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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第ニ章 「胎動」 第十二話 「龍気の仕事」



「天眼 風を見る」


 第二章 胎動


  第十二話 「龍気の仕事」




   龍気は、考えていた・・、 

]

この屋敷は長政様の屋敷である。  長政様に仕えていたお菊が、 ここに


  居るのは、問題が無い。 


  また、お鈴は、忍びの里でも、「表」に出ない程だから、小笠原家にも、 


  「面」がわれていない。


  お菊と一緒に長政様の屋敷に住んだとしても、「女中」の一人を雇ったぐら


  いにしか、思われないであろう・・。


  今の所、お菊に対しては、今まで通り、小笠原家からのお手当てがある。


   しかし、元、忍びの頭領である、龍気は、 小笠原家の当主を始め、

 

  主だった家臣には、「顔」を知られている。


   そんな者が、長政様の屋敷に、「三人」で住むとなれば、 お菊をはじめ、


   自分の娘お鈴の素性もばれてしまう。 


   当然、二人の身に危険が及ぶ・・・。  と、なれば、長政様の屋敷から、


   遠からず、近からずの場所で、居を構え、そこで生活しなければならぬ、


  当面は、そこから、永光寺に修行に通う事になるであろう・・。 


  その事をお菊に話すと、 お菊は「致し方ありませんね」と言った。


  複雑なお菊の顔を尻目に、 龍気が長政の屋敷を出ると、 


  次は生活の糧を得る為、働き場所を探す為、町に向かう。  


  龍気は、忍びの「顔」を捨て、町人の姿になり、町をぶらつき、


  働き場所と住む場所を模索した。   



  今まで龍気は、忍びの頭領として、何十人もの忍びを養っていた、


  忍びの里では、小笠原家の「手当て」も多少はあったが、 ほとんどは、


  自給自足の生活をしていた。  だが、それも忍びの里の横にある、


   「畑」や山の斜面を開拓して、切り開いた「千枚田」があったこそである。


   小笠原家から離れ、 「忍びの里」を離れた忍び達は、それらの「畑」や


   「千枚田」からの糧を総て、失っていた。  


   もちろん、その事を総て、踏まえた上で、忍び達は長政に付いたのである。


   今の龍気は、一人の「男」に戻り、お菊とお鈴の二人だけを


   養おうとしている。


   町の通りをぶらつきながら、   ここでも龍気は考えた・・、



龍気(忍びの里の皆を養う時は、「皆」が居たから、助け合い仕事も分け合って


    いた・・、  わしは、皆の意見を聞き、全体の動きを把握して、


    公平な判断をしていた・・・。  


    忍びの者達に平等に食べ物を振り分けていた・・。


    たまに「不満」も出ていたが、皆、良いやつで、わしに話を聞いて欲しい


    が為に言う「不満」であった・・。 


    それが、その時のわしの役目であった。


     じゃが、  今は、たった二人だけを養おうとしている。


     今、わしは「一人」じゃ、何もかも総てを、わし一人で


     やらねばならぬ・・・、  考えてみたら、こちらの方が、


     何倍も大変な事じゃ・・・。   


      今、わしが歩いている、この町の者も、同じように、働きながら、


     それぞれの家族を養っておる。


     町人だけではない百姓も商人も職人たちも、皆、同じじゃ・・・。)



     龍気は、先代(龍気の父)から、忍びの里をまとめるように言われ、


    その通りに生きてきた、もちろん「忍び」の頭領としての役目である。 


    だから、「普通」の生活をした事がない。 「変装」して、町人に化ける事はあ


    るが、「普通の仕事」に就いた事がないのである。  


    龍気は、果たして自分に「普通の仕事」が出来るのであろうか?


     そんな事を考えながら、茶店に腰を落とした。


    笹団子の美味い、茶店である・・。 


  

    茶店女に、笹団子を頼み、店の前の長椅子に座ると、見た事がある、


   老人に目がいった。「吾平」である。


    町人に化けた、龍気の姿を見ても、吾平は、軽く会釈をするだけで、「龍気」


   であるとは、気がついていない。   


   龍気は、何の気なしに吾平に声をかけた。



龍気「吾平さん、わしじゃよ、龍気じゃよ・・、」   と、小声で話しかける・・・。



吾平「あれま、龍気様でごぜ~ましたか、そげな格好でありましたので、


    気がつきませんでした」


龍気「はは、色々とあっての、暫くは、町に身を隠しておる」



吾平「それは、ひょっとすると、長政様と小笠原家との事で、ごぜ~ますだ


    か・・・、」 と、吾平も小声になった。


龍気「うむ、そうじゃの、吾平さんは、今、小笠原家に


    仕えておったのじゃの・・・、」



吾平「へぇ~、今は、貞朝様(長政の父)の所で庭掃除でごぜ~ます、 


    先日、お館様(貞朝の意)がわめいておりやした、


    長政様を許せんと・・・。」



龍気「そうか・・・、 われら忍びの者は、小笠原家を見限り、長政様に仕える事


    となったのじゃ、それで、忍びの里も、もぬけの殻じゃ・・、


    わしも、忍びの頭領の座を降り、一人の人となっておる、


    今は、ただの男じゃよ・・、


     そうじゃ、吾平さん、 今、働き口を探しておるのじゃが、何かいい所は


     無いものかの・・、」


吾平「そうでごぜ~ますな~、  龍気様のように、身軽で腕も立つのであれ


    ば、どこかの「用心棒」のような仕事であれば、いくらでもありそうで、


    ごぜ~ますだが・・、」


龍気「いや、あまり、人目につくような仕事は、まずいのじゃが・・、」



吾平「そうですな~・・・・、 そうじゃ、わしの古い友人が、「木こりのおさ


    をやっております。  この辺の山を根城と、しておりますだで、


    ひとつ、話をつけておきやしょう。 おまかせくだされ。」             

 


龍気「それは、いい感じじゃ、是非に頼む、どれぐらいで、


    話がまとまりそうじゃ?」



吾平「明日には、話をつけておきましょう、」



龍気「うむ、なるべくなら、わしの素性は、隠してほしいのじゃが、


    その辺もよろしく、頼めるかの」


吾平「おまかせくだされ、その、きこりのおさも長政様のお味方ですじゃ、


    この前の「舞」も一緒に見ておりやした・・・、 


    信用出来る男でごぜ~ますので、ご心配は要りません。」


龍気「そうか、それなら安心じゃ・・・、では、あさっての、今と同じ刻限で、ここ


    で、吾平さんと落ち合えるかの?」

  


吾平「へぇ~、わかりやした。  それまでに、話をまとめておきやしょう」



   思わぬ所で、思わぬ人に出会い、とんとんと、話が進み、



   龍気の仕事が決まりそうである・・・。


   これも、長政を慕う者同士の絆が、そうさせたのであろうか・・。


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