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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
サイド:レイシア 過去から現在へ
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レ-4 レイシアとスライム

 さていつまでもここで立ち止まっていては、またダンジョンを抜けるのに一日がかりになっちゃう。


 まずは先に進もうかな。それにこの子の実力を見てみないといけないしね。


 だからこの部屋に入る原因になったリザードマンがいた通路へと向う事にした。確かこっちだったかな?


 ミノタウロスを倒す事が出来るのなら、リザードマンも倒せるはずだよね・・・・・・


 一応念の為に罠がないか気を付け、ゆっくりと通路を進んで行く。ここで焦って行動して、罠にかかるとか恥ずかしいからね。

 そしてしばらく進むと、行く手の先の十字路になっている通路で、立ち止まっているリザードマンを見付けた。


 どうやら相手より先に発見することが出来たみたい。

 足元に罠がないか心配で、ゆっくり進んでいたから相手に気が付かれずに済んだみたいね。


 そこでスライムを肩から降ろしてリザードマンへと向うように指示を出してみる。


 さあ、あなたの実力を見せて頂戴!




 スライムって目に相当する部位が見当たらないけれど、ちゃんと見えているんだよね? 核の部分に目に相当する器官があののかな?

 私の指差した方へとのそのそと動いて行くスライムを見ながらふと、そんな疑問が浮かんで来た。


 近くにリザードマンがいるから、声を出さずに身振りの指示だったけれど、ちゃんとやる事は伝わったと思う。


 通路のところどころに天井を支える為の支柱なのか、出っ張りがあるのでそこに隠れて様子を窺っていると、スライムは音もなくリザードマンへと忍び寄って行く。


 スライムは小さいので早々気付かれないはず。のろのろだから足音もしない。

 けれど、その歩みはとても遅くてじれったいような時間がかかっていた。


 まあスライムには足が無いから仕方ないのかな? わかってはいても、じれったくなるような時間が過ぎて行く。


 こっちは隠れてじれったい思いを味わっているけれど、幸いな事にリザードマンは今のところその場を動く気が無いみたい。何でかな?




 リザードマンは近付いて来るスライムに気が付く様子もなく、ただ待っている時間が長々と過ぎて行く。もどかしさからチラリと様子を窺うと、リザードマンは十字路でどちらに行こうか迷っているのか、三方向にある通路をきょろきょろと見回しているのがわかった。


 やがて気配でも感じたのか、それとも殺気でも感じたのか急に周囲をせわしなく見渡す。その結果ようやくスライムを見付けると、馬鹿にしたようにスライムに向って歩き出すのが見えた。やっと状況が動いたわ。


 これはモンスター一体にかかる時間が長過ぎて、何か手立てが必要よね・・・・・・それとせっかくの奇襲のタイミングが、駄目になっちゃったよ・・・・・・スライムの足は遅過ぎるからだね。


 がっかりする私をそのままに、ある程度距離を詰めたリザードマンは、スライムに向って無造作ともいえる動作で剣を振り下ろした。

 その一瞬スライムが殺されてしまうのではないかと心配になって、思わず隠れていた柱から飛び出してしまう。

 どちらにしても、今から助けに向かったところで、もう間に合わないって事はわかっていたけれど、体が反応して動いちゃった後だった。


 でもスライムは迫り来る剣の根元、リザードマンの手に触手を伸ばしたかと思うと、そこに体を引っ張り上げ剣を回避した。そして同じように触手を伸ばしそのまま顔に向って飛び付くと、頭を丸ごとすっぽりと体内に包み込む。


 ゼリー状のスライムの体の中、リザードマンの吐き出す空気が気泡となってぶくぶくしているのが遠目にも見え、スライムが何をしているのかを理解した。

 リザードマンやミノタウロスも生物である以上、呼吸をしなければ生きてはいけない。つまり犠牲者から空気を取り上げる事で命を奪っているみたいだった。

 川も池もない陸地で、溺死なんて・・・・・・水を飲んだ訳じゃないから、ちょっと違うかな?




 こんな戦い方など、どんなお話の中や戦術書の中にも載っていなかったよ。


 まさにスライムだからこその戦い方じゃないかな? だからミノタウロスの頭が消化されていたんだね。おかげで角も少し溶けちゃっていたのが残念なところだわ。

 出来たら買い取ってもらえる部分は溶かさないように出来ないかしら? 決め手は溶かすのではなく窒息なんだし、指示したら溶かさないでいてくれるかな?


 そこでふと新たな疑問が湧いて来た。


 スライムって確か、体内に取り込んだものを本能的に溶かして食事するって話だったよね。だとしたら、何で倒したモンスターを食べようとしないのかな? 私が命令していないから?

 今も確実に死んだと判断して戻って来るスライムは、リザードマンに興味を示そうともしないで肩に登った後大人しくしている。


 何か私の知っているスライムと違う気がしたけれど、何が違うのかがよくわからなかった。


 でもとりあえず、これでモンスターを恐れる必要が無い事は確信出来たよ。私は討伐部位の回収をした後、罠にだけ気を付けてダンジョンを進む事にした。


 後はモンスター一体にかかる時間を、どう短縮するかよね。難題だわ・・・・・・




 しかしもうモンスターが来ても恐れるどころかこっちから倒しに行けるので、部屋の中にモンスターが出ても気にせず進めるようになったわ。

 でも一応複数現れたり、スライムを向かわせる前に接近されたら危険なので、ここは慎重に行動しましょうか。


 罠の確認が終わって緊張しながらも部屋に入って行ったのだけれど、残念ながら最初の部屋ではモンスターが襲って来たりはしなかった。

 石とか投げて見ても特に反応もない。


 今まで部屋の中には、絶対にモンスターが待ち構えているものだと思って避けていたんだけれど、今までの自分が馬鹿みたいに思えてしまう・・・・・・

 今まで緊張の連続だったので、ちょうど気が抜けたこの機会に少し休憩して行くことにした。今のうちにこれからどう戦って行くか、考えておくのもいいよね。


 休憩しながら、さっきのスライムの動きを思い出したりして、自分に出来る事を考えてみる。


 しかしそう簡単にいいアイデアは出て来ないよね・・・・・・この子と相談出来たらよかったのに・・・・・・




 私は小さい頃から離れに閉じ込められていたので、お母様以外の人間とはメイドくらいとしか顔を合わせる事がなかった。


 学校に入ってからは普通に友達なども出来て、毎日楽しい生活が送れると思っていたものの、待っていたのは落ちこぼれと陰口を言われる日々。

 そこに友達などという暖かなものは存在していなかった。


 そんな私に主従関係とはいえ、一緒に居てくれる存在が出来た事はとても嬉しい出来事だった。


 まあその存在が人間でないところが、本来ならば空しいと感じさせそうなものなんだけれど、何故だがそんな気持ちは湧いて来なかった。

 結局人の姿をしていてもどれだけ近くにいたとしても、こちらと向き合ってくれない存在ならいてもいなくても一緒という事なのかもしれない。

 そう考えれば例えどれだけ人とかけ離れた姿形であっても、こちらを向いてくれるのならばモンスターであっても、構わないのかもしれない。まあ襲って来なければの話だけれどね。




 そんな事を考えながら十分な休息をした後、最奥かあるいは出口を探して動き始める。


 結局何か出来ないかなって考えていたのに、昔の思い出ばかり思い出してしまった。ここはシンプルにいろいろ試していこうかな。


 こちらに気が付いていないゴブリンを発見したので、実験してみる事にする。


 まずは単純にスライムとモンスターの距離を縮める為に、スライムを足元に投げてみよう。


 相手に気付かれないようにするのと、スライムにダメージを与えないように軽く放り投げてみる。


 モンスターが背中を向けていたので、そのまま後頭部に触手を伸ばそうとしたんだけれど、気配でも感じたのかモンスターがこちらに振り向いちゃった。しかも持っていたショートソードを振り向きながら振り回して・・・・・・

 危なく斬られそうになったスライムは、後頭部へと伸ばしていた触手を剣の軌道の下、お腹辺りに変更してそこに飛び付いた。

 これでミノタウロスやリザードマンといったモンスター達と同じ、攻撃を回避しながら取り付く事に成功している。


 後は慌てるゴブリンをよそに、窒息させるだけになっていた。




 「今のはちょっと危なかったね」


 私が思わずそう呟くと、スライムが同意するように上下にプルプルと震えた。


 さっきのやり方は中途半端過ぎたかもしれないな。


 こんなところでせっかく手に入れた使い魔を失いたくない。


 どうもこの子は賢いようで、とっさの判断で行動出来るみたい。とすると、ある程度スライムを信じてお任せしていった方がいいかもしれないね。


 そんな訳で次に見付けたコボルトには、地面ではなく足に向かって投げてみる事にした。

 近場の地面だと振り向かれたりしたら怖いからね。少なくとも足元なら、剣を振られた時に当たり難いと思ったの。


 今回もコボルトに気が付かれる前に背後から攻撃、バックアタックを成功させたのだけれど・・・・・・スライムはそのまま足にへばり付いていた。

 コボルトは突然の事に驚いて、その場で飛び跳ねながら暴れている。


 おかげで頭まで登って行くのに苦労しているみたいだわ。


 気が付かれないで取り付くまでは良かったけれど、それはそれで頭部まで移動するのが大変そうね。

 ままならないものねー




 その後もいろいろ試してみた結果、スライムにある程度任せて正面に投げていくのが一番しっくりと来た。


 大抵のモンスターは、スライムを脅威とみなしていなくて、おざなりに払いのけようとして来る。ようはスライムの事を舐めて、これくらいの攻撃で払いのけられるだろうって感じなのよね。

 そんな緩い攻撃だったので、簡単に触手を伸ばして回避出来るみたい。


 その最初の一撃さえ回避してしまえば、後はほとんど抵抗らしい抵抗もなく頭部に到達出来ていた。

 こちらに気が付かれなかったらそれで、そのまま頭部に張り付くだけ。

 結果、普通にモンスターに向けて放り投げていけばどんどん倒していけるって事がわかったわ。


 それからは罠にだけ注意して、ダンジョンの中を進んで行った。




 最大の障害であったモンスターが何とかなったので、後は楽勝だと考えていたんだけれど・・・・・・一向に最奥にも出口にも行き当たる雰囲気じゃない・・・・・・


 「どうやったら、ここから抜け出せるのよ!」


 どれくらいそこでさまよっていたのか、時間だけがどんどんと経過して行く現状に、思わず愚痴ってしまう。


 今回こそはちゃんと時間内に帰れるかなって思ったのに、ダンジョンは早々甘くはなかったみたい。たぶん実習時間はとっくに過ぎているでしょうね。

 せっかく普通にダンジョンの探索が出来るようになったっていうのに、そう思うと愚痴りたくもなる。


 結局今回も評価が得られないんだなって思うと悲しくなって来るけれど、だけど幸いにして収穫がまったくなかった訳ではない。


 召喚したスライムのおかげではあるものの、モンスターを倒せるようになったんだから、今回は駄目でも次回はちゃんとした評価がもらえるはず。

 そう考え直して再び気持ちを切り替える。うじうじしていてもなんともならないから、先へと進む事にした。


 やっと冒険者としてまともに冒険出来るかもしれないのだから、こんなところで立ち止まっている場合じゃないよね!




 ――――――



 召喚魔法の未来・・・・・・By レイシア




 一般の魔法は不得手だけれど、召喚魔法についてなら任せて! バットとスライムしか呼び出せなかった私は、これでも一応いろいろな本を読み漁って知識だけはそれなりなんだから!


 えっと召喚主と召喚された使い魔の間には、目には見えない繋がりがあるみたいなの。


 これを通して使い魔が敵を倒した時に、使い魔が成長した強さの一部を、召喚主は受け取れるようになるみたい。

 これによって召喚主は直接敵と戦う事無く、成長する事が出来るんだって。




 この成長っていうのを続けて行くと、より上位の使い魔を召喚する事が出来るみたい。


 つまり! 今までバットとスライムしか呼び出せなかった時代は終わり、私もゆくゆくはドラゴンなんかを召喚しちゃったり出来るようになるかもしれないのよ!


 もしドラゴンを呼び出せるようになったとしたら・・・・・・上級パーティーを何組も相手にするくらい強くなれるって訳!


 もちろんそこまで成長するには、これからもっともっと長いこと冒険をしなければいけないんだけれどね。


 でもいつか、冒険者だったらドラゴンとか呼び出してみたいよね~


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