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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第二章 「胎動」 第四十五話 「家族・絆」



「天眼 風をみる」


 第二章「胎動」 


 第四十五話 「家族・絆」



   お菊は、もうろうとした、意識の中、腹の激痛で


   一気に目が覚めた。


   こらえようとしても、「力」を入れる所が痛むのだから、


   こらえようが無い、


   少しずつ、息を吐こうとするが、呼吸をする動きだけで、


   激痛が走る。


  その度に息が止まるが、呼吸をしない訳にはいかず、


  痛みに耐えながら、出来るだけ、ゆっくりと


   細く、長く息をするような呼吸で耐える・・・、


   刻は、真夜中のようである、月明かりが、


   表の障子を照らしている、今日は満月のようだ。


   お菊の横には。やや子が居る。  


   その両隣を挟み込むように龍気とお鈴が寝ている。


    お菊は、腹の痛みとは別に違う痛みを「胸」に感じていた。  


   そっと胸を触ると、胸が張っている、 軽く揉んだだけで、

 

    「ビリッ」と胸にも痛みが走る。



お菊「お乳が溜まって張っているんだわ・・・、」  



   話には聞いていたが、もちろん初めての事で、


   どうしていいのか、わからない。


   そのうちに、乳首から、「ポタリ・ポタリ」と乳が漏れ出した。   


   辺りには、ほんのりと乳の香りが漂う、


   その香りに誘われてか、


   隣で寝ていた「やや子」が急に泣き出した。  


   「子」としての本能なのであろう、自分が生きてゆく為に


   「泣き」・「母」から、乳を貰おうとしているのである。


   その泣き声を聞いて、即座に両隣に寝ていた龍気とお鈴が、


   身構えるように飛び起きた。

 

   びっくりしたのは、お菊であったが、龍気はすぐに


   やや子を抱きかかえ、お鈴もすぐ横に来た。


   その光景を暗闇の中、感じ見ると、二人が、


   とても頼もしく思えた。



お菊「あなた・・・、やや子を抱かせてくださいな、


    「乳」をやります。」



   龍気は、やや子をお鈴に手渡すと、お菊の


   腰と背に両の手を伸ばし、静かに身を起こした。


   息をするだけで、痛むのであるから、身を起こされ


   腹に圧がかかれば、その痛みだけで気が


   遠くなりそうになる。


   泣きやまぬ、やや子を、お鈴から受け取ると、


   やや子の口元に乳首をあてがう。


   やや子は、反射的に乳首を頬張ると、


   その愛らしい小さな手で、乳を掴み、


   一心不乱に乳を吸い続けた。 


   自分が生きる為の「罪無き仕草」である。


   その当たり前の仕草が、お菊にとって、


    「死」に直面する痛みとなる。 


    お菊は、何かにすがるように、龍気の腕を


    握り締めていた、


   女の力といえども、通常では、考えられない程の


    「力」で龍気の腕を、我が爪が食い込み、


    血が滴る程、握りしめた。


    それでも、龍気の顔色は、何一つ変わりない。 


   それどころか、優しく静かに微笑んでいた


    その事に気がつく余裕が出来たのは、やや子が


    飲んでいた片乳の張りが無くなり、痛みが消えて


    きたからであった。  


   お菊は、一旦、やや子を乳首から離すと、


    もう片方の乳首を吸わせる。


    又、あの痛みが繰り返されたが、乳の張りが無くなれば、


    胸の痛みは、無くなる事が判ったので、


    少し「余裕」が出てきた。  

 

    相変わらず、龍気の腕を掴んでいたが、


    二回目は、爪を立てる事も無くなった。 


    やや子は、自ら、「げふっ」と息を吐き、満足して、


    またすぐに眠りについた。


    このやや子に出来る、最初の親孝行である。

  


お菊「あ、あなた・・・、ごめんなさい。」



   お菊は、その一言を言うのが、精一杯であった。



龍気「気にするな、お前の痛みに比べれば、何てことは無い。


    気にせず、寝ることじゃ、よいな」


お鈴「お母さん、やや子のおむつは、私が換えているから、


    心配しないで、ゆっくり寝てちょうだい」


お菊「あ、ありがと・・・、」



    その一言を搾り出すと、お菊は、また深い眠りについた・・・・。

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