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モンスターに転生するぞ[追加版]  作者: 川島 つとむ
第一章  気付くと僕は、スライムでした。
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1-1 スライムに転生

 「――時間を稼いで!」


 その言葉が僕の心の中心を、重く貫いて行った。


 ・・・・・・。ん・・・・・・? え?


 どこか遠くで微かな足音が聞こえて来た気がしたが、周囲が暗過ぎてよくわからない。

 というかその音は壁などに反響しているからか、野外で花火を見に行った時の様に体全体を震わせるような、あるいはどこか水の中を響いて伝わって来たような、鈍い音の様に感じ取れた。


 今自分はどうなっているのかわからず、状況を確認出来るヒントを求めて周囲を見渡す。

 だけど薄暗いだけじゃなく、視界が歪んで見えて上手くいかない。わかるのは酷く乾燥して、床には砂埃が積もっている事は見て取れた。

 把握出来たのは埃っぽい石造りの床だけで、天井や壁もよく見えない。




 いったいここはどこなのだ?

 というか水の中から外を覗くように周囲が歪んで見えているようで、今一自分の置かれた状況が見えにくいな。


 いやそれだけじゃない。


 人間ではありえないような視界の広さで周囲が見えているようだ。具体的に言うと、床を含めた周囲全てが見えているようだ。

 よくよく注意して見れば薄暗さの中、かなり遠くに壁や天井を見て取る事が出来た。体育館みたいな広い部屋とか?


 まあ水中から見ているように歪んでいるし、前も後も上下も全ての視覚的情報が強制的に手に入るので、僕の様な凡人には把握し切れなくて頭痛がしそうな光景だな。実際には頭が痛くなったりしていないので、茫然とするくらいだが・・・・・・

 そんなちょっと訳のわからない状況の中、僕の体はゆっくりとではあるが勝手に動いている事に気が付いた




 ドスン、ドスン


 床が揺れるとともに、重量感のある物が一定間隔で地面を叩くような音が聞こえて来た。


 視界が悪い上に、さらに逆光になっていてわかり辛いのだが、目の前から? 聞こえて来る足音と振動の元に意識を向けると、見上げんばかりの人型の巨人がこっちに向かって進んで来ているのを発見する。

 どうやら僕の体は勝手に動いて、そいつに近付いて行っているようだった。

 今一状況がわからないけれど、あきらかに自分は危機的状況にいると理解出来る。


 何とかその巨人から遠ざかりたいと考えるのだが、体は思う通りに動いてはくれなかった。それが余計に僕の思考を混乱させる。

 僕の願いも空しく、一歩毎に揺れる地面。近付いて来る巨人。

 体は依然として僕の意思を無視して巨人へと向かって進み続ける。


 あーでもなんとなくこの行動は、自分にとってしなくてはいけない使命に従った行動だという感覚がある。

 だからなのか、僕の意思に反して体が勝手に動き続けているようだった。




 しかしふと冷静になり、移動速度の遅さが気になって自分の足元に意識を向けてみると、そこにはゼリー状の体がじわじわと動いているのが見えた。

 そもそもは足を見ようと思ったのだが、足が無いじゃないか。


 目の前に迫る脅威も忘れ、自分の手足を確認しようとしてみると、いわゆる触手的なものが自分の意思によって動かせる事がわかった。

 それらを確認し、自分が人間ではない事を認めた。

 もしかして、もしかしなくてもこれって・・・・・・


 ドスン、ドスン


 結論に至ろうとした瞬間、今現在ピンチだった事を思い出させるように、影に包まれた。

 相当な重量があるのだろう、直ぐ近くまで迫っていたせいか地面からの振動が伝わって来て、その存在感を知らされる。

 ハッとして意識を向けてみれば、今この瞬間にも落ちて来そうな巨人の足の裏が頭上を覆っていた。


 やばい!

 思わず反射的に横っ飛びに逃げようとしたけれど、ただ飛びのいただけでは足の裏から完全に逃げられない事が本能的にわかった。


 こんな訳のわからない状況で死にたくはないと、悪足搔きで触手を飛ばし巨人の足に触手を巻き付け、体を引っ張り上げる事で当面の危機を回避出来た。

 とっさの判断だったとはいえ、ぎりぎりで命拾い出来たな・・・・・・触手の先端部分が一部、踏み潰されてダメージを受けたようだけれど、一応命に別状や痛みは感じずに済んだようだ。まあダメージは貰ったようだけれどね。


 僕がホッとしている間も、巨人は足に張り付いた僕に気が付いているのかいないのか、歩き続けているみたい。

 それはいいのだが本能ともいえばいいのか、心の深い部分から時間を稼ぐよう命令されているような感覚がして来た。

 いやこれは強制力とでもいうべき感覚か?


 何となくだが僕は何者かに呼ばれてここに来たという状況と、その何者かに指示された役目があるって事を悟る。その何者かは既に姿が無く、状況を考えるに使い捨ての肉壁として呼ばれたのではないだろうか・・・・・・

 おそらくはそうなのだろう。

 僕を召喚した主というべき者の命令は、目の前にいる巨人に対して何かして、主が逃げる為の時間を稼ぐ事らしい。


 まあ言うは易し。こんな巨人相手に時間を稼ぐ?

 あからさまに僕がどうこう出来るような相手じゃないだろう?

 しかしそんな思考とは無関係に何とかしなければと、強制された指示が何とかしろと訴えて来た。




 とりあえずペシペシと叩いてみたが、こいつは岩みたいに硬い皮膚だな。どう見てもダメージを与えられる気がしない。

 だからなのか僕が張り付いていても気が付かれないのは嬉しい誤算ではあるが、例えカッターナイフを持っていたとしても傷一つ付けられない気がして、この巨人をどうこう出来るとは思えなかった。


 こんなのどうしろっていうのだ?

 そんな風に思考が流れる中、なんとなく美味しそうな気配を足場から感じると空腹感が襲って来た。

 まるでそんな本能に従ったかのように、張り付いている巨人の足に対して、舐めるように吸い付いていた。


 グガァァ・・・・・・


 巨人が発した苦痛の叫びが空気を震わせ、体全体が空気の振動を音として受け取る。

 どうやら体を包む混んでいるゼリー状の部分が、今の僕の手足だけではなく、目や耳、感覚器官なども兼ねているみたいだな。

 そして・・・・・・これはなかなかいける味! 味覚も司っているようだ。


 吸い付いた表面が泡立つように溶け始め、真っ赤な内部の肉が少し顔を見せた。

 ちなみに牛肉のステーキのような味が広がる。欲を言えば塩コショウが欲しいな。

 ご飯はどちらかといえば、しっかりとした濃い味付けが好みだ。ってそうじゃない、今は巨人の相手をしていたのだった。

 空腹状態だったのか、期せずして味わえた肉の味覚に、今現在の状況把握を怠ってしまった。


 気が付いた時には巨人の掌が迫っていて、あっと思った瞬間掬い上げられ、そのままの流れで地面へと叩き付けられるところだった。

 一瞬で迫る地面を前に、このままの勢いでぶつかれば命が無いって事がわかる。


 巨人が足を止め、僕に対処して来た事で使命を果たし終えた充実感はあるのだが、こんなところで死にたいとは思えなかった。

 ならばせいぜいあがいて見せよう!

 迫る地面に向けて触手を飛ばし、まずはがっつりと地面を掴むイメージで固定する。

 そして今なら何となくわかる体の本体ともいえる核の部分を、地面にぶつからないように地面へと引き寄せ、衝撃を受けないよう地面からある程度放した距離に固定した。力加減や引き寄せる速度はもう感覚的にやるしかない。

 後は体の周囲にあるゼリー状の部分を引き寄せ、衝撃を吸収させれば何とか生き残れるのではないだろうか?

 実際、体の周囲のゼリーが激しく何度も波打って、衝撃を受け流しているのがわかる。それで上手く行くはずだった・・・・・・




 ボーとした意識の中、砂埃が積もっている床に乗っているせいでゼリー状の体の中がジャリジャリしているのを感じた。

 何ていうか、別に不快感があるとか不都合がある訳ではないのだが、なんとなく異物が混じっていると思うと潔癖症でもないが嫌な感じがした。そう考えるとジュって音が体内でして、一瞬のうちに体内の異物が溶けて無くなる。

 所詮は砂だから、美味しくもなんともないな~などと考えつつ、ハッと今はそんな呑気にしている状況ではないって思い知る。


 圧倒的質量が、自分めがけて迫って来るのを空気の流れで感じ取った。


 巨人の力で見るからに重量の有りそうな質量体を叩き付けられたら、僕何てひとたまりもないだろうな。

 その危機が直ぐ傍にあったのだと、素早く周囲を確認する。


 どうやら巨人に投げ付けられた勢いは、完全には処理し切れなかったようで核にもダメージが伝わり、わずかな間気を失っていたようだ。気を失っていた時間は、そんなに長くないと判断出来たのはまだ死んでいないという事実と、今現在迫り来る質量体を察知したからだ。


 もちろん黙って待っていれば死ぬだけなので、再びジャンプして迫り来る棒状の物を避ける。

 体の下を通過して行く棒状のもの・・・・・・よくよく見れば棒の両側に斧の刃が付いているのが見て取れたので、両刃の斧又はハルバードと呼ばれる武器じゃないかと思う。まあ今は武器名を気にしている状況ではないな。


 今回の攻撃はたまたま避けられたようだけれど、次も上手くかわせるかどうかわからない。しかも今現在巨人の攻撃をかわしたばかりで、まだ空中にいるという危機が去っていない状態のままだ。

 瞬時にそう考え、通過して行く斧の棒の部分に触手を飛ばして体を引き寄せる事にした。

 直ぐに行動したのがよかったのか、床すれすれを通過して行く斧に、上手く着地する事が出来たようだ。




 こちらとしては次の攻撃を避ける意味合いの方が高かった行動なのだが、その副効果として巨人は僕の事を見失っているようだ。ラッキー!

 足を止め、消えた僕の姿を探しているっぽい巨人にはわるいが、このチャンスを生かすべく移動を開始する。


 初めはなるべく悟らせたくないのでこっそりと移動しようって考えたのだが、どうやら全力で走ろうと考えたところでジリジリとしか移動しない事がわかった。

 これじゃあ逆に手間取り過ぎて発見される危険の方が高まるじゃないか。


 ならばと触手を棒に沿って伸ばし、ある程度離れた所を掴んで体を引き寄せて移動する。こっちの方が歩くより断然早く移動出来るな。

 そんな感じで移動を開始して斧から腕に登って行くと、さすがの巨人も手に違和感を持ったのか、こちらに顔を向けて来た。


 牛?


 マッチョな体の上に乗っていたのは牛の顔だった。という事は今まで相手にしていた巨人は、よくゲームなどで登場するモンスターのミノタウロスってやつなのか・・・・・・

 でもってそういう僕は、スライムと呼ばれる最弱のモンスターなのだろうなーってどこか、現実逃避気味に考えていた。




 いつまでも現実逃避している暇はない。


 ミノタウロスに発見された以上、こちらものんびりとはしていられないのだ。

 素早く触手を伸ばして腕をよじ登ると、遅れて僕を払いのけようとするミノタウロスの手を掻い潜り、頭部へと辿り着く。


 最弱の存在である今の僕じゃあ、まともに戦ったところでミノタウロスをどうこうする事なんて不可能だろうが、何も殴ったり武器を使うだけが正解ではないだろう。


 それに僕は実際に見ている。それはたまたまの結果ではあったが、足に取り付いた時に皮膚を溶かす事に成功しているのだ。それを利用しない手はない。


 ゲームのように格上の敵は、ダメージを無効化されるって仕様ではないのが救いだな。まあ一ダメージでしたってパターンもあるけれど・・・・・・とにかくやり様はあるはずだ。

 つまり目などの重要器官が多い頭部を狙って行けば、例え失敗しても後々優位に進むはず。

 そんな考えから払いのけられる前に、ミノタウロスの頭部を覆いつくして行った。

 あー、ついでに鼻と口を塞げば酸欠で倒せるんじゃないか?


 一石二鳥とはこのことだなって考えつつ、なるべく顔を分厚く覆って行く。こうした方が空気を遮断しやすいだろう。

 その行動に慌てたのか顔を覆うゼリー状の体を払いのけようと、武器を手放し掻き毟るミノタウロス。


 ここで捕まったらやばいので、本体となる核を後頭部の方へと移動させ、後は体内にある酸で致命的ダメージを与えるか、思い付きで試した酸欠で倒れるかするのをしばらく待つ事にした。




 それにしても、自分がスライムだと自覚してしまえば自在に体を操る事が出来るようだな。


 体が動かし方を知っているというか、頭の中でこう動きたいって思い描けば、出来る範囲で思ったように動ける。

 おかげで掻き毟られても上手いこと張り付いたままでいられる。


 後頭部に張り付いているので、顔の方がどういう状態になっているのかは伺いしれないが、やっぱりスライム如きの酸じゃあ簡単には溶けてくれないようだな。そうなると、こいつを倒すには窒息を狙う方が効果的かもしれない。


 見ている間にミノタウロスの動きも徐々に鈍っていっている。

 そして三分も経つ頃には膝から崩れ落ち、地面へと倒れたのがわかった。だがまだ生きてはいるみたいだな。

 ここまでくれば、もう少しってところだろう。どうやらなんとかなったようだ。


 確実に倒せたって思えるまでは、しばらくはそのまま頭部にへばり付いているかな。


 それにしてもスライムっていう最弱のモンスターなのに、ボスクラスのミノタウロスを倒せたって事か・・・・・・




 ――――――



 スライムに関する考察・・・・・・By 主人公




 スライムに付いて話をしようと思う。


 一口にスライムといっても物語によって姿や強さ、知能に至るまで様々なスライムが描かれて来た。

 姿でいえば水溜まりそのものの液状スライムや、錬金術の産廃物から生まれたヘドロのスライム。核になる丸い球が有るやつと無いやつもいるな。


 強さはプチプチと潰されるだけのスライムから、液状の形状から一切の物理攻撃が効かない強者のスライム。

 知能に関してはまんま単細胞なので皆無のやつから、人間と会話するスライムまで描かれている。


 この作品ではどうなのかっていうと・・・・・・大きさは成人男性の拳を二つくっ付けたくらいの大きさのジェル状のスライムだ。核があるタイプで水色のスライム。核の大きさは親指を丸めた状態を球状にしたくらいが近いかもしれん。


 種族はスライムで、ノーマルスライムという呼ばれる時もある。完全な青ではないのでブルースライムではないぞ。強さは・・・・・・子供に核を踏まれたら潰れて死んでしまうくらいだ・・・・・・僕以外のスライムは、回避も防御も考えずに突き進む為、最弱種族の名前を不動のものにしている・・・・・・獲物を溶かす前に潰される訳だな。


 知能は僕だけは人間並みだな~。他のやつは皆無だ!


 しかし僕でもミノタウロスを倒せるのだから集めて敵に投げ込めば、大抵の奴を倒せる最強種族にならないか?


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