落とし物.その十一
お願いします。
異世界への行き来を管理するとある施設の一角にそこはある。
‘異世界落とし物お預かりセンター’
そこでは今日も様々な出来事が起きる。さて、今回は一体どんなことが起きるのでしょうか。
「はい、はい。わかりました。それじゃあお待ちしてますね」
‘ガチャリ’
「うにゃ? 秀くん、誰かから連絡かにゃ?」
「はい。ここに剣の落とし物が届いてないかっていう問い合わせでした」
「剣の落とし物かにゃ? そういえばうちいくつか預かってるもんにゃ」
「それで特徴を聞いてみたら、ここで預かってる剣と同じような感じの物があったんで直接確認に来てもらうことになりました。これから来るみたいですよ」
「そうなのかにゃ。じゃあ準備しとかないとにゃ」
ジェシカは剣の落とし物がまとめてあるところまで向かった。ちなみに今この落とし物お預かりセンターに届いてる剣は全部で三本である。
「秀くーん、その人の言ってた特徴ってどんな感じだったのかにゃ?」
「えーと、柄の部分に赤いひし形の模様がはいっていて、刃の部分が少しカーブしてる奴です」
「ふむふむ・・・・えーと、あ、これにゃ!!」
確かに剣の中に一つその特徴と全く同じものがあった。
ジェシカは柄の部分を掴むとその剣を持ち上げ取り出そうとした。
しかし、
「うにゃ? 何にゃこれ? 何か引っかかってるにゃ」
途中まで取り出せたのだが、刃の部分が何かに引っかかりなかなか取り出すことができない。
「ん~~!! 出てくるにゃ~!!」
ジェシカは無理やり引っ張り剣を取り出そうとする。すると、徐々に刃の部分が引っこ抜けてきた。
「あと少しにゃーー!」
全体重をかけ柄の部分を引っ張ったその時、
「うにゃ!?」
引っかかっていた部分が勢いよく抜け、ジェシカはそのまま後ろに思い切り倒れた。
あまりに勢いよく抜けたため、倒れた時に剣を思い切り投げ飛ばしてしまった。
‘ガシャァン’
剣は思い切り壁にぶつかり床に落ちた。
「いたたたた・・・・やっと抜けた・・・・にゃ!!」
「ジェシカさん、大丈夫ですか!? なんか今すごい音しましたけど・・・・」
「しゅ、秀くん! ど、どうしようにゃ!!」
「え?」
そう言ってジェシカが指を指した先には、柄の部分と刃の部分が境目で綺麗に折れてしまった剣が落ちていた。
「な・・・・・・なんじゃこりゃぁぁぁぁあああああ!!」
それから少しして
「うーっす。おはよーさーん」
ケイベルグが扉を開けて入ってきた。
「「・・・・・・・・・」」
「あ? どうしたお前ら? なんか元気ないな」
ジェシカと秀はテーブルに座り一緒に俯いていた。
「ケイベルグさん。どうしましょう・・・・」
「何が?」
「実は・・・・・・」
かくがくしかじか。秀はケイベルグにこれまでの出来事を説明した。
「ふむふむなるほど。ジェシカがこの剣を取りに行って、んで壊しちまったと」
「そうにゃ・・・・」
「で、今からこの剣の落とし主であろう奴がここに来ると」
「そうです・・・・」
「ん~~・・・・っていうか剣ってそんなに簡単に折れるものなのか?」
確かに剣って言えばもっと頑丈でなかなか壊れなさそうなイメージがある。まぁ、この剣はポッキリと折れたのだが・・・・。
「案外安物なんじゃねぇの」
「そ、そうでしょうか・・・・」
「折れたところも綺麗にポッキリいってるんだし、くっつけてごまかしちゃえよ」
「くっつける・・・・・・。はっ!! その手があったにゃ!!」
ええええええええええええ!! いいのか? 剣をくっつけるとかいいのか!?
「で、でもどうやってくっつけるんですか?」
「どうやってって・・・・そりゃあこれを使うんだよ」
そう言ってケイベルグが取り出したのは。
「アロ○アルファ~」←某、青い猫型のロボット風に。
その手に握られていたのは、瞬間接着剤の類の中では恐らく一番の知名度を誇るであろう黄色の細長い入れ物だった。
「え、ちょ、マジで? え、マジでそれでなんとかしようとしてます?」
「おお、マジだ」
「秀くん、アロ○アルファの威力をなめちゃいけないにゃ!!」
おお、マジか。マジでやる気なのか。いや、万能だよ。確かに、アロ○アロファは万能だよ。けどさ、折れた剣に使うことなんてまずないからね。
「とにかくその落とし主が来る前に早くくっつけちまおうぜ」
「ええ、アロ・・・・ええ~・・・・」
という訳で、秀たちは剣をアロ○アルファでくっつけることにした。
「秀、真っ直ぐな。真っ直ぐくっつけろよ」
柄の部分と刃の部分の折れ目にアロ○アロファをたっぷりと塗りくっつけようとする。
「いきますよ・・・・動かさな・・・・ちょ、ケイベルグさん柄の部分プルプルさせないでくださいよ!!」
「集中してるんだからしょうがないだろ!?」
途中で何度も微調節しながら徐々に近づいていく。
そして、
「はい! はいはいはいくっついた!」
「押さえて! そのまま、そのまま・・・・ジェシカ! ちょっと反対側からも押さえてやってくれ」
「こ、こうかにゃ?」
なんだこれ・・・・。
そして数分後・・・・。
「離しますよ・・・・。せーの」
柄を支えているケイベルグ以外が手を離す。
「は、大丈夫? 倒れてこない?」
「く、くっついたにゃ・・・・」
「成功だな」
秀たちは何とか剣をくっつけることに成功した。
「ちょっと軽く触ってみ」
言われてジェシカが刃の部分を軽く押してみる。
「だ、大丈夫にゃ。グラグラしないにゃ」
「よし。完璧にくっついたな」
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
「大丈夫だろ。多分・・・・」
それから少しして、
「すいませーん。先程連絡したものなんですけど」」
先程の電話の主がやってきた。
「き、来たにゃ!!」
「は、はーい!!」
今日の受付係である秀が受付へと向かう。
そこには、真っ赤な髪にいかにも鍛え抜かれた感じの体、鋭い目つきで体中のいたるところに傷をつけた大柄な男性が立っていた。
うわー・・・・マジかー・・・・。声聞いた感じだともっと優しそうな感じの人を想像したのに・・・・。
「お、お待たせしました。先程の剣の落とし物の問い合わせの方ですよね?」
「はい。あの、それで剣のほうは・・・・」
「い、今お持ちしますので少々お待ちください」
秀はダッシュで剣を取りに戻った。
「秀、いいか。落ち着いて対応するんだぞ」
「は、はい」
秀は剣を両腕で抱えて受付に戻った。もし、折ってしまったことがバレたらどうなるか考えただけでも嫌な汗が出てくる。
「お待たせしました。こちらになります」
カウンターの上に秀はゆっくりと剣を置いた。
「・・・・・・・・」
うっわー・・・・めっちゃ見てる。ガン見? え、ガン見ですか。これ、あ、バレるかもな。あ、バレるかもなこれ。
秀の心臓の音がどんどん早まっていく。
その時、不意に赤髪の男性は柄の部分を掴むと勢いよく剣を持ち上げた。
「うお!?」
そして、おもむろに目の前で剣を数回ふりはじめた。
「ふむ、この手になじむ感触。間違いないこれは俺の剣だ」
「え?」
「すみません、驚かせてしまいましたね。でも今ので確信しました。この剣は俺の持っていた剣です」
どうやら彼は今のすぶりでこの剣が自分のものであるかどうかを確かめていたようだ。
「そ、そうですか。それはよかったです。あ、それじゃあ返却の手続きがありますのでこちらの書類に必要事項を書いてもらっていいですか?」
「これですね。わかりました」
彼は差し出された書類にサラサラと必要事項を書いていく。
この文字の書き方は・・・・この人、ガッド世界の人だ。なるほど道理でこんなにがっしりとした体をしているわけだ。
「はい、これでいいですか?」
「そうですね。はい、大丈夫です」
秀は書類を確認し手続きを完了させた。ふとそこで、秀は気になっていたことを聞いてみた。
「ちなみにその剣ってどういったものなんですか?」
「この剣は自分の師匠である人が知り合いの職人に頼み込んで作ってくれたもので、俺の愛用の剣なんです」
うーわーーなんてこった・・・・。職人が作った割にはポッキリいきましたけどね。
チラッと後ろを見れば二人共、明後日の方向を見て気まずそうな顔をしていた。ケイベルグさんに至っては安物なんじゃないかとか言ってたからな。
「そ、そうなんですか」
「ええ、それでもうじき俺の世界で開かれる武闘大会に出場することが決まったんですが、やっぱり愛用しているこの剣じゃないとどうにもしっくりこなくてずっと探していたんです」
デデーーーーーーーーン!!!??
「え? その剣で・・・・出場するんですか?」
「はい!! この剣があれば俺は全力を出すことができますしね」
振り返って後ろを見てみれば、二人共首がねじ曲がるんじゃないかというほど顔をそらし顔中から嫌な汗を噴出させていた。
おいいいいいいいいい!! 逃げてんじゃねぇよ!! ちくしょうがああああああ!!
「あー・・・・その、でもあれじゃないですかね。あのー・・・・たまには自分の得意な武器以外で出てみるっていうのも・・・・面白いんじゃないですかね」←裏声
「まぁ、それも試してみる価値はあるかもしれませんがやはり自分はこの剣で一番をとりたいと思っていますので」
「そ、そうですか・・・・。ちなみにその武闘大会っていうのはどれくらい参加者的なのはいるんですか?」
「ざっと百人以上はいるでしょうね。様々な世界からいろんな猛者たちが集まりますからね」
デレーーーーーーン!!!
そんな大会にアロ○アルファでくっつけた剣で出場するなんて!!
「おっと、そろそろ修行に戻らなくてわ。すいません、俺はこれで失礼しますね。本当にありがとうございました。よかったら武闘大会も見に来て下さいね」
そう言って彼は走り去ってしまった。
「あ、あの!!」
行ってしまった・・・・・・。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
これは、大変なことになってしまったかもしれない。
それからさらに数日後、
「み、皆!! これ見てにゃ!!」
「ど、どうしたんですかジェシカさん!?」
ジェシカが新聞を持ってきてテーブルに突っ込んできた。その手には施設が発行している新聞が握られていた。
「ここ、ここ見てにゃ!!」
「あん? どれどれ・・・・」
そこには、一つの写真と共にこう書かれていた。
‘今回のガッド世界で開かれた武闘大会の優勝者は‘オルディア・ガイル’さん。幾日もの死闘を繰り広げ見事優勝を勝ち取った彼は「ここまでこれたのは師匠の教えと今までの努力のおかげです!! 本当にありがとうございました!!」と声高々にコメントしてくれた。写真は自らの愛用の剣を掲げ喜びの声をあげるオルディアさん’
「う、嘘・・・・・・」
「あの人優勝したのかよ!!」
写真に写っていた剣は紛れもなくあの時折れてしまった剣だった。
「はぁ~~~~~・・・・・・」
そして、三人は同じタイミングで同じ言葉を呟いた。
「アロ○アルファってすげーなー・・・・・・」
グダグダですいません。




