レ-5 スライムとの戦闘方法
その後ダンジョンの中をあちこち移動し、途中でモンスターに遭遇するとスライムを投げて対処する。この動作も段々手馴れて来たわね。
おかげで多少は緊張が解けて、罠を見付けるのも早くなって来た。落ち着いてよく見れば、結構見付けやすかったみたいね。もっとも、私より先にスライムが見付けて、解除してくれるんだけれどね。
今までモンスターに気を取られていたおかげで、じっくりと観察なんか出来なかったから・・・・・・見ているつもりで、全然見えていなかったみたい。
結局実際には叩いて、罠が発動したら助かったって感じね。
たぶん落とし穴以外の罠があったら、どうにも出来なかったと思う。
スライムおかげで移動速度は少しだけ早くなったんだけど、相変わらず最奥も出口も今のところ発見出来ていない。何か見落としているのかしら?
しばらく通路を進み別れ道に行き着くと、肩に乗せていたスライムがプルプル震えて、左の通路の方へと触手を伸ばした。
初めは何か敵が来たのかなって思い、警戒しながらそちらを見ていたけれど特に何もいない。
何だろうって床や壁を見て罠があるのかなって調べてみたけれど、特に何かあるようには思えなかった。
ひょっとして虫でも取っているのかなって思ったのだけれど、どうもそんな様子はみられない。
どうしたのかと思ったら壁を溶かして印を付けたのを見て、授業で習った事を思い出した。
確か道に迷った時は周辺にわかりやすく印を付けて、同じところを通ったかどうか確認するって言っていたわ。
それが正解だとしたなら、スライムが触手を向けた方へ誘導しようとしているのだと考えられる。
ここまで来たら直ぐにでもダンジョンから出たかったので、指示に従ってみようと思った。
私一人で探すより、一緒に探した方がよさそうだものね。ひょっとしたらこの広大なダンジョンにも、抜け道みたいなものがあって、直ぐ抜け出せるかもしれない。
・・・・・・あるといいな、近道・・・・・・
指示に従い移動していると、私の中での違和感が確信へと変わる。
普通のスライムは知能など殆ど皆無で、ほぼ本能だけで動いているような生物だったはず。
しかしこの子は明確な知能を持ち合わせているだけでなく、人間並みに頭が良い可能性があるわ。それどころか、ひょっとしたら私などよりもっと高い知性を持っているかもしれない。
壁に印を付けてダンジョンを進むなんて、明らかに知性がなければしない行動よね。一応授業で習ったけれど、私もすっかりその事を忘れていたもの。
それを授業も受けていないはずのスライムが実行しているという事は、この場でその行動を考え付いたって事だと思う。
でもこれって、凄い事じゃないかな! 人間と同じくらい頭がいいって事なんだから。
もしかしたら何らかの手段で、お喋り出来るようになったりして。
そう思うと嬉しさが込み上げて来た。
今まで誰も私をまともに見てくれる人は居なかった。だから余計にこのスライムが私にとって希望のように見える。
それが例え主従関係からだとしても、人外であったとしても私にとってはまさしく今まで欲しいと思っていた友達のような存在だった。
この子は今、私と一緒にダンジョンを進んで行ってくれている。
特に命令をして印を付けたり、指示を出すよう要求した訳でもないのに、分かれ道のたびにどちらに進むのかを指示して、敵が現れればそれを排除してくれる。罠も見付けて解除してくれたりもする。
これってもう人間の冒険者と変わらないじゃない!
一緒に行動するという事が、これ程までに楽しいって思えた事はこれまでで初めてだった。
ただ、やはりというか会話がしたいと思ったものの、相手がスライムではどうしようもない。何とかならないものかなー
そんな事を考えていると、ダンジョンの最奥に辿り着いていた。
おそらく今回も実習の時間はとっくに過ぎていて、授業の評価点はもらえないと思う。だとしても、せっかく到着したのだから石版を回収してバックパックへとしまう事にする。
そして次こそはこの子と一緒に、完全な形でダンジョンを攻略して、一緒に喜びを味わいたいと思った。
その後の帰り道は、この子の指示通り進む事でわりとあっさりとダンジョンから抜け出す事が出来た。
途中モンスターが出て来たものの、その全てを排除し罠も教えてくれたので、楽に進めた。それに他の生徒達が大半のモンスターや罠を解除していたからか、移動速度が格段に早くなっていた。
ただ歩くだけでよくなったからね。そして・・・・・・
「やっと出られた~」
今まで友達とお喋りした事もなかった反動なのか、会話が成り立たないとわかっているものの、思わずそう呟いてしまう。一緒にいてくれる、それだけで今の私には十分だわ。
疲れてはいたものの、気分の方は今までの苦労が全て報われた様に感じられ、とても晴れやかな気分だった。それにこの子がモンスターを倒してくれる度に、自分がドンドン成長して行っているという感覚を得られた。
今まで無理やりに押さえつけられ成長出来なかったのが、開放されて一気に成長出来たみたいな爽快感。これはダンジョンから出られて、外の風にあったからじゃないはず。
それにしてもスライムは最弱だと今まで言われて来たけれど、この子は恐ろしくなる程に強いと感じた。それともこの子だけが特別なのかな?
ひょっとして他のスライムも召喚したら、この子みたいに頭が良かったり、強かったりするのかしら?
なんとなくこの子程の実力があるスライムがワラワラいたら・・・・・・ちょっと人間のピンチじゃないかな・・・・・・
やっぱりこれ以上の召喚はやめておこう。
なんとなくパートナーはこの子だけっていいたい。あの時あの場所で、私を助けてくれたのはこの子なんだから。
それにしても最奥から入り口に戻って来るまで、かなり早かったよね。
ひょっとしたら気が付かないうちに近道でも見付けていたのかしら? だとしたら・・・・・・
「この子、結構役に立つわね」
ダンジョンから出られた開放感から上機嫌でそう話しかけていた。
やっぱりこれからは、この子とずっと一緒にいたいな。
さてもうひと踏ん張りしますか!
実習の成績に的には既に手遅れの時間なんだけれど、いい加減ベッドが恋しいかな。
でもダンジョンを抜けただけで、目の前には結構深くて広大な森が広がっているのが厄介なのよね。
嘆いていても仕方がないので森の中へと入って行く。
森に入ってから結構な時間が過ぎて行った。相変わらず厄介な森だよね。
段々と日も傾き薄暗くなっていく森の中そんな風に思っていると、肩に乗せていたスライムが触手を伸ばして、あっちって感じで指示を出して来た。
ひょっとしたら近道でも見付けたのかな?
ダンジョンの中でもそうだったけれど、この子の指示通り進んで行ったら最奥まで辿り着けたり、入り口までそれほど苦労しないで戻って来れたものね。
野生の感みたいなもので、近道とか感じ取っているのかもしれないな。
せっかくなので特に逆らうことなくそっちに進んでみる。
もうこの段階になって来ると、相手がスライムだからとかそんな事はどうでもよくなっていて、この子に任せていれば問題ないって思えるようになっていた。というか、パートナーとして頼りになる存在よね。
「はぁ~、やっと森を出られたわ・・・・・・ここって迷いの森だったのかしら?」
スライムの誘導に従ってから、結構な距離を歩いた気がする。
少し迷いそうだったけれど、この子が誘導してくれたおかげで迷わされずに済んだみたいで、前回に比べ森を抜けるのが圧倒的に速かったように感じたわ。
やっぱり人間と違って、モンスター特有の何かがあるのかもしれないよね。
おかげで無事に迷いの森を脱出することが出来た。
しかしただでさえ暗くなり始めていたのに、森の中を移動している間に辺りはすっかり暗くなってしまった。
今日はここで野宿するしかないかな。
出来れば水場があると助かったんだけれど、森の中で野営しないですむだけまだ良かったと思っておこう。
町まではまだ遠く、今から移動したとしても完全に深夜を過ぎている。門は確実に閉められているので、例えがんばって町まで辿り着いても、町の前で野営する事になる。
だったらもうクタクタだから、ここで野営してしまっても変わらないよね。
さてさてそうと決まれば早速野営の準備をしましょうか。
といっても近くの枝などを集めて、火を起こすくらいなんだけれど・・・・・・問題は見張りかな?
今回も見張りにバットを召喚しようかと思ったんだけれど、ふとこの子と一緒にダンジョンで戦った事で、召喚魔法も成長していたという確信が持てた。
おそらく今ならバット以外の使い魔も呼び出せるようになっているかもしれないわ。
そう考えると、違う子を召喚してみたくなった。
違う子といってもスライム以外だけれど、どんな子を召喚していいのかがよくわからない。
どうしようかなって考えていたんだけれど、森を抜ける時に出会ったウルフの事をふと思した。ウルフっていえば、そこまでランクが高くないモンスターだったよね。
前の私には強くて無理なモンスターだったけれど、今なら呼び出せそうな気がした。
それにウルフなら見張り役にぴったりだと思うしね!
駄目元なので、試すだけ試してみてもいいかもしれない。
「召喚、ウルフ! 見張りをしなさい」
召喚する途中である種、手応えを感じ取れた。それは実際正しくて、私の呼びかけに答えて使い魔がやって来る。
目の前に呼び出されたウルフは、森で見かけたウルフなのかどうかはわからないけれど、私をしっかりと主として認識しているっていう感覚があった。
ワフ
まるで私の指示を了承したと言いたいかのように鳴いて見せるウルフに、思わず感動した。
このスライムのおかげで成長する事が出来たのだと、はっきりと実感出来た。
これでやっと、冒険者としての第一歩を踏み出せた気がするわ。
散々ここまで歩いて来てお腹が減っていたけれど・・・・・・やっと冒険者になる目処が立った安ど感からか、それとも単純に疲れていた為なのか、それか始めて呼び出したウルフの召喚で精神を使い過ぎた為なのか・・・・・・急激に眠気が襲って来た。
「貴方は、敵が近付いて来たら、迎撃ね」
完全に眠ってしまう前に、ウルフだけだと心配だなってふと思い付いて、スライムに後を任せる事にした。
この子が居るなら何があっても安心だと思いながら泥のように眠る。
野宿で眠るというのに、その眠りは不思議と今まで生きて来た中で、一番安らげるものだったように感じられた。
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レイシアについての考察・・・・・・By バグ
こうしてみると、レイシアは結構いろいろと考えているみたいだな。ほとんど見当違いで、お互いがお互いに理解出来ていないようだがな。
それにしてもレイシアの方向音痴は酷いものだ。
森で迷っているのを迷いの森だからとか、ダンジョンを大迷宮だとか・・・・・・まああれだけさまよっていたら、そう言いたくもなるものなのかね?
何度突っ込みたくなったことやら・・・・・・
いや、ちょっと待てよ・・・・・・帰りはともかく、行きは他の生徒と一緒に森を移動しているはずだよな。ってことは、少なくとも森が迷いの森でない事くらいは知っているはず。
ひょっとしてわかっていて自分を騙しているのか?
方向音痴な事を理解しているからこそ、信じたくなくてそう言っている可能性があるよな。
そう考えれば、僕の誘導をおとなしく受け入れたのも、なんとなく納得出来る気がする。
いろいろ聞いてみたいところだが、何で会話が出来ないのだろうな~
こんなところでスライムに転生した事を、悔やむとは思っていなかったぞー




