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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
サイド:レイシア 過去から現在へ
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レ-1 お母様と過ごした子供時代

 バーライド家という貴族の家系は、私の物心が付いた時にはもう無くなっていた。だから詳しい事はよくわからない。

 聞いてもお母様もメイドも、教えてはくれなかったから。


 そんな家に生まれた私は、遠縁にあたる親戚の屋敷の離れでお母様と二人、隠れるように暮らしていた。


 十二歳になった頃。離れから外に出してもらえない私の、唯一の楽しみはお母様に絵本を読んでもらう事だけだった。

 お母様がよく読み聞かせてくれた絵本の中の冒険者に憧れ、自分もいつか冒険者のように自由に外を冒険してみたいと思うようになっていったのは、外に出られない私にとって当然の成り行きだったのかもしれない。


 そして自分達がここから出してもらえない理由はよくわからないけれど、どうやら何かから匿われているのだとお母様に教えられて過ごしていた。だから余計、ここでお世話になっているのが申し訳なく感じていた。

 しかし、やはり外に出たいという思いに突き動かされ、冒険者となって自立したいとお母様や、当時食事を運んで来てくれたメイドに訴えていた。

 そうすれば私達を養う費用も気にしなくてよくなるし、稼いだお金でお母様にも自由な暮らしをさせてあげられる。


 守られてばかりの現状より、断然いいアイデアだと思えた。




 しばらくすると、親戚達が集まり私の主張についての話し合いがおこなわれ、冒険者として暮らして行く事を支持するという結論に達したみたい。

 とは言え、曲がりなりにも貴族の末席にいる者が無学なのはいただけないという意見も出ていて、今直ぐに冒険者として送り出すことは出来ないという話になったそうだ。


 私はある程度の教養と、貴族に相応しい礼儀作法を身に付ける為の教育を施されることになる。これは別に貴族として振舞えって話ではなく、冒険者として成長し何かの拍子に身分を知られた時に、お世話になった親戚達の恥にならないようにする為らしかった。

 それを知らずに、当時の私は素直に知識を学ばせてもらえると考え、ありがたいと親戚達に感謝していた。


 今まで私達親子を支えて来てくれただけでなく、必要に応じて教育までしてくれる事に、どれだけ感謝しても仕切れない想いだった。あの頃は本当に子供だったわ。


 実際は自分達の恥を隠したくて閉じ込めて外に出さないようにしたり、私の家名がいつの日にか知られた時に、彼らが恥をかかないようにと教育を施そうと思っていただけだったのに・・・・・・




 そんな思惑があるなど疑いもせず、私は冒険者となっていろいろな出来事に触れる機会を夢見て、必死に勉強に励んだ。


 自立して一杯稼いで、肩身の狭い思いなどしないようお母様と一緒に大きな屋敷に住んだりもして、その頃の私の未来はとても輝いて見えていたと思う。


 何故かお母様はずっと冒険者になる事を嫌がって反対し続けていたけれど、私は一生をこのままここで過ごして行く事に対して罪悪感があった。だから、いくら大好きなお母様の意見でも聞かなかった。


 そんな私だけれど貴族の勉強を続け一年が過ぎ、二年が過ぎる頃には自分を取り巻く状況が少しは見えて来る。


 お母様が反対しているのは唯一の肉親ともいえる私を、ただ手放したくなかっただけ。親戚連中が勉強するように手配してくれたのは、自分達の体裁を守る為だと気付いてしまった。

 それでも私は我慢して勉強を続けた。回りの思惑はいろいろ複雑だったけれど、勉強自体は無駄にならないと思えたから・・・・・・


 冒険者となって自立する為に。広い世界に出て、自由に生きて行けると夢見て・・・・・・




 読み書きや礼儀作法、貴族としての立ち振る舞いなどさまざまな事を習得し終えたのは十五歳になる頃かな。

 かねてより聞かされていた通り、用意された入学金を渡され王都にある冒険者養成学校へと送り出される。

 ただしこれ以降、親戚からの支援を受ける事はない。その状況に、改めて覚悟を固める。


 でも、そんな後戻り出来ない状況の中でも冒険者としてあちこち旅をして、さまざまな冒険をする者になるのだという夢を思えば、不安は微塵も抱かなかった。

 庭にすら出る事が許されない状況で暮らして行くくらいなら、例え夢半ばでモンスターに殺されるような事になったとしても、悔いは無いとさえ思っていた。だから私は前に進む。


 既に学校への手続きは済まされていて、後は簡単な入学試験を受けるだけでいい状況まで手配されていた。


 私は他の一般生徒達とは違い、予定よりも二週間も早くに女子寮へと入り、事前に入学試験を受ける。


 合否に関わらず、私には既に選択の余地はなかったけれど、学校の寮に入った事で既に夢が叶ったような気持ちになっていた。この頃は失敗や挫折なんか、まるっきり知らなかったな。




 そして入学試験が始まった。


 どうやら私だけが特別なのではなく、その他にも試験を受けている受験生が何人かいるようね。

 その身なりや立ち振る舞いからここに集められた受験生達は、それなりに身分がある貴族達のようだったわ。付け焼刃の教育しか受けていない私としては、なんだか場違いな気がして居心地は悪かった。


 妙なプレッシャーはあるけれど、自分の運命がここで決まる。今は周りを気にしないでがんばろう。


 私は特に運動が出来るでもなく、冒険者関係の知識がある訳でもなかったものの、魔力を持っている事から魔法使いになる資格があるとして、無事試験に合格出来た。

 そんな事からも自分が障害もなく冒険者になって、普通にいろいろな場所に行ったり、珍しい事件などを当たり前に解決したり、さまざまな経験を積んで行けるものだと信じて疑わなかった。


 けれど学校に入ってからの一年間で、この世の中を甘く見ていた事を思い知ることになる・・・・・・




 私には才能が無かったのか、魔法を上手く発動させることが出来なかった。


 魔法使いに必要不可欠な魔力は十分に持っているのに、それを発動させる為の才能が欠けていたらしい。


 イメージをより強固にする為の呪文詠唱も、唱えているうちに何度もつっかえたり間違えたりして、最後まで唱える事が出来ない。舌が上手く回ってくれなかった。

 筆記でならちゃんと呪文を、一字一句間違える事無く書き出すことは出来たのに・・・・・・


 しかし完全に無能な訳ではない。


 初心者が使う初期の魔法すら上手く扱えなかったのに、召喚魔法に対してだけは適正があったのか、半端に弱いモンスターを呼び出す事が出来てしまった。

 これで召喚魔法が上手く扱えて、ドラゴンとまではいかないまでも戦力として使えるモンスターを呼び出せていたのなら、今後の自分にとって満足出来る人生が送れたのでしょうね。

 でもあいにくと呼び出せた使い魔は、バットやスライムといった子供でも倒せるモンスターだけ。情けなくて涙が溢れた。




 人生に陰りが見え始めたのは、魔法の才能だけじゃない。


 そもそも召喚の魔法は、初心者が扱うには難しい分類とされていて、私は他の生徒からかなり悪目立ちしていたみたい。


 私だって呼び出したモンスターに任せるのではなく、自分の手から魔法を作り出して、モンスターと戦いたいと思ったのに・・・・・・言うまでもない事だけど、才能ばかりはどうにもならない。

 でも周りの人達は、質はともかく自分達よりあっさりと召喚魔法を使ったというその一転だけを取り上げて、私をやっかみ出した。


 曰くろくに初級魔法も使えないくせに、召喚魔法だけはお上手なのね。

 せっかく召喚魔法が使えるくせに、バットなんか呼んでどうするんだ。

 スライムしか出せないならその才能を俺によこせよ・・・・・・


 私だってもっとちゃんと魔法が使いたい。


 出来ることなら冒険に役立つようなモンスターを召喚して、物語のような冒険がしてみたい。

 しかし今の私には、それらの夢は所詮夢でしかなかった。




 当然のように冒険者になれると思ってここに来た私にとって、今問題にしなければいけない事は、冒険者として自立する事である。


 私が通う事になった学校は、リンデグルー連合王国にある冒険者養成学校で、二年間通う事で一人前の冒険者として認められる。

 もちろん実力さえあれば、直接冒険者ギルドというところで、直接試験を受けて冒険者になることも出来るみたいだけれど、私には基になる技術が無い。


 そうなると基になる技術を習得する為に、学校に通うのがこの国の常識になっていた。


 しかしその学校も、一年目の最後におこなわれる試験で見込みが無いと判断されると、学校を追い出されるという厳しいルールが存在している。

 もちろん二年目の最終試験も存在しているが、私はまずこの一年目の試験が今後の人生を別ける壁になっていた。


 もしここで資格無しと言われてしまうと、冒険者として活動する事は出来ない。


 学校で学んでも試験を通過出来ないような人は、迷惑になるから冒険者として登録してもらえないって話だった。


 冒険者ギルドを通さないで活動する冒険者にならなれるみたいだけれど、そういう人達は非合法の仕事を請け負う事になり、あまりお勧めは出来ないみたい。

 いわゆる汚れ仕事という依頼ばかりで、どんな仕事をさせられるのか、わかったものじゃないんだそうだ。

 気の休まる時間など無くなってしまうんでしょうね。


 そもそもが私の目指していた冒険者とは、遠く離れた存在になってしまう。

 だから私はここで踏ん張らないといけない。




 このまま冒険者になれずに学校を追い出されたら終わりだと、私はそれこそ死に物狂いで必要とされる知識を学んでいった。

 例え冒険者として他の人よりも劣っていたとしてもいいから、まずは無事に一年目を切り抜けようとがんばる。


 相変わらず授業では、呪文を最後まで言い切る事が出来なかったから、宿舎にある庭でひたすら繰り返し呪文を読み上げ、練習してみたりもしてみた。


 二・三ヶ月かけてやっと、途切れる事無く呪文を唱える事が出来た時はとても嬉しかった事を覚えている。

 しかしその喜びもつかの間、実技の授業で現実を思い知らされた。


 ドキドキしながら杖を持ち、発動させた魔法はとても弱々しい、ロウソクの炎のような火の矢が飛ぶだけ。それを見た周囲の生徒達の失笑すら、その時の私には気付かない程ショックを受けていた。


 どうしてこんなにも情けないの・・・・・・


 追い討ちのように、これではモンスターを相手に戦う事は出来ないと、魔法の先生に判断されてしまった。




 徐々に迫る一年目最後の試験。


 この一年は個人的な技術を中心に学んでいたけれど、二年目からはパーティーが主軸になって来る。早い人はもうパーティーメンバーを組む予定を立てていて、先生からも積極的にパーティーを探すよう指示されていた。


 当然元々出遅れていた私には一緒に冒険に行ってくれるようなパーティーも見付けることが出来ず、落ちこぼれと呼ばれる存在だった。

 成績も二年目は無理じゃないかと噂されていて、パーティーを組んでもらうのは絶望的かもしれない。


 どちらにしても、今はパーティーメンバーを集めるより、試験を通過する方に私の意識は向いていた。


 まだ一年目で厳しい実技試験は存在していないので、挽回する機会は必ずあるはず。

 多少実技が苦手な人でも、冒険者として必要な相応の知識を持っていれば、試験を通過出来る可能性が残っている。


 実技が完全に駄目だった場合、知識面で満点の成績を取らなければ通過出来ないだろうけれど・・・・・・




 私は諦める事無く魔法を覚える事に集中した。おそらく知識の方は大丈夫そうだから。

 呪文を覚えたら詠唱の訓練を繰り返し、それが終わったらイメージを強化する訓練をする。


 魔法の威力はイメージで決まると教えられたしね。

 だから自分に強力な魔法が使えるという確固たるイメージを持つ事が出来れば、威力は増すはず。一度貧弱な自分の魔法を見ちゃった後で、イメージを修正するのはかなり大変なんだけれど、今はやるしかないよね。

 先生に見せてもらった魔法や、同じ生徒達が使う魔法を参考にしてイメージを強くしようと努力する。


 その甲斐があってか、ほんの少し威力に変化が起きたものの、その威力は実践で使えると言い切れるものではなかった。




 ――――――



 スライムに関する考察・・・・・・By レイシア




 なんて言ったらいいのか・・・・・・自分で自分の物語のコメントをするって恥ずかしいね。


 しかも小さい時の話がメインじゃない。

 この頃は素直で純粋だったな~って言っておけばいいのかな?


 それにしてもこの頃は、親戚の貴族の家にお世話になっていたから凄く質素な食生活だった気がする。

 多分そのせいで私はちょっと痩せ気味で、体型も子供っぽかったんだよ。


 おかげで門番のランドさんなどは、いつも子供扱いして来た。


 街で買い物をする時などはちょっとお買い得なところがあるので、子供っぽいところも良し悪しって感じかな。

 悪いところは舐められたり子ども扱いされたりするところと・・・・・・変な男が寄って来るところ・・・・・・

 冒険者としては微妙なところね。




 まあこれでも一応魔法使いを目指しているから、襲って来たら撃退するつもり!


 一般魔法は使えなくても、スライムを一杯召喚して嫌がらせくらいは出来るでしょうー

 後は大声を上げて逃げれば、誰か来てくれるよね?


 バグが言っていたわ。ロリコンはどこにでもいるって・・・・・・ロリコンってなんだろう?


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