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落とし物.その十二(地獄のお祭り編・一日目)

今回は近づいてきたあの祭典がモチーフです。相変わらずグダグダですが・・・・。

異世界への行き来を管理するとある施設の一角にそこはある。


‘異世界落とし物お預かりセンター’


今回も彼らには様々な出来事が起こります。さて、今回は一体どんな出来事が起こるのでしょうか。






今日は、いよいよ迫ってきた大晦日より少し手前の十二月二十八日だ。


「もうすぐ、今年も終わりですねー」


「そうだにゃー。何かあっという間だったにゃ」


「本当、歳をとると一年が早く感じるな・・・・」


そんな何気ない会話をしながら落とし物センターの面々は電車の中で揺られていた。

現在時刻は朝の八時。いつも彼らが施設に出勤する時間よりも少し早めの時間であった。

そんな時間になぜ彼らが電車に揺られているのかというと・・・・


「まさか、俺達が駆り出されるとはな・・・・」


「ケイベルグさんのくじ運が悪いせいでしょ」


「まぁ、まぁ秀くん。ところで私たちが今から行く‘コミックパラダイス’ってどんなイベントなのかにゃ?」


コミックパラダイス。世界中から漫画・アニメその他諸々が大好きな人達が大勢集まる年に二回のビッグイベント。同人誌と呼ばれる二次創作やオリジナルの本を販売・配布したり、アニメーション会社やゲーム会社などの企業団体がこのイベント限定のグッズなどをいろいろ販売したりするらしい。まさに、日本のサブカルチャーが大好きな人たちのお祭りである。

毎年開催されるたびに来場者数が増え、何度もニュースにとりあげられていた。今ではこのイベントのためだけにこちらの世界に旅行にくる異世界人の方々もいて様々な人種が入り乱れているらしい。

そんな、ビッグイベントに何故落とし物センターの面々が向かっているのかというと、数日前落とし物センターの本部にこのイベントの主催者の団体から連絡があり人手が足りなく、落とし物お預かり所の人員を少しばかり派遣してくれないかとお願いがあったのだ。

そんな訳で一度、各落とし物センターの代表者を集めて有志を募ったのだが誰も手を上げず、その結果くじびぎで決めることになりそして運悪くケイベルグが当たりくじを引いたのであった。


「まぁ、あれだろ。簡単に言えばオタクのお祭りみたいなもんだろ?」


「大まかに言うとそういう感じですかね」


「オタクってあの頭にバンダナ巻いてチェックのシャツをズボンに入れてリュックをしょってる人たちのことかにゃ?」


「ジェシカさんのオタクのイメージがかなり古いんですが・・・・」


「そうなのかにゃ?」







そんなこんなで、やっとこさ目的地に着いた面々は着いて早々いきなり驚愕の光景を見ることになった。駅から一歩出た途端、周りには人、人、そして人である。かつてこれほど人の多い場所に出くわしたことがあっただろうかというほどで一歩進むのにも一苦労である。


「な、なんなのにゃこの人の数は・・・・・・」


「っていうか全然前に進めないんですけど!!」


「あ~・・・・気持ち悪くなってきた・・・・」


早速、前途多難な面々であった。



数十分後



やっとこさ駅前から抜け出せたものの、精神的にも肉体的にも大ダメージを喰らってしまった。


「まだ始まってないのになんでみんなこんなに並んでるのにゃ・・・・」


「さぁな・・・・。そこまでしても欲しいモノがあるんだろ」


「そ、そうなんですかね・・・・」


そこから少し進んでいくと、目の前には大きな建築物が見えてきた。ここが今回のイベントの会場なのだろう。三角形を逆さまにした形が四つ連なって出来ている何とも独創的な建物がそこにはあった。


「すごいでかいにゃ!! なんかすごいにゃ!!」


ジェシカは目をキラキラさせながらその建物を見上げた。


「確かにでかいですけど・・・・これだけの人数入るんですかね?」


後ろを振り向けば小さな国一つ分の人口はあるんじゃないかというほどの人がいくつも列を作っていた。

よくみれば人間だけではなく異世界から来た種族もたくさんその列に並んでいた。


「この資料によるとなんでも拡張システムを使ってるらしいぞ。十一個も使ってれば充分入るんじゃねぇか」


なるほど、拡張システムか。空間を捻じ曲げその名の通り拡張する。詳しい原理は難しくて分からないのだが、今では結構簡単に手に入るものだったりもする。



スッタフ入口と書いてある看板にそって歩いていると何やら受付らしきものが見えてきた。


「あのー・・・・すいません。本日落とし物センターから手伝いとして来たんですけど」


「あっ、はい。少々お待ちください」


スタッフの人が奥の方へと誰かを呼びに行った。









少しして、会場の中にある控え室に案内された面々は支給された制服に着替えていた。



「これが俺達の着るユニフォームか」


「おお、なんかそれっぽい感じだにゃ!!」


「とりあえずこれを着て僕達は届けられてきた落とし物の受け取り、保管。それから定期的にローテーションで巡回して落とし物がないかの確認をすればいいということです」


「う~ん。なんていうかやっぱりどんな形であれイベントに参加するっていうのはワクワクするのにゃ!!」


「そうか~? 俺はどうも嫌な予感しかしないんだが」


「変なこと言わないでくださいよ・・・・。さぁ、あと少しで開場みたいですよ。準備をしましょう」


この時、ケイベルグの嫌な予感が見事的中するなんて他の二人は思っていなかった・・・・。





会場内にアナウンスが流れどこからともなく拍手が沸き起こった。


「なんで拍手するのかにゃ?」


「「さぁ?」」



‘落とし物お預かり所’とテーブルの前に紙を貼り椅子に座っていつものようにポケーっとしている三人。始まったばかりなのでまだ何も起きないだろうとペットボトルのお茶をすすっていた。


「何か、場所が変わっただけでいつもと同じ感じだにゃ」


「基本、俺達はこのスタイルが主流だからな」


「ははははは・・・・・・」


そんないつもと変わらないのほほんとした会話をしていると徐々に入場者のものであろう足音が聞こえてきた。

やはり、人数が人数なだけにその大きさも凄まじいものだった。


「おお、ついに来ましたよ!!」


「地割れみてぇな音しないか!?」


「す、すごいのにゃ!!」


そして会場内は一気に騒がしくなった。



「走らないでくださーい!! 危険ですから走らないでくださーい!! そこーーーー!! 走るなぁああああああぁぁぁあああ!!」


「エスカレータは歩かないでくださーい!! あんまり急ぎすぎるとこの子が皆さんをお宝の在処に連れて行く前に力尽きてしまいますよーーーー!!」


なんじゃそりゃ・・・・。


「皆さん慌てずにゆっくり進んでくださーーーい!! 前の人に続いてゆっくり進んで・・・・そこの人!! 前の人を押さないでくださーーい!!」


先程までの静けさはどこえやら、一気に会場が修羅場へと変貌をとげた。

広かったスペースは直ぐに人で埋まりどんどん隙間がなくなっていく。まるで雪崩のように人が押し寄せ瞬く間に会場内は溢れかえるほどの人で埋め尽くされた。


「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・」


なにこれ。

あまりの迫力に三人共口を開け呆然となる。これは、最早イベントなんて規模に収まっているのだろうか? 

そう思っているとき、


「あのー・・・・すいません」


「へ? は、はい!! どうかしましたか?」


そこにいたのは、背中に翼の生えた鳥人の女性だった。


「さっきこれを拾ったんですが、預かってもらってもいいですか?」


そう言って受け渡されたのはどこにでもありそうな長財布だった。黒色の皮でできたものでまだ見た目的には新しそうなものだった。


「あ、あぁ分かりました。わざわざありがとうございます」


財布を受け取った秀は保管ボックスに財布を入れると預かりリストに‘黒い長財布’と記入した。


「それじゃあ、お願いします」


そう言って鳥人の女性はそのまま飛んでいってしまった。

その直後、


「そこの鳥人族の方!! 会場内では飛行禁止ですよ!! 直ぐに降りてください!!」


「す、すいませ~ん!!」


とスタッフからお叱りを受けていた。







その後も、ちょくちょく落とし物は届けられてきた。


‘ペンダント’

‘指輪’

‘何か禍々しいオーラを放つ髪飾り’

‘謎の液体の入った瓶’

‘光る石のついた首飾り’

‘靴(片方だけ)

‘最新の携帯タブレット’

‘ゲーム機’

などなど、短時間でこれだけの落とし物がこの受付に届けられた。

届けぬしも様々で、ラミアのような亜人種の方や最新型のアンドロイドロボ。ケンタウロス族やアマゾネス族などの珍しい種族の人たちも来ていた。


「なぁ、秀」


「はい、なんでしょう?」


「オタクっていろんな世界にいるんだな」


「まぁ、日本のサブカルチャーは有名ですし」


「なるほどにゃ~」





そろそろ巡回しなければならない時間が近づいてきた。

正直な話ここから出たくない。いや、出てはいけないと三人は思っているのだが仕事なのでそういう訳にもいかない。


「よし、覚悟を決めるか」


「ですね」


「じゃあ、まずは誰から行くかにゃ?」


・・・・・・・・・・・ちーん。


「ジャンケンで決めよう!!」


「それがいいですね」


「じゃあ、いくにゃ!! 最初はグー!! ジャンケン・・・・!!」




結果、


「にゃははははー!! それじゃあ行ってらっしゃいなのニャ~!!」


「くっ!! この中に突っ込まなくてはいけないなんて・・・・」


「しょうがないですよ、行きましょうケイベルグさん」


ジェシカがひとり勝ちし、最初の巡回は秀とケイベルグが行くことになった。


「つってもさーこれ動けんのか?」


「さ、さぁ・・・・」


目の前には人の壁、壁そして壁である。まずここから抜け出すのもかなり大変そうなのに巡回なんてできるのであろうかと二人は疑問に思わずにはいられないのであった。


「よっと・・・・あ、すいませ・・・・うおっ!!」


「これは!! 落とし物なんて見つけるどころじゃねぇぞ!! 下手すりゃ俺らの命を落とすわ!!」


人の間に挟まれながら少しづつ前に進んでいく。進むといっても一歩踏み出すのに数秒かかるのだが・・・・。


「ケイベルグさん!! 大丈夫・・・・むぎゅ!! く、苦しい・・・・」


「おい、秀!! こりゃだっめだ!! 一度もど・・・・にゅああぁあぁぁぁあ!!」


「ケイベルグさん!? ケイベルグさ・・・・・・どぅわぁぁぁぁああああ!!」


急に動き出した人の波に飲み込まれた二人は離れ離れになりそのまま流されていった。


「それにしてもすごい人だにゃ~・・・・ふあ~~」


そんな二人の事など知らずジェシカは大きなあくびを一つするのであった。





「た、ただいま戻りました・・・・」


「うぅ・・・・もう、お婿に行けない」



少ししてボロボロになった秀とケイベルグが受付に帰ってきた。


「二人共一体何があったのにゃ・・・・」


「「この世の地獄を見ました・・・・」」


相当すごい目にあったらしい。




その後、ジェシカも巡回に行ったのだが・・・・


「・・・・・・・・・・」


「ジェシカさん、顔、顔怖い。どんなか・・・・見たことないよそんな顔してる女の人」


お察しください・・・・。



そんなこんなでコミックパラダイス一日目は何とか終了することができた。

本日の落とし物数。計二十四個。こんな数今まで見たこともなかったのである意味感激してしまう。


「今日だけでこれだけの落とし物が・・・・」


「後、二日あるんだよな・・・・これ」


「なんてことにゃ・・・・」



初日でいきなりボロボロになった三人。果たしてあと二日、彼らは無事乗り切ることができるのか!?



続く!!





すいません。こんなノリで続きます。

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