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上空18万feet

思いつきで書き始めましたので更新ペースは遅い予定です。

 目が覚めると知らない場所に居た。

ぼんやりとした意識の中、周囲を見渡しても自分の知っている景色はない。

どうしてこんな場所に居るのか、そんな事がまったく思い出せない。

気を失う前で覚えて居る事はいつも通り自宅の庭を走って倉庫に向かって居た所までだ。


その後の記憶が一切ない、どうやってここまで来たのかも曖昧だ。

「・・・・・・」

言葉がない、知らない場所に知らない内に来ているなんて明らかに不自然だ。

自分は頭でもぶつけただろうか、それにしては痛みはない。


ちゃんと自分の名前も歳も分かる、両親の名前だって分かるし住所だって覚えて居る。

頭にダメージがあって思い出せないとは考え辛い。

ではどうして知らない場所に居るのだろうか?

再び周囲を見渡す、やはり知らない場所だ。


そもそも自分の家の近くにこんな場所はない。

都会と言って差し障りない都市に住んで居るのだからこんな殺風景場所があるはずがない。

見渡す限りが木々で覆われている。

まるでタイムスリップして開拓前に戻ったかの様な自然が広がっている。


------ンオオオオオオオオッ------


「!?!?!?!?」

突然聞いた事もない様な大きな音がして驚いた。

まるで映画で見た怪獣の咆哮の様な印象を持った。

もしかすると近くに猛獣が潜んでいるのかもしれない。


そう思い慌ててエンジンを掛ける。

幸いにしてこの装甲車を走らせる事に支障がないレベルの起伏しかなかったので助かった。

もう少し激しい起伏があったらハマッてしまって動けなかったかも知れない。

大急ぎで走らせ逃げ出す。


数分で森を抜け出す事が出来た。

そして開けた視界に飛び込んできたのは草原であった。

これだけ見渡す事ができるのに建物なんてひとつもない。

国立公園にでも迷い込んだのではないかと思うほどのひらけていた。


「一体ここはどこなんだ・・・」

自然とため息が出て、言い知れぬ恐怖を覚える。

その後もしばらく装甲車を走らせて居ると遠くの方に建物が見る。

木造だろうか、近づくにつれて町がある事に気が付いた。


あの町に立ち寄って現在位置を聞く事が出来れば家に帰る事が出来る。

そう思い速度を上げて町に向かった。

町に着くと人々が装甲車に興味を持ったのか続々と集まってくる。

話を聞くのには丁度良いと思い上部ハッチを開けて外に出て声を掛ける。


「すまないがここはどこですか?」

少々間の抜けた質問だがこれ以外にどう聞けば良いか分からない。

「ここはフォルランの町さ」

一番前に居た気さくそうなおじさんが教えてくれる。


フォルランの町?

聞いた事がない、一体どこの州だ?

「えっと、ではここは何州ですか?」

質問を変える。


「州?州ってなんだ兄ちゃん」

「えっと、フロリダとかテキサスとか・・・そういうのですよ」

パッと思いついた州の名を口に出す。

「フロリダ?テキサス?なんだそれ、聞いた事ねぇな」


馬鹿な、フロリダやテキサスを知らない?

一体どんな田舎なんだ、自分たちの住む州すら分からないなんて訳が分からない。

「えっと・・・ここはアメリカで間違いないですよね?」

「アメリカってなんだい?」


まさか自分たちの住んで居る国すら分からないのか・・・?

「・・・じゃあ、ここはなんて国ですか?」

「リエール王国さ、そんな事も知らないのかい?」

リエール王国?そんな国名は聞いた事がないし、仮にその王国とやらに居るのだとしたら


一体どうやってぼくはアメリカを出た?

しかもこの巨大な装甲車に乗ったままにだ。

「あ、ありがとうございました・・・」

呆然としてしまう、いくらなんでも出国しているとは思わなかった。


「そんな事より兄ちゃんよ、この乗り物はなんだい!」

おじさんが目を輝かせながら興奮気味に聞いてくる。

「特注の装甲車ですよ、見たことがなくても不思議ではありませんけど」

一般人ならば装甲車なんて見たことがなくても不思議ではない。


むしろ見たことがない人の方が多いだろう。

ぼくがそんな装甲車に乗っているのだって家が裕福だからだ。

この装甲車は標準的な装甲車の大きさを遥かに超えている。

アメリカ軍のストライカー装甲車と比べて全長は10倍近い大きさの差がある。


WWⅡで有名なドイツ軍の巨大戦車、マウスと比べても全長が7倍程度の大きさを誇っている。

大きさだけでは一見大きすぎて役に立ちそうもないが、あらゆる面で高い性能を誇示している。

この装甲車に搭載している砲火器は戦車のそれと比べてもこちらが圧倒する事だろう。

大きい故に車両に装備されている数も違えば質も違う。


現状では試験中の配備前の最新鋭装備を惜しげもなく搭載している。

移動する要塞と表して構わないと思っている。

防弾性も極めて高いはずだ、至近距離でAPFSDSの様な対装甲貫通に特化した砲弾を

複数の戦車から掃射されても弾く事は容易で、追加外装を貫く事すら困難だろう。


あれこれと注文をつけてうちのグループ企業に開発して貰っただけなので詳しい事は分からないが

さまざまな関連企業にいろいろと注力して貰った特注の車両なのだ。

恐らくその開発費の高さから高額過ぎてぼくの持っている1台しか存在しないだろう。

故に名前もぼくが決めたモノが正式かつ制式なコードネームとして登録されている。


その名もDisaster( ディザスター)、災害や惨事、厄災などと言った意味合いを持つ言葉だ。

この装甲車の前にはいかなる障害もない、ただ薙ぎ払うのみだ。

などとカッコつけて名付けてしまった訳だ、少しばかり後悔している。

そしてこの車両にはもう一つ特徴がある。


それはAIを搭載している事、それも人間と話して居るのではないかと錯覚を覚える完成度だ。

車両の操縦はもちろんの事、火器管制や通信系、あらゆる操作を行う事ができる。

先ほどから手動で操縦しているのはこのAIがなんらかのトラブルでダウンして居るからだ。

再起動する事など思い付かず、ここまで手動で移動してきてしまった訳だ。


「おじさん、すみませんがこの町のどこかに開けた場所はありませんか?」

「開けた場所か・・・そうだな、ギルドの裏手なら大分余裕があると思うよ」

「ありがとうございます。この装甲車を停められるくらいだと嬉しいんですけどね・・・」

まぁこの体躯をした装甲車を停車できる程の余地はないかもしれないな


「うーん、このくらいならたぶん大丈夫だと思うぜ兄ちゃん」

「それはありがたいです。それでそのギルドと言うのはどこにあるのでしょうか?」

「ギルドはこの道をまっすぐ行って突き当たりを右に曲がった先にあるよ、まぁ行けば分かるさ」

「分かりました。ありがとうございました。」


そう別れを告げて教えて貰った道を走らせたらすぐに見つかった。

ご丁寧に看板を掲げてくれて居たのだ。

許可を取った方が良いか悩んだが結局ギルドの前に停車したら迷惑になるかも知れない

とりあえずはギルドの裏手の余地に停車させて貰った。


「さて、停車は出来たし・・・そうだ、Aigis(アイギス)を再起動させないとな」

Aigis(アイギス)とはこのDisaster(ディザスター)に搭載されたAIの名称で、ギリシャ神話に登場する盾を意味する言葉だ。

思い出したぼくは車両中央のコアユニット保護部の密閉ハッチを開放して中に潜り込む

約2㎡ほどのハッチを潜ると7㎥程の開けた空間に出る。


ぶるっと寒気を感じる、いつ来てもここは肌寒い。

コアユニットは膨大なデータを扱う為、常時排熱を行いユニットの温度を保つ必要がある。

故にコアユニット保護部は常に一定に温度を保っているのだ。

制御盤の前まで進みユニットを再起動させる。


Now rebooting.---

Now rebooting.------

Now rebooting.---------

Was rebooted.


どうやら無事にAigis(アイギス)を再起動する事が出来た様だ。

何故ダウンしたのか分からないがどうやら壊れては居ないみたいで安心した。

さすがにこの巨大な車両のすべてをぼく1人で制御するのは無理がある。

続けて損傷や異常がないかを調べ始める様だ。


Checking file system on Main core.---

Checking file system on Main core.------

Checking file system on Main core.---------

all system normally.


どうやら不具合はなかった様だ、これで本来の機能を復帰させた事になる。

「アイギス、聞こえているな」

ぼくは早速Aigis(アイギス)に問いかける。

「アイギス再起動に成功しました。ロック解除をしてください。」


すっかり忘れていた、アイギスは起動、再起動をした際やロックを掛けてスリープさせた際に

アイギスを復帰させた際にロック解除を行わなければ最低限の事しか出来ないのだ。

「アイギス、ロック解除、アルフォンス・フォン・キャスター」

この3つの言葉、アイギスを指し、実行するコマンドを述べ、管理者の氏名を示す。


これで誰が何をさせるかを伝えると当時に声に出す事で声紋認証を兼ねている。

また保護部内にある複数のセンサーから立体データや心音などの個人情報をスキャンする。

このチェックによりアイギスのロックが解除される。

当然これは起動、あるいは再起動などの直接コアユニット保護部に入らねばならい時だけだ。


通常スリープなどのロック状態から復帰する際は声紋認証と英数から成るパスコードを入力する事で解除する。

その辺りはユーザーにある程度は優しい設計になってると言って良いだろう。

「ロック解除、及びマスターを確認、承認しました。」

これで完全に復帰が完了したはずだ。


「マスター!酷いじゃないですか!!」

それと同時にぼく1人しか居ないはずの空間に女の子の声が響く、それも怒っているのだ。

「ごめんごめん、再起動させる事をすっかり忘れてたよ」

ぼくは眼前のコアに向かって返す。


「まったく、私がダウンしてから16時間32分28秒も放置するなんて信じられません!!」

恐ろしく正確な時間を述べながら激怒しているのはこの装甲車のコア、AIのAigis(アイギス)だ。

決してぼくの頭がどうにかしてしまった訳ではない事をご理解頂きたい。

「本当に忘れてたんだよ・・・うっかりしてたって奴だね」


「これだからマスターは女の子からモテないんです。自業自得です。」

「おいおい、それとこれとは別じゃないか!」

あまりにも失礼なアイギスに反論する。

「これだけ私を放置していた人が何を言いますかっ」


「そ、それはしょうがないじゃないか、目が覚めたら知らない場所に居たんだから」

「知らない場所・・・?そういえばさっきからGPSデータがまったく受信できません。」

「それはやばいな、現在位置が分からないからGPSを当てにしてたんだけど・・・」

想定外だ、アイギスを再起動すればGPSデータを更新して現在位置を把握できると思ってたんだけどな


「他のデータは?何か現在位置特定に繋がるモノはないか?」

GPSで測位できないのだから期待はできないが・・・

「駄目です。我がグループ及び米軍、民間の衛星などにアクセスを試みましたが一切の反応なし」

「民間はともかくうちや軍の衛星の類も駄目か・・・」


「はい、ノーシグナルです。一切外部との接点がありません。」

これはいよいよやばい事になってきた、どこにもアクセスできないとなるとかなりの僻地の可能性がある。

「えっと・・・じゃあリエール王国という国を検索」

「リエール王国をデータバンクより検索中......ヒットなし、その様な国は地球上に存在しません。」


おいおい、そんなはずないだろう、存在しない?

もしかしてあのおじさんに騙されたのだろうか・・・

不安と焦りだけが際限なくぼくに降り注ぐ。

「あれだ、最後に測位してた位置はどこが記録されてる?」


「最終測位地はアメリカ合衆国ニューヨーク州ロチェスター上空約18万feet地点です。」

「は・・・?18万feetだって?」

「はい、18万feetの位置です。」

ありえないだろう、それは成層圏の領域じゃないか、それに地上から約55kmの高さだぞ・・・


「間違いないのか?さすがにこの巨大な車両がそんな場所のそんな高さに居るなんておかしいだろう」

「間違いありません、通常通り世界標準及び我がグループ並びに軍のリアルタイムデータを基に測位した記録です。」

Disaster( ディザスター)の大きさや重量、そしてロチェスターと言う場所から考えて上空18万feet不可能だ。

「流石にそれは無理がないかなアイギス?」


「常識的に考えればありえませんが事実あらゆる観測データからはその地点で間違いないと示されています。」

「その観測元のデータに誤差があるんじゃないのか?」

「100を超える観測元が一斉に誤差を生んだデータを観測するの方が不自然ではありませんか?」

うぐ・・・確かにそうだ、民間だけならともかくうちの観測データと軍のものまで誤差が生まれて1点を示すなんておかしい


「うーん・・・訳が分からない、仮にその地点に居たとしてなんでこんな見ず知らずの場所にぼくらは居るんだ?」

「不明です。最後に記録されたロチェスター上空18万feetの地点で観測された後のデータはありません。」

一瞬でこんな知らない場所に飛ばされたとでも言うのか?

馬鹿げてる、そんな安物のSF映画じゃないんだから今時そんなものでは小学生だって笑いはしない。


「そうか、分かった、とりあえずぼくはこの場所にディザスターを駐車させる許可を貰って来るからぼくが出たらエアロックを頼むよ」

「了解しました。お早いお帰りを待ってるですよマスター」

なんだか後半声音が低かった様な気がしないでもない、忘れてたのをまだ怒ってるのだろうか

何はともあれまた怒られたらたまらないのでぼくはギルドへ駐車の許可を向かう為にディザスターを降りた。

感想をお待ちしてます。

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