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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第二章 「胎動」 第三十六話 「野鍛冶の剛力」


「天眼 風をみる」


 第二章 胎動


 第三十六話 「野鍛冶の剛力」



  源庵とお鈴が二刻(四時間)かけて、永光寺に向かっている頃、


 「野鍛冶の元真」の所では、剛力が、汗だくになり、「大金槌」を


 「的」に向けて振り下ろしていた。


 大金槌の目方は、二貫(7.9㌔)程であるが、それを何度となく、


振り下ろす動作は、剛力にとって、今までの仕事とは、違う筋肉を使う。


 また、慣れていないせいで、つい、「力」で振り下ろそうとする・・・。  


 元真は、「的」を「台金」の上で、小刻みにずらし、剛力に当てさせようと


 するが、力む剛力は、的では無く、「台金」を直接叩いてしまう・・・・。



元真「剛力殿・・・、そう力むと、後が続かなくなるぞ、大金槌は、


   その重みだけを、振り下ろせば良いのじゃ、


   そなたは、確かに「力」がある。が、「力」任せに大金槌を振り


   下ろしては、「力」の強弱が出て、「鉄」を均一に叩けなくなる。


   振り上げた槌の高さを一定にして、そこから、「力」を抜いて


   「的」に落とす感じじゃ・・、


    後は、的が動いた分だけ、「腰」を動かすのじゃ、判るかの?」



剛力「へい! やってみやす・・・。」



   理屈では、判っていても、「体」に覚え込ませるには、


繰り返し、繰り返し、同じ動作を「学ぶ」必要がある。


  特に「腰」を動かし、ほんの少し、「回す」感覚は、口で言っても到底、


  判るものでは無い。


   剛力のかぶっている、白い手ぬぐいの結び目の先から、


  「ポタリ・ポタリ」と汗が垂れ、剛力の全身を濡らした・・・。


    

   その頃、玄海は、忍びの頭・「半兵衛」と会っていた


   「ギヤマン」の材料を集めて欲しい事と、全国に散らばっていた、


   「草忍」がまず、正覚寺の玄海を頼りに、帰って来るのである。  


   元の「忍びの里」は、半兵衛・自らが火を放ちその存在を消していた。


   何も知らぬ「草忍」は、焼け落ちた「忍びの里」で、忍びの者に


    しか判らぬ、「忍び文字」を見つける。 


    その行き先が「正覚寺」の玄海なのである。



玄海「半兵衛殿、今日は、一人であったの、これで、大方の「草忍」は、


    信濃に帰って来たのではなかろうか?」


半兵衛「そうでござるな、これまでの「繋ぎ」の仕事、痛み入ります。」


玄海「いやいや、何の事はない。 それよりも、先ほどの「ギヤマン」の


    材料じゃが、どの位で集まるかの?」


半兵衛「そうでござるな、手分けして集めますので、明日には、


     ご用意出来るかと、思います」


玄海「ふむ、助かる。 わし一人では、時が、かかってしまうからの・・、」


半兵衛「全ては、長政様のご意思の下、我ら一同が、動くことは、


     当たり前でございます。」


玄海「うむ、そう言ってくれるのが、何とも頼もしい・・・、 


    そうじゃ、新しい「忍びの里」は、どうかの? 順調に進んでおるのか?」


半兵衛「はい、多少、「町」から、遠くになりましたが、「ある方」のご好意によ


     り、「北信濃」の山奥に集落を造り、「小笠原家」から


     目の届かない所に、居を構えましてございます。」


玄海「ほう! その「ある方」とは、どなたなのじゃ?」


半兵衛「はい、今、「北信濃」を治めている、「村上 義清」(よしきよ)殿


     でございます。」


玄海「なんと! 小笠原家と敵対している、「村上家」とな?


    主君は、あの上杉謙信じゃぞ」


半兵衛「はい、その通りでございます。 長政殿が、旅立たれて、


     半月も経たぬ頃、すぐに「村上 義清」殿から忍びの使者が、


     参りました。その者が持つ密書には、


      「長政殿の「舞」を観た。 旅立ちの理由も知っておる、


     何よりも、主君である上杉 謙信公が、長政殿と話をした、


     懇意な間柄である」


     などと書いてありました・・・、 そこで、村上 義清殿は、


     長政殿との「繋がり」を持ちたいと言われるので、拙者が、


     一人で、「北信濃」に赴き、直接、義清殿と話をして参りました。」


玄海「そなた、それは、命がけの行動じゃぞ、もし、その密書が「罠」であれば、   


    そなたの命は無かったかも知れぬぞ」


半兵衛「はい、その通りでございます。 しかし、拙者には、確信がありました。  


    その密書を持って来た、忍びの者でございます。 


    敵対する忍びなれど、同じ忍びの者には、共通する「意志」が


    あります 「主君に仕える意志」でございます、


    拙者が会ったその忍びには「殺意」がまったく、ありませんでした。


    通常はありえない「意志」です。


    そして、その忍びは、「笑って」こう申したのでございます。 


    「良い主君に仕えておるの、うらやましい限りじゃ」  

    

    と、申して、帰って行きました。


     恐らく、この忍びも、長政殿と直接会ったのでございましょう」


玄海「なるほどの・・・、、確かに、長政は、武田信玄や上杉謙信とも


    話がしたいと、 言っておった・・。


    その上で、色々と確かめたいとも言っておったな・・・。  


    上杉 謙信と逢えたのじゃな・・・。 


    その事が、結果的に、そなたら「忍びの者」達を


    救う事にも、なろうとは・・・。」


半兵衛「玄海殿、長政殿が、上杉 謙信と出会い、話をした事は、


     単に我ら「忍びの者」だけの問題では、ございませぬ・・・、


     恐らく、長政殿が帰って来た時、「村上 義清」殿は、


     長政殿にとって、大きな存在になると思います。 


     それが、それがしの「感」でございまする」


玄海「忍びの感か・・・、 そなたが言うのじゃから、


    間違いはなかろう・・、


    じゃが、長政は、武田 信玄とは、逢えたのじゃろうかの・・・・・・。」


半兵衛「そこまでは、さすがに判りませぬ・・・。」


玄海「そうじゃの・・・、長政は、今頃何をしておるのかの、


    無事であればよいが・・・。」



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