒さんですからね。教師として公平性に問題があるとは思いますが、どうしても贔屓してしまうのは仕方がないです。


 まあ、私も人間ですので嫌味な人より、がんばっている子を応援したくなっても仕方ないでしょう。




 バグ君はちょっと怖いけれど、とても賢くてレイシアにとってはいい味方になってくれそうですし。このまま何事もなく卒業して行って欲しいですね~


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