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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第二章 「胎動」 第三十七話 「蒼玉」



「天眼 風をみる」


 第二章 胎動


 第三十七話  「蒼玉」



 永光寺の門前に、汗だくの源庵とお鈴が居た。 


 「洞窟」の中でみつけた「瑠璃色」に光る「石」を永光寺の住職、


 「道願」に見せる為である。



源庵「お鈴さん、ここが永光寺だね、」


お鈴「うん、そうだよ、ちょっと待っててね、「おじいちゃん」に話してくるから」


源庵「おじいちゃん? 」


お鈴「あ、ごめんなさい、私、道願和尚の事を「おじいちゃん」って、


    呼んでいるから、ここで、待っててね、」


源庵「うむ、分かった、よろしく頼むよ」



   源庵が、門前で待っていると、杉の木立に透明な羽を背負い、


   「つくつく法師」が鳴いている


   独特の鳴き方の「つくつく法師」であるが、この蝉は、


   最後の「ぼ~し」の鳴き方に特徴があり、少し訛っているようだ・・、


   源庵は、その「特徴」をすぐに「聞き取り」、「診察」している


   そこへ、お鈴が戻って来た。  


お鈴「源庵先生、本堂の方に来て、こっちよ」



  お鈴に連れられて、本堂の襖を開け、中に入ると、


 すでに道願が座っていた。



源庵「これは、失礼します、私は、源庵と申す医者です。


   貴方様がこちら、永光寺のご住職、道願殿ですか?」


道願「お初にお目にかかる、私が道願です。 話はお鈴から聞きました。


    洞窟で珍しい石をみつけたとか、早速ですが、


    拝見してもよろしいでしょうかな?」


源庵「もちろんでございます。 こちらがその石でございます」



    源庵が懐から瑠璃色に輝く石を取り出すと、それをそのまま、


    道願に手渡した。


    道願は、その石をひと目、見るなり



道願「ふむ、間違い無い。これは、「蒼玉」(あおだま・サファイアの意)じゃな」


源庵「蒼玉と申しましたが、その石には、果たしてどれぐらいの価値があるの


    でしょうか?」


道願「源庵殿と申されましたな、そなたは、それを聞いて


    どうするおつもりじゃ?」


源庵「はい、簡単に申せば、売ったお金で、長政殿の「考え」を「現実」


    にする為の「資金」にしたいと思っております」



    源庵の単純、且つ明朗な答えに、道願は思わず、笑みを見せた。


道願「ふむ、よろしい、源庵殿、この「蒼玉」の事、


    わしに一任出来ますかな、わしの昔の伝手つてを使い、


    より高く、この蒼玉サファイアを売り、長政殿が帰って来た時の役に


    立てようぞ、 よいかな? 源庵殿・・・。」



     悪意の無いまなこで道願がそう言うと、源庵は、


     道願のその目を「診察」していた


源庵(この目、純粋で悪意の無い意志を感じる。


    お鈴ちゃんや龍気殿が慕うのもうなずける・・、


    そして「深い」・・・、全てを見通している目だ・・、


    どことなく、長政殿と似ている感じがする。 


    うむ、「信用」しても良い目じゃ・・・、) 



    源庵の「診察」が終わった・・・。



源庵「分かりました、この蒼玉の事、全て道願殿にお任せいたします。


    なにとぞよろしくお願いいたします」


道願「ふむ、この老いぼれを信用して頂き、かたじけない。  


    源庵殿、そなたは、なかなか、思い切りの良いお方じゃの、


    そして、「物事」・「人」を「診る目」がある。


    その「診る目」、大切にしなされ、いつかそれが様々な「人」を助ける事


    になろう・・。」


源庵「は、はい。 ありがとうございます・・・。」


道願「お鈴さん、ひとつ、頼んでもよいかの?」


お鈴「なに? おじいちゃん」


道願「半兵衛殿に話をつけて欲しいのじゃが、全国に散っていた「草忍」が


    信濃に帰って来ているであろう。


    確か、北信濃の村上義清殿の助けを借り、新しい「しのびの里」を


    造っているはずじゃ、その「草忍」達にその洞窟を採掘させたいの


    じゃが、どうであろうか?」


お鈴「うん、大丈夫だと思うよ、みんな、「やる事が無い」ってぼやいていたし、


    なにより、長政様の役に立つ事だから、


    お頭(半兵衛の意)も喜ぶんじゃないかな。


    源庵先生、私、お頭の所に、向かってもいいかな?」


源庵「うん、帰りの道は、分かるから、さっそく、そのお頭と言う人の所に


    向かうといいよ、「待ちきれない」んだろ?」



     源庵は、そういうと、優しく微笑んだ。

 

    お鈴も何か長政の役に立ちたいと、常々思っていた。


     自分が見つけた「石」が、高く売れるとなれば、


    それが、長政の役に立つ。


    そう考えたら、居ても立っても、いられななくなったのである。



お鈴「源庵先生、ありがとう。じゃ~、さっそく、行ってくるね」



   と、言うが早いか、消えるのが早いか、お鈴の姿は、


   一瞬で消え去った。


   後には、「つくつく法師」の鳴き声が、本堂に入りこんで来た。



道願「やれやれ、襖を開けっ放しじゃの、気持ちは分からんでも無いが、


    もう少し、落ち着いてくれると良いのじゃがの・・、」


源庵「でも、お鈴さんは、良い子ですね、優しく、それでいて気高い。


    私は、この信濃の地に来てよかった・・・。


    長政殿の考えは、私の理想でもあります


    その理想を完結するには、お鈴さんや龍気殿、道願殿のように


    「同じ想い」の仲間が必要でございます。 


    仲間無くては、何をするにも先に進める事は出来ません。


    そして、長政殿には、自然と仲間が集まります。 


    それは、長政殿に「正しい事」を貫き通す意志が感じられるからです。     

 

     私利私欲に動けば、孤立しますが、民衆の本意の為に動く時、


    人は自然と集まります。


     それぞれが、「同じ想い」でいるからこそ、素直に動くことが出来、


    違和感が無い。そして、やりがいもある。


    自分がしている事が、自分の為だけでは無く、「皆」の為


    になっているから、達成感もある。  


    本来、人の働きとは、そのような事であらねばならぬのでしょうな・・、


    私は、やっぱり、この信濃の地に来て、よかった・・・・。」



   源庵が、しみじみとそう言うと、道願は、また優しく微笑んだ・・・。



道願(長政殿・・・、そなたの旅は、一人の男の人生をも変える旅じゃの・・・、


    尊い事じゃぞ、恐らく、お主は、それが「自然」なのじゃろうの・・・、


    誰にも真似の出来ぬ事よの・・、


     さて、これから先、更に増えるのであろうな、このような人が・・・、


    長政よ、一日も早く、旅を成就せよ、「父」も待っておるぞ・・・。)


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