落とし物.その八
お願いします。
異世界への行き来を管理するとある施設の一角にそこはある。
‘異世界落とし物お預かりセンター’
そこでは今日も様々な出来事がおきる。さて、今回は一体どんなことが起きるのでしょうか?
「突然ですが、皆さんにご報告があります」
「んあ? どうした急に」
「なんにゃ、なんにゃ?」
秀はひと呼吸おいて心を落ち着かせる。
「実は・・・・・・僕に彼女が出来ました!!」
「「・・・・・・・・・・」」
秀の一言で部屋の中が静まり返る。二人共ポカーンとした顔で秀を見ている。
「・・・・・・あれ? 皆さん? もしもーし」
あれ? 何でだんだん悲しそうな顔つきになってるの?
「秀・・・・今まで気づいてやれなくてごめんな」
「そこまで深刻になっているなんて・・・・なんてことにゃ」
何を言ってるんでしょうかこの二人は。
「「秀病院に行こう。今すぐに!!」」
「何でですか!!」
どこをどうしたらそんな答えが帰ってくるんだよ!! しかも、病院ってどういうことですか!?
「何でって、そんなに深刻な幻覚を見るようになっちまったんだ。もう病院しかないだろ」
「そうにゃ、秀くん。大丈夫、私たちがついて行ってあげるから」
「お二人共どこまで僕を惨めな奴だと思ってるんですか!!? 流石に泣きますよ!!」
っていうか、もう泣きそうだけどな!! ケイベルグさんはとにかくジェシカさんにそう言われるともう、ブレイクハートどころじゃないんだが。
「違いますよ!! 今日は何の日か知らないんですか?」
「え、何かあったかにゃ?」
「さぁ、分からねぇな?」
どうやらこの二人は今日がどういう日なのかを覚えていないようだ。
「今日は四月一日、エイプリルフールですよ!」
そう言うと二人は「あー・・・・」と手を叩いた。結構思い切った嘘をついたのに全部無駄だったようだ。そして、俺の心に新たな傷がまた一つ。
「そういや今日はそんな日だったな。すっかり忘れてた」
「なんにゃ、そういうことか。はぁ~びっくりした」
「はぁ~、やっぱりやるんじゃなかった・・・・」
たまには二人を驚かせてやろうと思ったが、逆にこちらが驚かされてしまった。いろんな意味で・・・・。
「エイプリルフールって確か嘘をついてもいい日なんだっけかにゃ?」
「はい。毎年四月一日はどんな嘘をついても許されるっていうのがエイプリルフールです」
「まぁつってもそんな風習があるのはこの世界だけだけどな」
そう、エイプリルフールは他の世界にはない。なのでほかの世界で嘘をつくと只の嘘つき者になってしまうので注意しなければならない。
「いや、そうなんですけど・・・・でもお二人共こちらの世界に来て長いですし、覚えてるかなぁと思ったんですよ」
「まぁ、知ってはいたけど実際に嘘つかれたことないからな」
「確かににゃ。大人になってまで嘘ついてはしゃぐのも・・・・にゃあ・・・・」
ちくしょおおおおおおおお!! なんでこういうところはこの二人大人なんだよ。
「すいませんでした・・・・」
「にゃはははは。別に謝らなくてもいいけどにゃ」
「あ、じゃあついでだから俺も嘘つこうかな」
ケイベルグさん、ついでにつける嘘ってなんだろう。
「なんにゃ?」
「実は、この部屋の中に世界一つ丸々滅ぼすことができるほどの力を持ったすごい物が保管されている」
「ええ~なんですかそれ~」
「もっさん、もうちょっと面白い嘘ついてにゃー」
ケイベルグさんにしては単純な嘘をついたな。もっと、ひねった感じでくるかと思ったんだけど。
「ははは・・・・うん、まぁ・・・・そうだな」
え? 何だそのぎこちない感じ。っていうか何故、目をそらす。
「嘘だったらよかったんだけどな・・・・」
「「・・・・・・・・え?」」
ケイベルグさん、今なんて言った? 嘘だったらよかった?
「け、ケイベルグさん? それは、嘘なんですよね?」
「ご想像にお任せします・・・・」
「も、もっさん? 何でそんなに声のトーンが低いのにゃ?」
「詳しくはWEBで・・・・」
ま、まさかとは思うが本当にそんなものがあるのだろうか? いや、仮にもし本当にあったなら洒落じゃすまないのだが。
「エイプリルフールって嘘をついても許される日だけど、別に嘘じゃないこと言っても問題は無いよね・・・・」
いや、その通りだけれども!! こんな時にそんなこと言わなくてもいいんじゃないか!?
「マジか・・・・おい、マジなのか!! ケイベルグさん!!」
「・・・・・・・・」
目をそらすなーーーーーー!! こっち見ろこのじじぃ!!
「もっさんの顔が怖いにゃ・・・・」
詰め寄る俺をヒラリとかわしケイベルグさんは急に座っていた椅子から立ち上がった。そして、部屋の壁際まで行くとある部分を指差した。
「ほら、ここ。ここだけ壁の色が若干違うだろ?」
そう言われて見てみると確かに若干ではあるが色が違う部分があった。しかも、何故かその部分は綺麗な正方形型になっている。
「ほ、本当だ。全然気付かなかった」
「いつ言おうか迷ってたんだが・・・・ここにその道具が埋まってる。それを受け取った当時にちょっといろいろあってな。最終的にここに封印した」
「何でここに封印したにゃ!!!?」
ジェシカさんの言う通りである。よりにもよってなぜここに!? しかもちょっと色々ってなんだよ!!
「いやまぁそれしかなくてな・・・・。まぁ、とりあえずそういうことだからよろしく。あ、ちなみにこのことは他の奴らには言うなよ。何が起こるかわからんからな」
「「・・・・・・・・」」
こうして、俺とジェシカさんは嘘をついてもいい日に知りたくなかった真実を知ることになってしまった。
「秀くん」
「はい、なんでしょう」
「嘘って時には大事なんだね」
「そうですね・・・・」
グダグダですが今回はこの辺で。あと、もしよろしければなんですが皆さんからこんな落とし物はどうだろうみたいな意見も募集しております。
それが期待通りに書けるかは分かりませんが、それでもいいよという方がいましたら是非お願いいたします。