サイコパス
ーーーーー俺に目をえぐらせた時、もう片方の目で俺をジッと見つめてたーーーーー
浅野が逮捕された日。
イトキンは身柄を拘束されていた。少年Aの自供は驚くべきものだった。真の少年Aはイトキンを完全に支配し、少年Aに仕立てあげた。その日も普通に学校に登校し、「普通に」学校生活を送っていた。
浅野が逮捕された時、ヤツは手にハサミを持ち、イジメてるヤツの頭を切り傷だらけにする「散髪」の最中だった。イトキンの頭に今も切り傷が今も残る。これが浅野の「普通」だった。
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「……サイコパス…あの事件の…」
正直に話した。浅野への恐怖が俺の中で勝った。情けない話だがヤツの目を思い出しただけで、恐怖が体を支配してしまう。誰かに相談したくてらたまらなかった。結果を先に言うとちゃんと伝えて正解だった。七緒は本当に頭のキレるヤツだった。
「…噂によるとどこかの医療施設に入ったはずだ。3年そこにいたはずだ。」
「…おそらく、少年法に守られたんだ。無期懲役に代わって言い渡せる有期懲役の上限は15年が限度。…今年で7年か…」
「法律は俺には分からない。でも俺はこの目で浅野を見た。あいつは…何も変わってないように見えた」
七緒は何も返事をせずノートパソコンを凝視している。膨大な情報を処理してるんだろう。下にスクロールするパッドに触れる指が加速する。
「…芹沢君、多分。多分なんだけど、近いうちにあなたに来客があるわ」
「…浅野か…?」
「いいえ…恐らく警察…かな?」
「?!…浅野はもう…?なにかやらかしたってことか?!」
「そうなんだけど…正確には違う…浅野は…あの事件から7年。
まだ社会復帰にはまだ早すぎる…更生プログラムを終了していない、としたら。どうしてここにいる?」
「…仮出所か…?」
「……記事では仮出所はもう済ませてる。
…浅野は(自分の意思)でこの街にいる。
今の段階でこの街にいるとしたら異常自体だよね。本来なら社会復帰の途中。一般人に溶け込み、普通の人間として生きてる準備段階のはず。表向きは真面目に。このページ見て」
ノートパソコンにはあの事件の記事がまとめてある。記事が正しければまだ出所はしていないはずだ 。
「今年から少年法が改正される。法を変える程の影響力がある事件だったのよ。少年Aの残虐性は例を見ないものだった。国は少年Aを更正させる決断をした。その更生プログラムは国の威信をかけたもの。
私の仮説は、浅野は更生プログラム中に犯罪を犯し逃亡した。その犯罪とは国の威信をかけたプログラムを完全に無意味にするもの。そう、最悪のケース。
法務省管理で。なんらかの同居人と一緒に住んでるはず。
で、ここにいるとしたら…?同居人は殺されているか。動けない程度には暴行されてる。単なる脱走だとしても、マスコミに知られただけで世間は震え上がる。法務省の更生プログラムは無意味、面目丸つぶれ。間抜けな警察。
法務省、警察はこの問題を公にせず(秘密裏)に処理する。
正解とはいかないまでも、遠からずってところじゃないかな?
じゃないとあの少年Aが地元に帰ってくるなんて説明つかないもの。
これが私の仮説」
「待て七緒。そんな…俺はバカだけど…ここは法治国家だぞ??そんなバカな事ってあるのか…??」
「浅野が脱走してたとして。警察は少年法で裁かれた被疑者の顔写真を公開した例は過去にはない。むしろメディアに規制が入るわ。今は事件前、警察は表立って動かない。
……浅野の脱走は最後まで公にされない。これが一番最悪のケースよね。
私達は、自分で思ってる以上にこの事件に関わっている。少年Aを中心に複雑に絡み合ってる。もしイトキンが私を浅野から遠ざけるために帰ってこないなら、きっとどちらかが死ぬわ」
「…なぁ、七緒。ちょっと話についていけーわ。お前がイトキンを思う気持ちは分かるけどさ……考え過ぎじゃねーか?警察とか法務省とか。俺には…なんつーか、想像できねーんだわ」
「少年A、浅野大輔。彼は日本の犯罪史に名を残すサイコパス。
浅野が、殺した2名。更に4名が重体。その殺された2名は血の繋がりのない父親と娘。これが娘の画像。ネットって便利、だけど残酷だね」
七緒がノートパソコンの画面をこちらに向けた。俺は見覚えのある顔写真に血液が逆流した。その画面には俺のごく身近な人が写っている。
「彼女の名前は
ーーーーー藤間桜子ーーーーー
そう、そっくりよね。薫子ちゃんの実のお姉ちゃんよ。
七年前の八月一日、浅野が起こした殺人事件の最初の犠牲者。
サイコパス相手なら杞憂でもないと思うわ。芹沢君も私の気持ちが理解出来ると思う」
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