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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
サイド:レイシア 過去から現在へ
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レ-2 初めてのダンジョン

 そんな状態のまま一年目最後の試験が始まる。


 他の生徒より知識面はがんばって来た。


 実技で結果を出せないので、本気で満点を取るくらい気合を入れて試験に臨んでいる。


 問題の実技に関しては、とにかくミスをしないことを心がけた。


 突発的な出来事が起きても冷静に対処して、魔法に関しては威力が出ない事はもう諦め、とにかく不発にならない様に気を付けた。

 その結果は殆どギリギリといっていい成績だと自分でもわかっていたけれど、もう一年学校に残る事が許された瞬間、やりきったって感じで気が緩んだのを覚えている。


 そんな状態だったので結果発表の後、二・三日体調を崩して寝込んでしまったのは、仕方がない事だったと思う。

 だけど残りの一年、無事に勝ち取った時間でちゃんとした冒険者にならなくてはいけない。

 そうでないと路頭に迷ってしまう。私には冒険者以外の生き方が思い付かなかった。


 厳しい現実を目の当たりにして弱気になりそうな自分を叱咤して、再びがんばろうと決意する。


 まずは体調を戻さないとね。その後は勉強をがんばろう。




 二年目は集団での実技が主な活動になるみたいで、殆どの生徒は他の職業の生徒達とパーティーを組んで、より実践的な連携訓練などを習う。

 実際に訓練用ダンジョンへ潜ったりするのは二年目の後半からの予定だって聞かされた。


 ただ私の場合は一年目で既にわかりきっていた事だけれど、一緒に行動してくれるパーティーが見付からない事が問題ね。

 もう一年、学校に残れるかどうかの方が気になったから、今までパーティーを探して来なかった事も痛手となっている。


 パーティーを組めなければ、危険過ぎて訓練用のダンジョンといえど潜る事が許されないみたい・・・・・・


 この結果は半分諦めてはいたものの、それでもどうしても冒険者にはなりたくて、勉強の合間にパーティー探しも始める事にした。

 しかし一年目で既に学校中の生徒に落ちこぼれである事が知れ渡っていたのと、今だ初級の魔法すらまともに扱えない現状とで、結局パーティーメンバーを見付けることは出来ないまま時間は過ぎて行く。


 そんな状態で初のダンジョン実習の日が段々迫って来た。


 徐々に焦りつつも通常の魔法に適性がないのであればと、召喚魔法の勉強をしてそっちの方でパーティーに貢献出来ないかと考えてみる。

 だけど依然とスライムとバットしか召喚出来ず、結局何の手も打てないままダンジョン実習の日が来ようとしていた。

 バットを召喚し偵察させるって方法とか考えたんだけれど、肝心の偵察内容を聞き出せなくて断念した。使い魔とお話出来たらよかったのに・・・・・・




 そこで私は考えた。


 このまま実習を受ける事なく冒険者を諦めたくないと。多少自暴自棄になっていたのかもしれないけれど、ただ黙ってチャンスを逃したくはなかった。


 だから私はソロでダンジョンに潜ることに決めた。


 ケイト先生にその事を知らせに行くと、何とか実習には参加させてもらえるよう話を付ける事が出来た。ただし絶対に敵と戦ってはいけないと念を押された。

 確かに、初級の魔法すらろくに使えないのであれば、モンスターと戦う事なんて不可能よね。

 そしてもう一つ、例え結果を出せなかったとしても、引き際をしっかりと見極めて戻って来るようにと言われる。


 それがソロでダンジョンに潜る為の条件みたい。本来ソロが認められる条件は、一人で何でもこなせるだけの実力がある人だけなんだそうだ。まあそんな優秀な人なら、学校なんかに通っていないって言っていたけれどね。


 それはそうでしょう。実力的にはもう初心者を越えているような存在だもの。その才能、私に分けて欲しいよ。




 ちなみにケイト先生は、一年目の魔法実技を担当していた先生に才能が無いと言われて、冒険者以外の職を探しなさいと言われてくれた時にいろいろと相談に乗ってくれた先生だった。


 私はどうしても冒険者になりたいというと、実践で使えそうに無い魔法の代わりに錬金術という方法を教えてくれた先生でもある。


 この時私も錬金術を使えば多少魔法を補ったり出来ないかなって考え、ケイト先生から指導してもらう事にした。

 結果としては錬金術で作られた毒で攻撃したり、ポーションで擬似癒し手としてサポートが出来るという方法で、パーティーに参加出来そうな目処が立った。でもなんか思い描いていた冒険者って感じはしないよね。


 そんな訳で結局魔法使いの勉強に戻って来たけれど、ケイト先生との師弟関係は続いていた。


 そのよしみでいろいろと優遇してもらえたりする。本当にありがたかった。




 とにかくケイト先生が提示した条件を飲まない限り、ソロでダンジョンには行けないらしい。

 だから私はその条件を飲む事にした。わずかな可能性ではあるのだが、ダンジョンに潜って評価をもらえるのであれば、無謀であってもやらずにはいられない。


 このダンジョン実習は、最奥に置かれている石版を持ち帰る事が課題になっている。つまり、モンスターから逃げ回ってでも石版さえ持ち帰る事が出来れば、評価してもらえる。ただし時間制限はあるけれどね。


 私にとっては参加させてもらえるだけでも意義がある。


 「ケイト先生にはいくら感謝しても、したりないなー」


 実習は現地ダンジョン前に集合なので、まずはみんなに付いて移動した。




 ダンジョン前に集まり、学長の挨拶の後実習が開始された。


 生徒達がどんどん中へと入って行くのを見守る。


 今の私に出来る事は、他の生徒達が通ったルートを辿り石版を持ち帰る事。


 ひとまず他のパーティーがダンジョンに入って行ったら、私もこっそり付いて行って途中まででも安全を確保しよう。


 途中には罠もあるって聞くし、モンスターの巡回もいるってケイト先生が言っていた。

 本当はこういう情報は言ってはいけないらしいんだけれど、ソロで挑む私の為に教えてくれたらしい。


 実際ダンジョンの中に入った後、目の前のパーティーに付いて歩いていたのだけれど、罠の警戒や巡回するモンスターとの遭遇ではぐれちゃった。

 途中までは前を行くパーティーがモンスターを倒してくれて、このままなら何とか行けるかもって思ったんだけれど・・・・・・そう上手くは行かないね。


 一定距離を保って歩いていた私とパーティーの間に、巡回モンスターが出て来ちゃって逃げる以外手が無かったわ。


 おそらく普通に魔法を使えていたとしても、壁役がいなければ倒す前にやられていたでしょうね。


 ソロで行動するっていう事は、相当危険だった。




 モンスターばかりに気を取られてもいられない。


 ソロには罠を調べてくれる盗賊系の技能もいないという欠点がある。このダンジョンには落とし穴しかないと言われているので、毒の心配をしなくていいだけまだましでしょうね。

 しかしそれがわかっていても、中々思い通りに進めそうにない。


 モンスターに罠。


 今の私にはどちらも対処出来ないから、たまたま通りかかった生徒のパーティーをこっそり追いかける事で、何とか前に進んでいる状態だった。


 合流しては分断され、次を見付けては立ち止まってを繰り返しているうちに、現在位置がわからなくなって来る。

 何となく同じ所をグルグル回っている気にもなる中、それでも罠に気を付け前だけを見て進んで行った。




 どれくらいダンジョンに潜っていたのかな。実習時間はとっくに過ぎたと思えるくらいはダンジョンの中をさまよった私は、先生との約束通り引き返そうと考えるものの、そもそも帰り道がわからなくなっていた。

 泣きそうな気分になりながらも、ダンジョン内で見付けた小さな部屋に入って扉を楔で固定し、モンスターの侵入を防いでご飯にする。


 一応念の為に携帯食は持って来ているものの、この先ダンジョンを抜けるのにどれくらいの時間がかかるかわからないから、食べる量は少しだけにした。生き残る為の授業も、ちゃんと受けていてよかったな。


 その後、今日は動き回って疲れ果てていたので仮眠を取る事にする。

 下手に動き回って体力を消耗する方が危険だからね。




 目が覚めると再び軽く食事をして、再び行動開始する事にする。水や食料はまだある。それらが尽きる前にダンジョンを抜けられればいいんだけれどな・・・・・・


 一応しっかり休憩を取ってみたけれど、石の上にマントを敷いただけの寝床では、かえって体が痛くなってきつくなっちゃったかな?

 でも昨日は歩き続けて精神的にも参っていたから、休んでよかったとは思う。


 気持ちを切り替えて何とか今日中にダンジョンを抜けなきゃね!


 気合を入れるとまずは体をほぐし、ダンジョンの探索を再開する。


 食事と休憩をしっかりとったおかげなのか、それとも運がよかっただけなのか、しばらくして石版の配置してある部屋に辿り着く事が出来た。今から石版を持って帰れても、成績が良くなる訳ではないけれど、一応バックパックの中にしまい再度入り口を探して移動する。


 まあでも、時間は間に合わなかったけれど、目的の石版を手に入れることが出来たのは嬉しいな。

 多分今更石板を持ち帰ったところで、心配されて怒られるとは思う。


 それはわかっていたけれど、なんとなく自力で辿り着けた事実が、冒険をしているんだって感じられた。




 結局ダンジョンを抜ける事が出来たのは、翌日の夕方頃だと思える時間帯だった。


 その頃にはもう手持ちの食料は尽きていて、このまま一生外には出られないんじゃないかって不安にもなったけれど、無事出口に辿り着くことが出来た。


 そのまま森の中へと入いると、森の中で夜になってしまう。


 森の中の野営は危険って聞いているので、今日のところはダンジョンの前で野宿する事に決める。先生と約束したので無理はしない。


 でも、ただ野宿したのでは野良モンスターに襲われる危険があるので、見張りとしてバットを呼んでおく事にした。


 「召喚、バット」


 それにしても、何で召喚魔法だけは詠唱を省略しても上手く使えるのかな?

 その事については、先生にも理由がわからないって言っていた。


 「見張りをよろしくね。敵が来たら私を起した後、敵を牽制してね」


 バットに指示を与えて目を閉じると直ぐに眠気がやって来て、ぐっすりと眠ってしまった。




 翌朝目を覚ますと、バットが役目を果たしたとばかりに鳴き叫んで来る。


 「見張りありがとう。送還、バット」


 役目を終えた使い魔は、送還してあげるのがルール。


 帰って行った先でどうしているのか、もう一度呼び出したらまた来てくれるのか・・・・・・それはわからないものの、事例によれば何度でも召喚に応じてくれる個体などもいるみたい。

 必ず放置せずに送還するのが召喚した者の役目なんだって。


 ケイト先生の予想では、無事に戻してもらえた事でまた来てもいいと思われているのかもしれないと話していた。

 とにかく召喚者は対象を送還し、休ませる事までを含めて一連の召喚魔法とされている。


 別の説では、召喚者と召喚された者は送還しない限り繋がり続けて、その間ずっと精神力あるいは生命力を供給し続けるという説がある。


 その証拠ともいえる現象で、召喚した者がモンスターを倒すと、召喚者に力の一部が流れ込むという話があるらしい。

 それで強くなれるのなら、それでもいいかな~

 ついついそんな考えが浮かんでしまった。




 だけどずっと繋がり続けた結果、送還出来ない程繋がりが強くなり過ぎて、お互いの精神が交じり合ったという話もある。


 それらの話の何が正しいのかは検証も出来ていないけれど、一番確実なのは送還しておく事なんだって。


 そう考えると召喚魔法って複雑な魔法なんだね・・・・・・だから一般の魔法より扱いが難しいのかな?


 私にとっては、一緒に戦ってくれるパートナーが出来るって感じかもしれない。

 バットとスライムじゃあ、パートナーにならないけれどね・・・・・・




 ――――――



 みんなズルしてるんじゃない?・・・・・・By レイシア




 初めて入った大迷宮。


 出会ったモンスター自体は多分そこまで一杯いた訳じゃないだろうけれど、ちょっと広過ぎないかな?

 こんなダンジョンを一日で往復しろって、結構な無茶振りだと思うの。


 ただ歩くだけで何日もかかるんじゃないかな? 実際私はほとんど三日くらいかかったわ!


 外に出られた時には、もう二度とダンジョンなんかに入らないって思った!

 まあ冒険者になる為の訓練だから、これからも入るけれどね・・・・・・




 それにしても携帯食料とか、一応一杯持っていったんだけれど、全然足りなかったよ!


 次の実習は四日分くらいの食料を準備して行こう・・・・・・


 水が重くなるから、なるべく荷物は少ない方がいいんだけれどなー

 さすがにこればかりはケチる訳にもいかない。そんな事をしたら死んじゃうからね。


 はぁ~


 冒険者って思っていたのと違って、大変なのねー


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