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落とし物.その一

ゆるーく気ままに書こうと思います。

今からはるか未来、とある時代のとある場所にその場所はあった。


昔は異世界と呼ばれる様々な異なる世界が存在するのではないかと考えられていた。自分が住んでいる世界とは全く違う世界に行けたらどんなに素敵だろうか。様々な人種、様々な食べ物、様々な景色。そういったものを見てみたいと夢見る人達がたくさんいた。

そして時代は流れに流れついにその夢が夢ではなく現実となった。

異なる世界の存在を確立し、その世界に行くことができるとんでもない技術が生み出されたのだ。

その技術が生み出された日から世界は一気に変わっていった。街に出れば獣耳や尻尾をつけたもふもふの獣人が普通に歩いているし、見たことのない乗り物や食物さらには魔法なんてものも現れ始めた。

最初の時こそ色んな事件や問題が起こって大変だったらしいが、様々な法律やルールが増え何とか解決したらしい。そのおかげで今となってはそんな光景が普通の日常となっている。


「それじゃあお願いします」


「はい、確かにお預かりします」


異世界への行き来を管理するとある施設の一角にそこはある。


‘異世界落し物お預かりセンター’


天井からぶら下がった少し大きめの看板にはそう書かれている。少し大きめの窓口には綺麗な透明のガラスが貼られており、そこから見える室内には様々なものが保管されていた。


「さてと、どうすっかなこれ・・・・」


先程そこで落し物を預かった一人の男が頭をポリポリと掻きながら考え込んでいた。

彼の名前は‘御影 秀’(24)。日本人でありこの職について四年ちょい。人あたりのよさそうなのほほんとした見た目と黒縁のメガネが印象的である。ちなみに未だ彼女はいとことがない。

そんな彼が今回受け取った落し物はこちら。

龍の形をした金色の豪華な装飾、その上に乗せられた透明な水晶玉。この二点であった。

落とすにしてはだいぶ大きい物のはずだが持ち主は気づかなかったのだろうか。


「にしてもこれ何に使うんだろう? やっぱりあれかな恒例の・・・・」


「占い師の水晶玉ってやつかにゃ?」


「うわあ!! って、いきなり出てこないでくださいよ!!」


秀の後ろから突然現れたのは一人の女性。彼女の名前は‘ジェシカ’。クリッとした丸い目に整った顔立ち、スタイルも良くショートカットの髪は明るい黄色をしている。この施設の男性職員からの人気も高く彼女にしたい女性ランキングでも上位の方にいるらしい。(あくまで噂で聞いただけだが・・・・)

だがしかし、彼女は人間ではない。そう、人間ではないのだ。頭には茶色い猫耳がそして後ろからは茶色と黄色のしましまの尻尾が生えている。そう、彼女は獣人なのだ。出身地はマウンダ世界。獣人族が多く住む世界だ。

つまりは異世界から来た住人である。こっちの世界に引っ越してきてこの職についたのだそう。ちなみに職務年数はジェシカさんの方が上で二年弱先輩である。


「にゃははは、ごめんごめん。そんなに驚くとは思ってなくて~。それより今度の落し物は一体どこから来たのかにゃ?」


「えーと、デルータ世界のところからですね。届け主は男性の方。道端に落ちていたそうです」


「こんなものが道端に落ちてるなんてある意味すごいにゃ・・・・」


「ですねー・・・・」


デルータ世界はわかりやすく言えば剣と魔法の世界といったところか。様々な人種が共同で暮らしており気候は穏やかで過ごしやすい。年に何度かお祭りやイベントがあり観光客などで賑わう時もある。

自分が一度行った時はちょうど武道大会が開催されており各世界の強者達が腕を競っていた。


「ところでジェシカさんこれどうしましょうか?」


「? どうするも何もここに保管するにゃ」


「そうじゃなくてどこに保管するのかってことですよ」


秀が後ろに向かって指を指す。そこには棚いっぱいに押し込まれた落し物の山。小さいものから大きいものまで色々なものが詰め込んである。


「あ~・・・・」


「っていうか皆さん物落としすぎじゃありません? こういうペンダントとかなら分かりますけど、ほらこれなんて剣ですよ剣!! しかも全然取りにこないし。もうそろそろ整理をしないと預かりきれなくなりますよ」


「にゃはははは・・・・」


ジェシカさんがごまかすように笑う。あ、これは面倒くさがってるな・・・・。


「う~す。今日も元気だなお前ら」


またしても後ろから誰かが声を掛けてきた。ジェシカさんとは違いきちんと扉を開けて中に入ってきたので僕達は後ろを振り向く。そこにいたのはヨボヨボのネルシャツに使い古した半ズボン、それからうっすら汚れたサンダルを履いたぶっちゃけ言えばおっさんだった。


「あ、おはようございます」


「おっはようなのにゃ~!!」


このおっさ・・・・いや、この人は僕らの上司である。名前は‘モリツ・ケイベルグ’出身はマークレイ世界の・・・・どこだっけ? まぁいいか。とにかくこの人もこの世界の出身者ではない。この職場では一番の先輩で職務年数は軽く二十年を超えているらしい。

見た目はもう寂れたおっさんという感じだ。クシャっとした髪に剃り残しのあるヒゲ、体もがっちりしてるというよりも少し細い感じがする。


「ん? 何か届いたのか」


「あぁ、そうなんです。デルータ世界から水晶玉とその置物みたいな物が」


「ふうん。デルータ世界からねぇ」


あ、ちなみにケイベルグさんの出身地であるマークレイ世界というのは科学ではなく魔法が飛躍的に進化した世界である。マークレイ出身者はどんな人でも魔法が使えるのだ。ほかの世界と比べてみても一段と魔法に関しては突飛しているそんな世界である。なのでもちろんこの人も魔法が使える。まぁ、この施設内では魔法の使用が禁止なので使っているところは見たことがないが。


「魔力を感じるから何か魔法系の道具かもなこれ」


「魔法系ですか」


「もっさんそういうのも分かるんだにゃ」


補足しておくとケイベルグさんはこういった魔法系のアイテムに関しては色々と詳しい。効力とか使い方とかそういったことは彼任せである。

後、ジェシカさんが言ったもっさんとは‘モリツ’のモとツだけを何故か小さくしてもっさんと呼んでいる。本人曰くこの方が呼びやすいらしい。ケイベルグさんも気にしてないし別にわざわざツッコムのも面倒なので聞き流している。


「いつくらいに来たんだこれ?」


「ついさっきですよ。それよりケイベルグさんそろそろ棚の整理をしませんか? このままじゃ落し物預かりきれなくなりますよ」


「あ~そうだな。また今度考えようか」


「そうそう。それがいいにゃ~」


この二人は本当に仕事やる気があるのか!! っていつの間にかお茶飲んでるし!! どこからだしやがった!


「秀も来いよ。お茶うまいぞ」


「ふにゃ~。今日も平和だにゃー・・・・」


そんなのほほんとした雰囲気を前に秀も怒る気力がなくなりテーブルにつこうとしたその時、


「すいません!!」


勢いよく受付のガラスにしがみつく一人の女性が現れた。紫色のフードを被っており目からしたは薄い布のようなもので隠されている。


「ど、どうしました!?」


「あ、あの落し物をしてしま・・・・うえっ!! げほっげほっ!!」


よっぽど慌てて来たのか話しながらむせこんでしまった。軽い涙目になりながらも女性は何とか息を整えこちらを見据えてきた。


「あの落し物をしてしまって、水晶玉と龍の台座なんですけど届いてませんか?」


「水晶玉と台座・・・・あっ!!」


そこで秀はピンときた。先程届けられてきたあれではないかと。お茶を飲んでいる二人のテーブルの上に置かれている水晶玉と台座を急いで取りに行く。


「おっどうした秀」


「落し物の持ち主が来た見たいです」


「お~よかったにゃー」


相変わらずのほほんとしている二人には目もくれず急いで受付に向かう。


「もしかして、これとこれですか?」


秀が持ってきたものを見て目を見開く女性。どうやら正解だったようだ。


「こ、これです!! ああよかった!! ありがとうございます!!」


よっぽど大事な物だったのか安心して泣きそうになってしまっている。

この落し物センターには色々な落し物がくるがここまで早く持ち主が来ることは非常に稀である。

秀自体も持ち主と対面するのは久しぶりだったため自分のことのように嬉しくなってしまった。


「よかったですね見つかって」


「はい!! 本当にありがとうございます!!」


「それじゃあ、すいませんがこちらの方に手続きの方をお願いします」


そう言って秀が出した紙に必要事項を書き込んでもらう。

ちなみに書くのは氏名と住所、それから受取日だけである。書く文字は世界ごとに全然違うので自分たちはそのままでは分からないが、翻訳機能の付いたコピー機にかければあっという間に読めるようになるので問題は無い。

彼女は見たことのない文字をサラサラと書いていく。そしてすべての必要事項が書き終わった紙を受け取りそのまま落し物を返却する。


「今度からは気をつけてくださいね」


「はい・・・・本当にご迷惑をおかけしました」


「ちなみにそれは何の水晶なんですか?」


「これは‘先読みの水晶’と言いまして私が見たいと思った相手の未来が見えるんです。私これでも占い師をやっていましてこれは大事な商売道具なんです。それに私の祖母の形見でもあって・・・・」


どうやら本当に大切な物だったらしい。いやはや見つかってよかったよかった。


「あ、すいません。私もう行かなくちゃ。それじゃあ、失礼します」


ぺこりとお辞儀し慌てて走っていく彼女。その両手には先ほどの水晶と台座が大事そうに抱えられていた。


「ふぅ~。無事、返還作業完了しました」


「おう、お疲れ」


「お疲れにゃー。ちなみにあれはなんだったのかにゃ?」


「何やら商売道具だったらしいですよ。占い師の方で祖母の形見でもあるって言ってました。見つかって滅茶苦茶喜んでましたよ」


「祖母の形見ってまたえらいもん落としやがったんだな」


そう苦笑いしながら言うケイベルグさん。


「確かににゃ。でも、まぁーとにかくよかったにゃー」


「あぁ、一件落着だな」


ズズッーとお茶をすする二人。


「って、二人は何もしてないでしょうが!!」


秀のツッコミが部屋に響き渡った。








グダっと行きます。よろしくお願いします。

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