No.001 目覚
それまで惑星の観察というのは、大変な資金と時間をかけて行われるものであった。
電子メディア期の記録によれば、XX年の冥王星探査機では画像を送るだけでも一年以上の年月がかかったという。
もちろんそれはW氏の量子テレポーテーションによって「距離と時間」に革命的な進化が訪れる前の話だ。
その叡智は世間をおおいに沸かせた。W氏の発表は世界で一番写真に収められ、アップロードされた音声の再生数は数億回にものぼったという。我が研究所も例外では無かった。みな狂ったように歓喜し、上半裸で酒を浴び、川に飛び込む者までいる始末だった。
その中でただひとりW氏だけが、熱狂に巻かれること無く、その後の暗雲を見据えていたのだった。
< chrono研究所員S氏の議事録 より引用>
xxxx年 7月 15日
男はどうして自分がそこにいるのか分からなかった。
ただ、忽然と姿を現したようにも思える。昔のことは何も思い出せない。
温暖な気候、打ち寄せる波間。背後には茂る森林。目の前には澄んだ海が見える。
ここは島だろうか。
ふいに身体から力が抜けて、男は後ろから倒れた。
浜辺の砂は男の身体を柔らかく包む。太陽はまだ高い。
そのとき初めて、男は飢えていることを感覚した。
from chronoLab's sys.
研究員、コンソールの前にいるあなたのことです。
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私たちは「感想欄/一言」から物資/事象/知恵を参照します。
これはMonte Carlo methodによる強化学習実験の一部です。
これは高度な文明を再現することが期待されます。
その価値が重み付けから評価/選択されることに注意して下さい。
end of message.