表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

夢と親友と嫌いなアイツ

 夢を見ていた。

 とても暖かで、明るい光に包まれていて。

 心地よかった。

 ずっとずっと、そこに居たかった。


 そして……彼が、いた。


 顔はわからない。

 背丈もわからない。なにせ、私の前の席に座って、私を見てる。

 けれど、これだけはわかった。


 私が、好きなんだなって。


 ずっと飽きないのかなと思うくらい、私を眺めていた。

 そんなに、見られると……こっちが照れてしまう。

 思わず視線を逸らすと。

「くすっ」

 彼が笑った。

「ちょ、どうして笑うのっ」

「だって、可愛いんだもん」

 さも当然と言う感じで、彼は言う。

「なっ……」


「ずっとずっと、こうしていられるだけで、僕は幸せだよ、サナ」


 幸せそうな言葉を残して、私は目が覚めた。



 じりりりりりりり!!

 けたたましい目覚ましの音。

「ん、んー」

 もぞもぞと手だけを伸ばして、憎らしげに目覚ましを止めた。

 また布団の中に入る。

 もう一度、あの夢に戻りたかった。

 けど、それは無理だった。

「沙奈、早く起きないと、学校、遅刻しちゃうわよぉー」

「ふあーい」

 母さんの声に起こされて、私はやっと布団から出てきた。


「で、その夢の彼って、どんな人だったんだ?」

 ショートカットの親友、秋風あきかぜ有理ゆうりが歩きながら、尋ねてくる。

 ちょっと背が高くて、大人びてて。凛としてるから男子だけでなく、女子にも人気がある自慢の親友だ。

「ぜんぜん、覚えてないの。というか……その顔ちゃんと見たのかも、よくわかんないの」

「残念ですわね……もしかしたら、探したら見つかったかもしれませんのに」

 こちらはおっとりしている如月きさらぎはるか

 長めの髪をゆるく、二つにして留めている。こう見えても芯はしっかりしていて、しかも良い所のお嬢様だったりする。

 そんな癒し系の遥に、どれだけ救われたか。

 がんっ!!

 目の前の電柱に衝突してしまった。

 ダメなんだよね、私。

 いつもこう。

 考え事すると、つい、周りのことがおろそかになってしまう。

 私の名は、たちばな沙奈さな

 中学2年生。

 学校生活にも慣れてきて、そろそろ……その、彼氏とか欲しいなーなんて思ってしまう。

 クラスの女子は、殆ど、彼氏彼女の話で持ちきりだ。

 だから……というわけでもないのだが、やっぱり、気になってしまう。


 恋をしたら、私は、変われるんだろうか?

 恋って、楽しいんだろうか?


「そんな沙奈に、恋人なんて、まだまだ先なんじゃないか?」

「本当のこと言ったら、ダメですわ、有理」

 そう思っていたら、容赦ない親友達の声がかかった。

「ひ、酷いっ!! そこまで言わなくても……」

「そうそう、見事にそこの電柱に顔をぶつけるなんて、ある意味、希少動物だよな。絶滅危惧種?」

 そこに現れたのは、私の家の隣に住んでる……。

結城ゆうきあらた!!」

「やだなあ、フルネームで呼ばないでよ。照れるじゃんか」

 楽しそうに頭をかきつつ、照れた振りをする新。そいつに私は重い鞄アタックをかましてやった。

「ぐふっ」

「自業自得。地獄に落ちろっ!」

「酷いな、沙奈。もう少し優しくしてくれたって、いいだろ?」

「誰が、あんたを、やさしく、するってのよっ!!」

 もう一度、鞄アタックをしようとして……避けられた。

「セイントは、一度見た技は二度と通用しないんだぞ」

「新君、また新しいアニメ、みたのですね……」

「そのようだ……」

 ぽつりと呟く親友達をよそに、私はもう一度、天誅を与えるべく、鞄を振り回す。

「逃げるな、新っ!!」

「やーだよっ!! そんなデカブツ、二度と喰らうもんか」

 これがいつもの日常。

 いつもの登校風景。

 私は、このとき、これっぽっちも感じていなかった。

 そんな、新のことを……好きになるなんて、ちっとも。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ