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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
サイド:レイシア 過去から現在へ
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レ-8 バグの魔法

 先に進むとリザードマンを発見したので、試しに魔法を使ってもらう事にする。


 たぶん話の流れを聞いていただろうから理解はしているだろうけれど、念の為に命令しておく。


 「バグ、魔法を使ってリザードマンに攻撃!」


 その結果は信じられない現象として現れた。


 リザードマンの周りに霧のようなものが現れ、リザードマンを巻き込むように霧に触れたもの全てが凍り付いて行く。

 その見たこともない不思議な現象を前に、まるで別世界に放り込まれたような気分にさせられた。

 そして冷気に晒された訳ではないだろうに、体から体温が抜けて行くような感覚がしてふらつく。


 今のは魔法を使った時に、体の外へと魔力が出て行く現象に似ているかもしれない。


 私の状態を聞いたブレンダが言うには、元々スライムには魔法を使うだけの魔力がないから、主人の魔力を借りて魔法を発動させていたのではないかという仮説だった。

 なる程って納得出来た。それじゃあただのスライムに見えるはずよね。

 だって、元々魔力を持ち合わせていないんですもの。


 そして魔法が使えない体なのに、魔法を扱う技術は習得しているという、ますますもって不思議な存在。

 一体この子は何者なのだろうか・・・・・・

 そして、どうして私の召喚に応えてくれたのだろうか・・・・・・




 考えてもわからない事なので、先に進む事にした。その前に、せっかく倒したので討伐部位の回収しようって思ったんだけれど・・・・・・


 「凍っていて、討伐部位が回収出来ないよ!」

 「叩き割れないかしら?」

 「やってみる」


 本来の使い方とは違うけれど一応素手よりはいいかなって、ねじくれた杖で叩いてみる。でも凍り付いたモンスターもそうだけれど、周りの氷すら割れる気配が見られなかった。


 そもそも本気で叩き付けたら木で出来た初心者の杖なんて壊れちゃうだろし、こっちの手だってしびれるに決まっているよね。だから手加減して叩いてみたんだけれど、これってたぶん相当硬いよ・・・・・・

 ブレンダは火の魔法を使って炙っていたけれど、表面がちょっとしか溶けなかった。

 見た感じ、中までしっかり凍っているのかもしれない。


 「駄目そうね。ちょっと勿体無いけれど、リザードマンの一体くらい仕方ないわ。それよりも先に進んだ方がいいかもしれないわね」

 「そうね。せっかく時間内に帰れそうなのに、こんなところで時間を使いたくないわ」


 討伐部位を諦め、先に進む事になった。ちょっともったいないなって思ったけれど・・・・・・




 その後そこまで時間もかからずに最奥の部屋へと到達する。

 何でそこが最奥だとわかったかといえば、先生達が用意した石版が台座に置いてあったから。ミノタウロスのいた部屋から結構直ぐ来られたわね。


 ではさっそく石版をバックパックへとしまっていると、一杯ある石版の数がふと気になった。


 「ひょっとして、一番乗り?」


 そう、石版は一パーティーに一つ存在しているので、参加数を知っていればここに辿り付いたパーティーがどれくらいいるのかがわかる。それでいくと、石版の数が一つも減っていないように見えた。


 「ええ、おそらくミノタウロスの部屋を通過出来れば、最短距離で進む事が出来ますわ。前回私達のパーティーも、マッピングしながら進んでいたのだけれど、ミノタウロスがいる部屋を避けると、かなり遠回りのコースになるのがわかりましたから」


 ブレンダの説明に納得する。


 つまり最短コースで進めたので、他に参加している生徒達を追い抜いて、一番乗りが出来たという事なのね。バグに感謝だわ!

 せっかく一番にここまで来られたので、早速ダンジョンから出る為に移動すると、行きよりも早く脱出出来た。


 今までの苦労は何だったのだと言いたい程、いとも簡単に出口まで辿り着けたよ・・・・・・




 その後の森でも、バグがどっちに進むのか教えてくれるので、それに従って歩いて行く。


 そしたら何を思ったのか、それとも何かが気に障ったのかバグが触手でブレンダをペチペチと叩き出した。


 「ちょっと急になんなのよこの子」


 まあ当然のようにブレンダが文句を言って来たので、不快にでもさせたんじゃないのかと気軽に言い返す。


 見てみると、バグもそれ程強く叩いているようには見えなかったから、本気ではないみたい。


 案外ダンジョンを一緒に攻略した仲間だと思って、スキンシップしているとか? それともこれってじゃれているのかしら?

 それにしてはちょっと強過ぎよ。


 学校への帰り道、危険も無く解放された気分で高揚していたのか、お互い軽口を叩きながら移動していると、何故か私までペチペチされた。

 これって何気にちょっと応えるわね。


 スキンシップじゃなくて、何かしらの抗議って感じね。


 それにしたって、何で主の私にまで攻撃出来るの? 痛くもなんともないから攻撃って程じゃないけれど、地味にうっとうしいわ。

 痛くはないのに、体の中に衝撃が来るっていうか・・・・・・


 とにかくバグは、なかなかやめてくれなかった・・・・・・




 「レイシアと」

 「ブレンダです」

 「どうぞ、入りなさい」


 学校に到着すると、早速ケイト先生へと報告しに向かう。


 先生は初め、ブレンダが活躍したので一番にダンジョンを攻略してこられたのだと思ったみたい。まあ今までの実技成績を知っていたら、いきなり一番で帰って来るとは思わないよね。


 だけどバグがペチペチと叩いて違うと指摘して来たので、ブレンダが詳細な報告をすると、予想していた通り信じられないと言われてしまった。

 わかってはいても、ちょっとショックだな。

 ケイト先生ならわかってくれるかもって思ったんだけれど・・・・・・早々信じてはもらえないのね。




 なんやかんやと先生方で話し合ったみたいで、結局今回の実習は再試験しようという話になったみたい。


 でもそれを聞いたバグがまた納得いかないとケイト先生に触手を伸ばすのを見て、慌てて触手を押さえる事態になった。

 どうやら教師の決定に不満があったみたいで、それはケイト先生にも伝わったみたいね。


 どうしたらいいかと悩んでいた私達を、さらに驚かせたのはまたしてもバグだった。


 何に使うのか木片を要求されたので、ケイト先生がどこかから板切れを持って来ると、バグはそこに絵を描き始めた。

 モンスターが人間の使う文字を知らないのは当たり前だなんだけれど、人間のように絵を描くモンスターがいるなんて聞いた事もない。

 これならまだ字を書く方が、理解し出来やすいってかもって思ってしまった。

 だってこれが人型のモンスターだったのなら、まだそんな事もあるかもしれないと思う。

 人間に興味を持ったモンスターが学習したとか、人間社会に紛れ込む時に覚えたとか・・・・・・それはそれで怖いな・・・・・・

 とにかくそっちの可能性ならありそうな気がする。


 でもそれがスライムだった場合、まずありえないよね。だって知性が無いんだもの・・・・・・夢でも見ているのではと、自分の正気を疑いたくなっちゃいそう。




 バグはなんだか、外見はスライムなんだけれど、中身がそっくりそのまま別の何かのように感じらる。


 まあそれはそれとして気にはなるけれど、結局バグが言いたい事はダンジョンに行かず、モンスターを連れて来たら戦うと言っているみたいね。

 二パターンくらい、なんとなくわかる絵を描いてくれたので、私でも何を要求しているのか理解出来た。


 そう説明するとその要求が通ったみたいで、翌日ケイト先生がやって来て、三日後のお昼にモンスターを訓練場まで運び込み、午後の実習時間にその相手をする事となった。


 私達はズルをした訳でもなんでもなく、ただ出来る事をしただけだったので何の気負いもなく受け入れる。


 そして連れて来られたモンスター達は、あっさりとバグに倒されていった。

 ちなみに関係者や教師以外に、この戦いを見ていた人は殆ど居ない。


 スライムを馬鹿にしに来た物好きな人が数人と、優等生の生徒が二・三人。

 そしてたぶん、優等生の一人はスライムを題材とした研究をしている人くらいだったと思う。

 彼らはこの結果をどう受け取ったのかな・・・・・・それを知る機会はたぶん来ないと思う。




 「レイシアさん、バグを進化させてみませんか?」


 バグが規格外の存在であると評価された後、ケイト先生は私にそう言って来た。


 ケイト先生は魔法の勉強だけでなく、私にとっては錬金術の先生でもある。

 上手く魔法が扱えない私の為に、魔法以外の道もあるよと錬金術を教えてくれた恩師だった。


 錬金術を使って戦っている冒険者の人とかもいるみたいで、不得意な部分を錬金術で補えればと、私も積極的に教えてもらったりした。

 結局は道具を使って冒険するっていう方法が、しっくりこなかったのであまり使っていない。


 今では薬を作るのに重宝しているから、そっちではとても感謝しているわ。あまり使う機会は無いけれどね。


 その錬金術の合成に、モンスターを掛け合わせて進化させるという術が存在する。ちゃんと習っていたので直ぐにそれに思い当たった。

 いずれ使う機会が来るかもしれないからって、教えてもらった気がする。


 まさか本当にそんな機会が来るとは、思っていなかったよ。


 しかしケイト先生に言われてその時チャンスだと考えた。


 バグがスライムから別のモンスターへと進化出来るのなら、お喋りする事が出来るようになったり、もっと人に近い姿のモンスターになって一緒に歩けたり・・・・・・もっと強い子になって、いろいろな冒険が出来るようになるかもしれない!

 ただのスライムでこの強さなんだから、進化したらどれだけ凄い事になるのだろうかと夢想した。




 せっかくだから試してみたいな。そう思ったんだけれど、何となくバグは乗り気じゃないみたい。


 そんな私達にケイト先生は、もしドラゴンにでも進化したら凄いかもと言って来た。

 そう言われ、ドラゴンに乗って一緒に冒険している姿を想像したりしてみる。それって竜騎士とか呼ばれたりするんじゃないかな!

 うわ~、夢が広がるわ!


 バグは進化するのが嫌なのか酷く暴れたけれど、実際に進化して見れば今までよりももっと強くなれるはずだよ。

 実際に一度試してみたら、バグも喜んでくれるんじゃないかな?


 一緒にダンジョンに行ってから普通に話をするようになったブレンダに、バグを進化させようとしている事を知られると、面白そうだからと言って手伝ってくれた。


 私一人では合成素材を集められないからね。

 バグは今回手伝ってくれそうもないし・・・・・・


 それにブレンダの実家は貴族なのに、いろいろな商売を手掛けている。

 そこのコネなのか、進化に必要な合成素材を集めてもらえたので、一緒に進化するのを見届ける事になった。




 ――――――



 バグの進化合成先を考えよう・・・・・・By レイシア&ブレンダ




 「やっと来たーって感じね!」

 「そうね。バグがどんなモンスターに進化するのか、楽しみだわ!」

 「さすがにドラゴンは無いとしても、リザードマンくらいにはなるかな?」

 「それだと貴方が言っているようなお喋りは、出来そうにないわね」

 「じゃあじゃあ、ハーピーは?」

 「あれは一見人間っぽい部分があるけれど、別に人語を喋ったりしないわよ。ギャーギャー言うだけね。・・・・・・それにハーピーって女性だけれど、バグって雄よね?」

 「・・・・・・多分?」


 え、バグって男の子・・・・・・そう言われれば、何となく男っぽいかな?


 「そうよね? そもそもスライムって性別ってあるのかしら?」

 「うーん・・・・・・多分ないと思う」

 「それならマーメイドとかなら有りかもしれないわね。マーメイドなら喋れるわよ。陸地には上がって来られないけれど・・・・・・」

 「・・・・・・それってなんか嫌~」


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