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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第二章 「胎動」 第三十五話 「洞窟」



「天眼 風をみる」


 第二章 胎動


 第三十五話 「洞窟」



   源庵は、お梅さんの部屋を出た後、大家さんの部屋に行き、


  台帳に記帳すると、その月の部屋代を前払いして、手続きをすませる。


  これで、部屋を借りる事が出来た。 簡単なものである。



源庵「そういえば、お鈴さん、昨日見せて頂いた、


   「瑠璃色の義眼」の事だけど、


    確か、どこかの洞窟の中で見つけた石を、


   「研磨」したと言っていたよね」


お鈴「うん、あそこは、最近見つけたの、 大雨が降った後、


   岩陰の崖に亀裂を見つけたので、近づいてみると、


   そこから涼しい風が噴き出していたから、


    少し掘り広げると、 奥に入っていけそうな岩の隙間を見つけたの、


    入り口の隙間は狭いけど、中に入ると、意外と広くて、奥まで続いている


    ようなので、一度、家に帰って、提灯を持って中に入ったの、


    暫く歩くと、「キラキラ」と光る石が、洞窟の壁に生えていたから、


    その中の手頃な石を持ち帰って、この義眼にしたんだよ。」



源庵「その場所は、ここから遠いのかい?」


お鈴「うん、あるいて一刻(二時間)ぐらいかな? ただ、山の中で、


   わかりにくい場所だから、まだ、だれも知らないと思うよ」


源庵「お鈴さん、悪いけど、そこに案内しては、もらえないだろうか、


    ちょっと、気になる事があってね、いいかい?」


お鈴「うん、いいよ。じゃ~、提灯と金槌を持ってくるよ、ちょっと、待ってて」 


    お鈴が、そう言うと、三軒隣の自分の家から、金槌と提灯を持って来た。


源庵「お鈴ちゃん、悪いね、じゃ~、案内してもらえるかな?」


お鈴「うん、わかったよ」



   お鈴は、元々、人見知りする方である。


   長政以上の(風読み)の力があるから、尚更である。 


   始めは、源庵に対しても、気を使って話をしていたが、いつしか


    長政と話す時と、同じような「口調」になっていた。 


    それだけ、源庵を「信頼」してきたのである・・・。 


    お鈴と源庵は、町から離れ、山間の道を暫く歩くと、


    お鈴は、「ここから、獣道だよ」と、言って、


    山の中をどんどん入っていった。 


    山道に慣れていない源庵は、何とかお鈴の跡を追うが、


    すぐに汗だくになった。 時々、休憩をはさみ、ようやく目的の


    洞窟に着いた。


お鈴「この大きな岩の間だよ」



    源庵が汗だくの顔を上げると、大きな岩の間に隙間が見える、


    上からは、つる状の葉が覆いかぶさり、ちょうど、


    隙間を隠すように垂れ下がっている。 


源庵「なるほど・・、ふう~、これなら、簡単に見つける事が出来ぬな・・、」


お鈴「ちょっと待ってね、」


    お鈴は、提灯に火を点すと、岩の隙間にスルリと入った。 


    源庵も入ろうとしたが、簡単には、入れない。 


    「ギリギリ」の隙間を、何とか体を入れる事が出来た。


     中に入ると、確かに、中は広く、源庵が、普通に立って歩ける程である。


     暫く歩くと、提灯の明かりに照らされて、岩壁が所々、


    「キラキラ」と反射している、


     そこには、瑠璃色の石が、岩の間から、飛び出していた、


    中には岩と「同化」しているものもある。 


    その場所は、 明らかに、ほかの所とは、感じが違う、


    岩壁一面が提灯の光に照らされ細かい光が踊っている。 


    手で、岩の表面を擦り、泥を取り除くと、その光は、よりいっそう、


    輝きを増した。


源庵「こ・これは・・・、まさか!」


    源庵は、金槌で、手頃な石を叩き割ると、瑠璃色の石を懐に入れた。


お鈴「源庵先生、この石は、何なの?」


源庵「うむ、まだ、はっきりとは言えぬが、わしが長崎にいた頃


    わしのお師匠様に聞いた事がある。


    「絹の道」と呼ばれる道があっての、


    この世界を横断している道なのじゃ、


    「絹の道」は文字通り、「絹」を運んでいる道なのじゃが、


    それ以外にも、沢山の珍しいものを運んでいての、


    その中で、「宝石」と言われる色とりどりに輝く「石」もあるそうじゃ、


     この石もその「宝石」と言われるものに違いない。


     この石は、異国のある所では、高く売れる石なのじゃ、


     この国でも、京の公家や名家の人達に高値で買ってくれると


     聞いた事がある。」


お鈴「ふ~ん、そういえば、「絹の道」って聞いた事があるよ、


    父上が、毎朝、「永光寺」と言う所に修行に行くのだけど、


    そこに「道願」と言う、和尚さんが居てね、道願和尚は、昔、「絹の道」


     を旅していた、「商人」だったって言っていたよ。」 


源庵「なるほど・・・、ちょうどよい、その道願和尚にこの石を見てもらおう、


    さすれば、わしの考えの裏づけも出来る。 


    もし、この石が、価値のある宝石であれば、


     将来、長政殿がやらんとする事を「助ける」事が出来るかも知れぬ・・・。


     河川の工事にしても、太風子を増やす事にしても、


     先立つものがなければ、話にならん。


     「人」と「金」、そして、「知識」と「信念」それらを、


    良い方向に活用すれば、この信濃の国は、きっと良い国となる。


     わしは、医者をやりながら、長政殿が信濃に戻るまでに、


    その下地を創りたいのじゃ」



     お鈴は、源庵の熱く語る言葉を聞いて、一瞬、すぐ隣に長政が居ると、


     「錯覚」した。


お鈴(源庵先生は、やっぱり、長政様に似ている。 


   姿・形ではなく、その考え方や生き方が似ている・・・。)


源庵「さて、そうと決まれば、お鈴さん、今度は、その永光寺に案内しては、


    くれぬか?」


お鈴「うん、いいよ、じゃ~、今度は永光寺だね」



   二人は、洞窟を抜けると、今度は、永光寺に向けて、歩みを進めた。


   ここからは、永光寺までは、二刻(四時間)はかかる、


   源庵は、更に汗だくになり、永光寺に向かう事となった。       



     


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