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神様の宝物  作者: 小林 あきら
第一章 苦労の絶えない門番兵
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第四話 みっしょんいんぽっしぶる ロッソ


 〜ロッソ視点〜




 急に視界が揺れる。

 ああ、これは緊急の呼び出しだ。


 すぐさま魔力を全身に廻らせ、戦闘に入れる様に構える。


 まずは状況の確認だ。

 目の前にはドワーフのおっさんと親父か。

 という事は、このドワーフのおっさんが敵か?それとも、ここに襲撃をかける奴の対処か?


「ロッソ、大丈夫だ」


 親父の言葉で、ひとまず戦闘の構えを解く。

 戦闘が起きそうなのか、これから起こるのか分からないので、親父の言葉に頷き、体を覆った魔力だけはそのままにしておく。


「説明を頼む」


 言葉を短くし、状況の確認をする。


「そのなんだ?今すぐに戦闘は起こらないから、その魔力を解除してもいいぞ」

「ああ……なんだよ」


 体を覆っていた魔力を散らす様に治める。

 オレが呼び出されるという事は、大体の場合は戦闘なので、こうして直ぐに戦えるようにしている。

 しかし、どうやら今はそういう状況ではないらしい。


「んで、こんな人前で急に変わるなんて、ハクの兄貴は何を考えているんだ?」

「ああ、それなんだがな。急な調査が必要となった」

「分かった……けど、このドワーフのおっさんには正体がバレてもいいのか?」

「問題ない。俺が『死神』である事も話したからな」

「マジか?……このおっさんは何者だ?」

「ロングスケールの一族……親方の子孫にあたる」

「ん!?マジか!?……じゃあ、問題ない……のか?」


 マジかぁ……

 どうりでこのおっさんは親方に似ていたのか……いや、オレにはドワーフのおっさんなんて、皆親方に見えてしまうけどな。


「な、なぁ?クロ様……は、ハクはどうした?」

「ん?説明してなかったのか?」

「ああ、ハクなりの悪戯だろう」


 驚いているドワーフのおっさんに、オレは笑いながら話しかける。


「あ〜なるほど。じゃあ自己紹介だ。オレはロッソ。ロッソ=ルーエ=タナトスってもんだ。さっきまでいたハクの兄貴の弟で、そこのニヤニヤ笑っている黒猫の息子だ」


 まぁ、普通の人間ならこの状況は理解できないだろう。


「そんで、ハクの兄貴とは体を共有しているって言えば分かるのか?」

「共有?」

「まぁ、ハクの兄貴でもあるし、このオレ、ロッソでもある。できれば、個々で扱ってくれると助かるな」

「ああ……よく分からんが……ロッソだな。俺はブリーズ、ブリーズ=ロングスケールだ。よろしく」


 おっさんは突き出したオレの手を握り挨拶した。

 どうやらこのおっさんは考えるのを止めたらしい。

 その考えは共感できるので、このおっさん――ブリーズとは仲良くできそうだ。

 ブリーズと会話もしたいが緊急なようなので、悪いが後回しだ。


「で、親父。調査って何だ?」

「ああ、その事だったな。お前には辺境伯の性格というか身辺の調査を頼みたい」

「まぁ、そういうのは俺の仕事だけど……で、期限はいつなんだ?」

「明日だ」

「明日か……って明日!?」

「ああ、明日だ」


 二度聞きしてしまったぞ、こんにゃろうめ。

 親父はこの反応が来る事が分かっていたかのように、オレの目を見ずに告げる。

 親父ェ……


「なぁ?親父?いやさ、親父殿?オレの事を高く買ってもらったのは嬉しいが、人には出来る事と出来ない事があるって知っているだろ?」

「まぁ、俺もお前とは同意見だ。だが、それをハクの前で言えるか?」

「くっ!痛いとこを突いてくれるなぁ……」


 確かにハクの兄貴から直々の指令と言う事は、断ると後が怖い。

 でも、よく考えてほしい。

 期限が明日って、無茶振りにも程があるだろ?

 こういう人となりを調べる調査っていうのは、本来ならひと月とか、もっと長いスパンで調査をするものだろう。

 最低でも一週間、いや、三日は欲しい。

 流石にハクの兄貴でもそんな事は分かっているだろう。


 ……と言う事はだ。


 もしかしたら、オレ馬鹿だから、勘違い、もしくは、オレの聞き間違いかもしれない。

 てか、オレの勘違いであってほしい。


「なぁ、親父……マジか?」

「ああ、明日だ」

「明日って……今何時?」

「夕方だな」

「もう、今日が終わるじゃん?」

「……ベストを尽くせ」

「マジかぁ……」


 勘違いでない事は分かった。

 更に悪い事に、オレが考えているより時間が無い事も分かった。

 ダメダメじゃん?


「どうすんの?これ?ベストって何さ?」

「…………」


 親父はオレと目を合わせてくれない。


「お〜い!親父殿?ここにアナタの愛する息子が困っているよ?アナタの息子の手によって困らされているぞ?」

「…………」


 親父はオレと目を――以下略。


「まぁオレがこの任務をこなせなくても、ハクお兄様に怒られるのは、ええ、オレでしょうね……反応なしかよ……」

「…………」


 親父――以下略。


「ならば、親父よ。そっちがその気なら覚悟するがいい。オレは昨日の屈辱を、ハクの兄貴に売られた事を忘れていない。ハクの兄貴に洗い浚い親父と共に犯した罪を白状してくれよう。死なば諸共だぁああ!!ふはっ、ふーはっはっはー!!」

「…………!?」


 親父はオレと目を――合わせたくてウズウズしている。


「どうした親父殿?何か言ったらどうだ?」

「…………くっ!」


 親父は仲間になりたそうにこちらを見ている。


「なぁ、お前ら何してんだ?」


 冷静なブリーズがようやくツッコミをいれる。

 ここらが潮時か。


「まぁ、てな訳で、モチロン親父も手伝ってくれるんだよな?」

「ああ、もちろんだ。まさか、息子が困っている時に手を貸さない理由が無いな」


 親父はついに折れて首を縦に振る。

 その親父の嫌そうな顔がとても、それはもうオレの心を満たしてくれた。

 これでは、ハクの兄貴の事を悪く言えないなと少し思った。





これで10万字いったので、改稿やらなんやらしようと思います。

もし、更新が遅れても罵声を浴びせないで頂ければ幸いです。

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