デフォルト
20××年。政府が日銀にデフォルトし、日本は晴れてギリシャとなった。北海道、四国、九州は海に沈み、本州はガムのようにグニャグニャと形を変え、地図の中に第2のギリシャを形成する。日本列島に住んでいたはずの日本人はすべて蒸発し、新たなギリシャ人がエル・カンターレによって遣わされる。しかし、新たな人類にも希望はない。彼らもまたデフォルトしているからである。
見ると、ほとんどの人が見るからに絶望に打ちひしがれた顔で皆、望みが消えて希望はないのだといった苦悶の表情を見せている人ばかりだった。むこうの方で何やら騒々しく騒いでいる人だかりの群衆が見えた。
「牽引!ギリシャまで来い!ええいっ!」
大島先生は絶好調のようだ。人だかりは彼を取り囲んで真剣な眼差しで彼を凝視しながら見ている。
ヤク中の寺内がバケツを持ってランニングしながら足を止めた。デフォルトである。
「ニホン?ニッポン?は、はっ~、笑わせてくれる。まだいたとはな、日本人が。残念だが日本はもうないよ、ここはギリシャだ、当然のことギリシャ人が住む、そして日本人だったら腹をこわすぐらいにオリーブオイルと生きている。これは、ギリシャ化の第一歩に過ぎない、いずれは世界がギリシャになる、そうさ、誰もが分かっていたことさ、みんなでデフォルトすればそれでいい!そう世界はギリシャに。ギリシャが世界となるんだ!」
そう叫ぶと、ヤク中の寺内はランニングしながらデフォルトを止めた。かくして世界は再び平和になったのである。