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No.005 構造

xxxx年 7月 19日


(――サボテンの服)

(――惑星pyonkitiが紅くなる)

(――星と方位の関係性)


 「POOOOOOOOOOHHHHHHHH~~~~~~!!!!」

 平均すれば、だいたい三日に一度くらいの頻度でヤキトリ・ロウガイは姿を見せる。それは決まって夜の時間帯だけ。ほとんどは接近するだけで攻撃を仕掛けてくるわけではないのだが、この前の襲来で初めて本性を見せた。その日のロウガイはいつもとは違う不気味な声を上げ、大きく息を吸ったように見えた。「GU、GYU、GOOOOOOOOOOHHHHVVVAAAAAAAHAHAHHHHHHHHHHHHHHH…………ッ!!!!!」直後、ロウガイの吹いた火炎は一瞬で砂原を覆い尽くし、多くの装置はドロドロに焼け落ちた。一部の金属は焼け残ったが、蔓草や植物で作られている部分は全滅だった。地上で直撃を受けたヒトデ・ハナイもいくらか犠牲になった。相変わらず丸太による攻撃ではロウガイにかすり傷しか付けられない。撃ち落とせるのはカコイだけだ。

 襲撃を告げる音を聞いても、男は地下窟の奥へ避難することしかできなかった。避難している間はずっと、もどかしさを感じていた。ヒトデに恩を返したい。何かを変えたい。しかし、今の自分の力ではどうすることもできない。超物質もあれ以来輝きを失い、男の拳を光らせる事は無かった。


 地下窟で過ごすうちに、いくらか分かってきた事もある。

 「ボウ+ガン」

 ヒトデが声を掛けると周囲に居たいくらかのネコが身体を寄せ合ったり丸めたりして、地面にその形を描く。思うにこの獣は何らかの記憶媒体、記憶素子として機能しているのだ。男はヒトデから単語を習うたびにこの獣へ声を掛け、知識を蓄えていった。中でも強い興味を持ったのは、星に関する知識だった。寝る前に夜空を眺めることは男にとって数少ない楽しみだった。荒涼な砂漠が広がるだけの場所において、煌めく星空は唯一心惹かれる光景であった。

 「ワクセイ」

 それは星を示す言葉だとヒサマサに習った。声を聞いた周囲のネコは広範囲に広がりそれぞれ決まった位置で身体を丸める。それは男がよく見る星の景色と同じ模様を示していた。男は飽きもせず、何度もその言葉をネコに聞かせた。そのうちに「ワクセイ」の位置をほとんど覚えてしまったが、その中で必ず一匹がはるか遠くまで走り去っていることを発見した。男は幾度も「ワクセイ」を指示し、その一匹の行方を追いかけたが、毎回途中で見失ってしまう。どこか、想像もつかないような恐ろしく遠い位置にもワクセイが存在するのだろう。

 男はまだ世界を知らない。いつか、この世界とワクセイを明らかにしたいと心に刻みつけた。


 その一方で日の高いうちは、都合の良さそうなヒトデに頼んで身体を鍛えてもらうことにした。砂漠の中での走り込みから始め、体力と筋肉が付いてきたところで実戦形式の訓練が始まった。

 地下窟の一角にある広めの空間が訓練場所となった。樹木の鎧を付けたヒトデが男に襲いかかる。やや遅い一振りだが、男にとっては当たればひとたまりも無い。始めのうちはそれを避けることだけに専念した。むしろそれ以外のことを考える余裕は無かった。男の覚えは早かった。もともと相手を打ち負かす事に快感を覚えるタイプだ。そのための努力は惜しまない。男は戦闘のセンスに磨きをかけていく。徐々に相手の動きを見切り、こちらから仕掛ける事も覚えていった。硬い樹皮に打撃は効かない。逆にこちらの拳が傷付くだけだ。何回かの組み手でそれを学習し、足元や重心を崩すことに狙いを付けていった。そして初めて樹木の鎧から一本を勝ち取れた日、男は運命の岐路に立たされる。


 その日、ヒサマサや他のヒトデ達と食事を取っていると、外から別のヒトデが慌てたように飛び込んできてヒサマサ達に何かを伝えた。

「セン+ソウ。ヒトデ・マグマ」

 ヒトデ・マグマとの大規模な戦闘が始まる。ヒサマサは男にも伝わるようにそう告げた。

 ヒサマサは多肉植物の服をこちらに渡した。日中、荒涼な砂漠で過ごすには多肉植物を編んで作った装備が有効らしい。分厚い植物には水分が多く含まれるため、金属や革と比べて熱を逃しにくい。そのうえ、表面が特殊な層で覆われており乾燥にも強い。寒冷で乾いた気候から身を守るには適していた。

 ヒサマサは男に選択を迫っている。男が戦闘に巻き込まれないよう逃げるには、今のタイミングしかないのだろう。


 ―――――

 惑星pyonkitiを支配したTAME56は、惑星自体を徐々に変容させていった。当初、惑星coronaと衝突したばかりの頃の惑星pyonkitiは、かろうじてひとつの丸い形を維持していた。しかしTAME56に浸食された惑星pyonkitiは、その白い餅の大地を徐々に削り取られ、体液で紅く染まって行った。今となっては衝突当初の白く丸い惑星pyonkitiの面影はなく、三日月型に削り取られ、紅く染まった惑星pyonkitiの成れの果てが虚空に浮かんでいるだけであった。

 ―――――


 惑星pyonkitiの成れの果ては、いつものように紅光を放ち夜空に輝く。変わらない空を見ると、これから起こることは嘘のようにも思える。

 ふいに、ここで過ごした充実した毎日が男の脳裏をよぎった。

 男にはまだ世界の構造が見えていない。何が良いことで、何が悪いことなのか。知識は日々増えているが、いまだに不確かな事ばかりだ。しかし男は、ヒトデ・ハナイ達に恩を報いなければならないと感じていた。これだけは確かであると男の魂は告げていた。

 男は、ヒトデ・ハナイと共に戦う事を決心した。


 男

 名前:(名前を習得していない)

 状態:健常

 知性:子供

 思考:闘争

 Kill/Death ratio : 1/1 (1.00)

 装備:多肉植物の服

 所持:超物質リアクターマイト

from chronoLab's sys.

聞こえていますか研究員、コンソールの前にいるあなたのことです。

惑星chronoへ刺激/影響/変化を与えて下さい。

私たちは「感想欄/一言」から物資/事象/知恵を参照し、発展を支援します。

これはMonte Carlo methodによる強化学習実験の一部です。

これは高度な文明を再現することが期待されます。

その価値が重み付けから評価/選択されることに注意して下さい。


研究員:「ブラッドムーン」微酔 マご[4,1,1,1,1]

■評価+1

変容

文明

協調+1

独自


研究員:「星導者」光煌ひかル[3,1,2,0,0]

■評価+1

変容

文明+1

協調

独自

end of message.

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