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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第二章 マジで死ぬかと思ったよ
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2-1 錬金合成

 床に描かれた魔法陣が薄っすらと光っているのが見える。


 いかにも異世界ファンタジーにありそうな魔方陣だが、その中心に立たされている今、そう心穏やかではいられないだろう。


 僕の右前には召喚で呼ばれたであろう狼が、こいつは以前野営の時に出て来たあいつだと思われる。

 だってあの時と同じように、じっと僕の事を見詰めて来るのだ。


 相変わらず何がしたいのか全然わからんな。


 今は僕自身喋れないから人の事をあーだこーだと言えないけれど、動物って何を考えているのだろうな・・・・・・せっかくファンタジー名世界に来ているのだから、動物と話が出来る魔法とかってないものだろうか?

 そんなものがあるのなら、今の僕の言葉こそ、伝えてもらいたいものだが・・・・・・




 そして左前には何の卵かわからないけれど、大き過ぎる物体が! これは間違いなくモンスターの卵だろう。


 やめろ、そんな訳のわからない卵と犬を混ぜるな。


 出来ればここから逃げようとして、目の前の空中に存在する見えない壁を、ドンドンと触手で叩く。もちろん逃げ出せる訳がない。完全に捕獲状態だろうな。


 それでもこのバリアみたいな壁を叩かずにはいられない。こっちは結構切羽詰っているのだ。

 こら犬っころマネして叩くな。

 遊んでいるのでもお前に何か合図を送っているのでもないのだぞ。


 あー、もうほんとやめてくれー

 これってほんとに洒落や冗談じゃすまない展開だぞ。

 僕の魂を壊すのは、やめてくれよー




 何で今僕がこんな状況になっているのかというと、いつもの授業だと思って付いて行ってみれば、その部屋は錬金術を使う為の部屋だったらしい。


 つまり時間差の罠だった訳だな・・・・・・何やら準備する為に、出口の辺りで待たされたのだが、まさかそこに魔法陣が描かれていたとは・・・・・・

 出入りする場所に描かれていて、レイシアとブレンダが平気でその上を歩いていたから、特に気にもしなかったぞ・・・・・・


 しかもあれから結構時間も経っていたし、もうすっかり忘れているものだとばかり思っていたから、思いっきり油断してしまった。


 おかげで合成準備が終わるのを、ただ眺めているだけしか出来ない状況にさせられている。




 ゲームみたいに合成された魂が無事に済む保証なんか、どこにもないのにな・・・・・・


 思えばスライムに転生してからわずか一ヶ月程・・・・・・短い人生だったなー

 むなしく現実逃避してみた。


 「さてさて最弱のスライムが、何に進化するのかしら。なんにしてもスライムを素体に選ぶ時点で、ドラゴンにはならないと思うけれどね」

 「確かにランクの高いモンスターを素体に、弱いモンスターを素材にするのがセオリーだけど。今回だけは逆はないよ」

 「まあ確かに、バグを素材に使うなんて、さすがに私でも考えられないけどね」

 「例え確実にドラゴンへと進化するとしても、バグを素材にする気はないわ」


 だったら、僕を合成しようなんて考えるな!


 ちくしょう、ブレンダも笑っているんじゃない。わかっていてやっているだろう! 止めろよ~

 あ、こっち見てニヤってしやがった。

 以前叩いた事への仕返しだな、くそ進化して僕が僕のままだった時は、覚えておけよ!


 「あー、何か私までバグが考えている事がわかりそうな気がするわ~」


 だったら今直ぐ止めろよ!


 バンバンバン


 さらに激しく壁を叩く。こら犬っころ。喜んで吠えるな!


 チッ。音まで遮断されていやがる・・・・・・


 「さて、準備完了出来たから、そろそろ錬金合成を始めるよー」


 ちょ、マジでやめろって。ほんと洒落になってないぞ!


 僕の願いも空しく、床に描かれた魔法陣へと、レイシアの魔力が流されて行く。

 それを止める手段は見付からない。もう後は見ているだけだ。


 魔力が流され、魔法陣が輝きを増して行き、起動し始めたのを感じた。


 あー、僕は元の世界の思い出と異世界に来てからの思い出を振り返りながら、短い人生だったなーっとほぼ諦めの境地で全てが終わるのを待つ。

 こういう時は走馬灯を見たりするものだと思っていたのだが、別段そういったものは見なかった。


 まあその代わり、セルフで思い出を振り返ってみていたけれどね。


 ふと思い出を振り返っていたら、そもそもの元凶はケイト先生とやらがレイシアに進化を促がした事と、ドラゴンになればとか言いやがったせいだと気付く!

 死んだら化けて出て、絶対に魂まで焼き尽くしてやる。思わず呪ってしまった。

 呪術の才能も力もないけれどな。


 足元の魔方陣はいよいよ、目も開けていられない程の光を発し始める。

 瞼なんてないので、ただひたすらに眩しい!


 その白い光に飲み込まれて行くのを、僕はただ黙って受け入れるしかなかった・・・・・・




 どれくらいの時間が過ぎたのか、いつの間にか光は収まり、異様な静けさだけがその場を支配していた。


 周りを見渡してみるとそこは先程まで錬金術を使っていた例の部屋で、右前の魔方陣からは犬っころが消えていて、同じく左の魔法陣からも卵が無くなっているのが確認出来た。

 という事は、僕は僕のまま何かに進化を果たしたって事かな?

 それともこの思考も既に、いろいろなものが混じったものなのだろうか・・・・・・変化は無いと思いたいのだが、はっきり言って自信が持てない。


 そういえばさっきまでと違い、視点もなんだか高い気がするな。

 それに何だか地に足が着いていないような、浮遊感がある気がする。




 状況を整理してみよう。


 スライムの時は地面から見上げる感じだったのに、ほんのわずかだがレイシア達を見下ろすような視点に変わっているな。


 目の前には呆然としてショックを受けているような表情のレイシアが・・・・・・その隣に少し青い顔で、気まずそうに沈黙しているブレンダがいて、そんな彼女達を冷静に見ていた。

 レイシアの身長は、どちらかといえば同年代の少女達よりも小さめだ。

 ブレンダの方が頭一つ分とまではいかないが、高いだろう。


 まあ少女達と同じくらいの身長だとしたら、男としては背が低い方なのだろうけれど、何かしらのモンスターならまあ小さくても、スライムよりは大きくなったって事になる。


 それにしては、彼女達の様子が変だな。

 何がそんなにショックだったのだろう・・・・・・?


 まさかゾンビ的モンスターになって、気持ち悪い姿なんて言わないよな?


 見回してみたが、残念ながらこの部屋には鏡なんて気の利いた物が無い。おかげで今の自分がどんな姿をしているのか、確認する事が出来ないでいた。というか、ある意味それで冷静になれているのかな?


 まあいつまでも現実逃避してなど、いられないのだがな。


 ならばとりあえず自分の手を見てみよう・・・・・・

 何も見えない・・・・・・透明?


 一応自分の中では手を上げているような感覚はあるのだが・・・・・・そこには何も無い。

 足を見てみた。

 そこには本来あるはずの足どころか、体すら見当たらなかった・・・・・・




 僕は合成に失敗して魂だけの存在といえばいいのか。幽霊になってしまったって事なのかな?


 そして今だ動かず、正面にいる少女達を呆れ気味に見やる。


 あー、合成に失敗して消えてしまったら、そりゃあショックだろうなー


 ドラゴンに進化させるつもりが、そもそも何も残さずいなくなっちゃうなんて、さすがに想像もつかないよ。


 お前ら馬鹿だよな。

 だからやめろって何度も言っていたのに・・・・・・


 まあこうなっちゃった後で今更何かを言ったところで、もう元には戻らないのだけれどね。自業自得というやつだ。


 レイシアがその場に崩れ落ちるように沈み込み、それをまるで親友がするようにブレンダが支える。


 そんな彼女達を前にすると、無性にやるせない気持ちと、こうなってしまった原因を作ったケイト先生への、八つ当たりにも似た怒りが湧き出して来た。


 その感情のまま教室を飛び出すと、怨みを込めてケイト先生を探す事にした。そうでもしなければ、気持ちが収まらない。


 怒りに染まった僕の耳に、微かにレイシアの声が聞こえた気がした・・・・・・




 部屋を飛び出したはいいが、そういえば校舎内の構造がわからない。


 いつもはレイシアに乗って移動していたので、レイシアが行き来するところくらいしか覚えていなかった。


 以前ダンジョン実習の報告で入った部屋にならいるか?

 いや、今は授業中らしいから、どこかで授業をしているかもしれない。


 そうなると、結局しらみ潰しの方が見逃さなくていいのか?


 もうどうでもいいか。面倒なので、目に付く全ての教室を見ていけば問題ないだろう。




 怒りに任せて、ケイト先生を探して校舎内をうろつき回っていると、周りの廊下や覗き込んだ教室なんかから生徒達の悲鳴などが聞こえて来た。

 さすがに覗く教室、覗く教室で騒がれるのは癇に障るものだな。


 ほとんど無意識といってもいい感覚で手を振り上げ、うるさい生徒を黙らせようとしていた。

 すると何だろう? 体が自然に覚えているみたいに、勝手に攻撃を繰り出していた。


 放たれた攻撃は・・・・・・鬼火? それとも狐火?

 火の玉ってやつなのだろうか。とにかく騒がしい生徒が炎に包まれる。


 体が自然と動いて無意識に発動させた攻撃みたいだけれど、これは使えるな。


 しかしうるさいからってさすがにこれはやり過ぎじゃないかと考え、その生徒の火を無意識で掻き消す。

 ふむ・・・・・・どうやら火を操る事が出来るようだな。


 何故そんな能力が扱えるのか、さっぱりわからないけれど、魔法がある世界なのだから魔法が使えるようにでもなったのかもしれないな。




 まあそれはそれとして、さすがに無関係の生徒を死なせるのは後味が悪い。


 虫の居所が悪いからって、ちょっと過剰に反応してしまった感じだな。


 そもそもこんな能力が使えるとは思っていなかったのだから、仕方ないと思うけれど・・・・・・さすがに悪い事をしたと反省する。

 いや、ひょっとしたらこいつもレイシアをいじめていたやつかもしれないか?


 どっちかわからないから、やり過ぎは困るな。


 念の為傷の具合を見てみると、その生徒は多少の火傷はあるものの、死んではいないようなので少しホッとする。


 さすが魔法の炎!


 派手に燃えたように見えたが、そこまでの攻撃性は無かったって事だろう。


 じゃあ再び、目的のケイト先生を探して次の教室へ向かおうか!




 ――――――



 進化合成の秘術・・・・・・By ケイト




 えっと、今回作中では、スライムのバグ君が死んだように見えていましたが、合成に失敗して死んじゃうなんて事は起こりません。


 そんな事が怒るのなら、先生だって大事な生徒にそんな事、勧めませんよ。プンプンです。




 えっと錬金術の進化合成って技は、術者の実力に応じて、合成素材として混ぜる数が段々増えていきます。


 初めは中心となる素体に対し、二つの素材を合成する事で、進化を促します。

 この時合成される素体より、ランクが下がる事はありません。


 強さが足りなくて合成に失敗した時など、消費されるのは術者の精神力だけです。素体もそうですが、素材の方も消費はされないので、安心ですね。


 だから作中のように、消えるなんてありえないのですよ。


 まあ見えないモンスターになっちゃったっていうのは、初めての進化合成で意外な結果でしたね。

 出来れば先生の見ている前で、進化合成してもらえたら、こんな大事にはならずにすんだでしょう。これは注意してもらわないといけませんね。




 そうそう、熟練の錬金術師ともなると、合成素材は最大で十体まで混ぜることが出来ます。


 それだけの素材で合成された素体は、相当強いモンスターになるでしょうね。


 がんばってもらいたいです。


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