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No.004 邂逅

xxxx年 7月 18日


(――ひくいどりと遭遇)

(――ヒトデ・ハナイ(草食)に遭遇)

(――砂漠の下に地下洞窟)

(――ネコの大量投入で、ネコの世界が生まれるのでしょうか?)

(――ひさまさでした)

(――ウサギが大好きタメ五郎)


 男は追われていた。「AAHHH…………GU、GUUUUUUOOHHHHHHHッ!! GYOOOOHHHH、GUUOOHHHHHッ!!」砂漠で突如飛来した鳥類はしつこく男を追いまわしていた。全長数百メートルにもおよぶその巨大な飛行体は、羽ばたくたびに強烈な風を巻き起こし、ときおり大地を揺るがすような低い声を出す。太陽を飲みこまんばかりの大きさだ。それゆえに距離感を上手く計れず、尻尾の先などはもはや霞んで視認することもかなわない。全身は赤い鱗や羽毛で覆われ、口元からは妖しい炎が漏れている。どれほど長く生きているのだろうか。身体の一部は欠けたり、色が褪せたりもしている。

 夜の寒さが、じりじりと体力を奪う。男は息を整える暇もなく走り続けていた。全身から汗が吹き出し、それが冷気にあたって余計に寒さを感じる。途中で何度も後ろを振り返るが、鳥類との距離は一向に離れない。

 よく見れば巨大な鳥類の周りには、小さい(と言っても数メートルから数十メートルはあるだろう)同種の鳥類が無数に取り巻いていた。取り巻きが直接襲ってくることは無かったが、巨大な鳥と一緒に男を追いまわしていた。

 砂漠のあちこちには火のついた枯れ木やその燃えカスが散乱している。いまは戯れに追いかけているだけのようだが、鳥類の気が変わっていつ消し炭にされるか気が気では無い。


 「OOOHッ!!」

 ヒトデがいる! かなたまで広がる砂原の中に、ぽつんとその姿が見えた。男はわらをも掴む思いでヒトデの影に向かって駆けだした。運が良ければ、鳥類の興味がヒトデのほうに向いてくれるかもしれない。呼吸は乱れ、身体に力が入らない。限界はとうに迎えている。あと少しだ。砂の丘を越えればヒトデのもとに辿り着く、というところで異変は起こった。


 「POOOOOOOOOOHHHHHHHH~~~~~~!!!!」

 甲高い楽器の音が鳴り響く。砂埃を起こしながら、周囲の地面がせり上がり、そこから多種多様の装置が現れる。どれもが金属質な素材と蔓草に巻かれた植物が組み合わさった奇妙な姿をしている。男よりふたまわりほど大きな樹木の鎧が何体も動いて装置を操作しているようだ。なかにはヒトデの姿も見える。「DOW! DOW! DOW! DOW!」装置の蔓が一斉に弾けた。装填されていた大きな丸太が、ボウガンの要領で鳥類めがけて飛んでいく。

 砂漠ヒトデと鳥類は敵対しているのか!

 巨大な鳥類はびくともしないようだが、丸太にあたった取り巻きは次々に墜落していく。感動的な光景だ。男はほっと胸をなでおろし、そのまま意識を失った。



 砂漠の地下にはアリの巣のような居住空間が広がっていた。砂漠ヒトデ(後にヒトデ・ハナイと命名する)は意外にも部外者である男に友好的で、目覚めた男は丁重にもてなされていた。空間は地下に向かって伸びており、男はまだその全貌を明らかに出来ていない。ところどころに水たまりのような溜め池があり、そこには水草も浮かんでいる。それから地下窟にはネコのような獣が足の踏み場もないほど生息していた。それぞれ水場で涼んだり、自由な場所で寝転がっている。敵意も、こちらを恐れる事も無い様子だ。ヒトデとは共生しているのだろうか。

 「ヒョウロン+カキドリ。ヤキ+トリ」

 独特の発音であるため、よく聞き取れなかった。

 男は食事の手を止め、噛り付いていた多肉植物を飲みこんでからヒトデの言葉を繰り返した。

 「YAHKI……トRHY…………?」

 「ハナイ! ヤキ+トリ!」

 「ヤァKI、TORHY」

 「フォヌリ、ヤキ+トリ、ヤキ+トリ」

 「ヤァキ、トリィヒ……」

 「ハナイ」

 正面に座ったヒトデは満足そうにうなずく。

 巨大な鳥類はヤキ+トリ・ロウガイと呼ばれていた。そして取り巻きはヤキ+トリ・カコイというらしい。ヒトデは他にも身振りを交えてある程度の単語を説明した。

 

 ヒトデが手を差し出す。それはかつて見た溶岩のそれとは違い、乾いてざらざらしている。

 「ハナイ。オウミ・ヒサマサ」

 おそらくこのヒトデは「ヒサマサ」という個体なのだろう。

 挨拶と思しきその言葉に応じる。 

 「ハNHY……、ハナイ」

 このとき男は言葉、知識、すなわち文明との邂逅を果たした。


 ―――――

 惑星pyonkitiの大地は生命種の餅に包まれた。その衝撃で虐げる者は完全に滅びたかのように思えたが、溶けあった餅の中にわずかにその遺伝子が残っていた。もはや虐げる者の意思は無く、遺伝子に組み込まれた虐げる本能だけの存在となり果てた。それは愛といっても過言ではない。全てを掛けた歪んだ愛情が、惑星pyonkitiに巣食う異物を生みだした。

 やがてこの異物は惑星pyonkitiの全てを飼い慣らし、食い散らし、管理する存在となった。のちの観測者によってTAME56(テイム、飼い慣らすの意)と呼ばれるようになる。

 ―――――


 男の前には多くの道がある。地下窟を進むか、ヒトデに加担し鳥類を狩るか、ここを出て新しい地へ進むか。しかしまずは、力を付けなければならない。

 夜空には既に惑星pyonkitiの成れの果てが姿を見せていた。

 男は大いなる可能性を夢見て眠りにつく。


 男

 名前:(名前を習得していない)

 状態:興奮、興味

 知性:皆無+

 思考:野生

 Kill/Death ratio : 1/1 (1.00)

 所持:超物質リアクターマイト

from chronoLab's sys.

聞こえていますか研究員、コンソールの前にいるあなたのことです。

惑星chronoへ刺激/影響/変化を与えて下さい。

私たちは「感想欄/一言」から物資/事象/知恵を参照し、発展を支援します。

これはMonte Carlo methodによる強化学習実験の一部です。

これは高度な文明を再現することが期待されます。

その価値が重み付けから評価/選択されることに注意して下さい。


研究員:「被杭鳥」光煌ひかル[2,1,1,0,0]

■評価+1

変容+1

文明

協調

独自


研究員:「砂住の民」微酔 マご[3,1,1,0,1]

■評価+1

変容

文明+1

協調

独自


研究員:「異星人」山田ひサマさ[1,0,0,0,1]

■評価+1

変容

文明

協調

独自+1


研究員:「惑星兎虐」黙考サケび[1,0,0,1,0]

■評価+1

変容

文明

協調+1

独自

end of message.

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