表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
25/173

第一章 「旅立ち」 第二十四話 「正覚寺にて・・・長利の過去」


「天眼 風をみる」


 第一章 旅立ち


   第二十四話 正覚寺にて・・・長利の過去



龍気「ま~、玄海よ。 そうくな、お館様は、簡単に人を殺める事など出来ぬ、


そんな方じゃから、われらは、お館様を慕っておるのじゃからな。


     簡単に人を殺める事が出来、己の事しか考えていないような方なれば、


共に歩もうとは思わん。 そうであろう、玄海。」



玄海「うむ、そうであったな、すまなんだ、ちと、熱くなってしまったわい、じゃがのう、長利、


     「戦いを無くす為の戦い」もあると思うのじゃが、どうなんじゃろうの・・・、


     わしは、難しいことは判らんが・・、  もし、長利が天下を盗ったなら、この国は


     住みやすい国になると思うのじゃがな・・・、 さすれば、わしのような「捨て子」も


居なくなるはずじゃ・・・、」



長利「戦いを無くす為の戦いか・・・、今の世は、それぞれが「理想」を持って戦っておる、


    中には「私利私欲」でいくさをしている者もあるかも知れんが、なだたる「名将」と


    言われる者は、自分の理想の国を作るが為に戦をしているのであろう。


      

    じゃが、わしの「理想」は、戦わずして、「民」と共に生きる事じゃ、何を甘い事をと


    思う者もおるであろう、 じゃが、これが、この長利の「理想」じゃ。  



    だが、いずれ「時」が来たら、わしもいくさをしなければならない時が来るじゃろう・・・、


      

    矛盾しておるが、他の国から、ただ攻められて、簡単に領地を奪われてしまえば、


    「守るべき民」も居なくなってしまう。


     

    「今」のわしには、ここまでしか言えぬ・・・、それからの答えも、この「旅」で見つける事が


    出来るのではないかと思っておる。」


 

龍気「お館様、「その時」が来るまで、われら「忍びの者たち」は、今以上に鍛錬いたしますゆえ、


    いつでも、ご命令下され」



長利「うむ、そなたの「気持ち」は、しかと覚えておく・・・。  


    さて、慣れない酒に少し酔ったわい、玄海、厠を借りるぞ、それに、 


    すこし、夜風にあたってくるわ・・。」



    そう言うと、長利は部屋を出て行った・・・。




お菊「あの~、龍気様に玄海様、 ひとつお聞きしてもよろしいですか?」



龍気「ん? 何ですかな?」



お菊「お二人は、長利様と、何時、どんな感じでお知り合いになられたのですか?」  



玄海「そうじゃな、長利とは、龍気の方が先に会っておるの、どうなんじゃ? 


    その辺はわしも詳しく聞いてはおらなんだな」



龍気「そうですな、お二人になら、お話しても差し支えありますまい、 


    あれは、お館様が、七つの頃じゃ、町外れをお館様が、 頭から、血を流して


    「とぼとぼ」と、歩いておったのじゃ、「いかがなされました」と聞くと、後ろから、


    「石」が飛んできた」と言うのじゃ、  


    その頃、お館様は、「風よみ」に振り回されておっての、言わなくてもいい事を「口」に


    出してしまうので、 近所の「わらし」どもに気味悪がられて、 


    よく、いじめられておったのじゃ・・・。


     「小笠原家の四男坊」といっても、「わらし」どもには、分からぬからの・・、 


     わしが「見つけ出してまいりましょう」と言うと、 


     「よい、石を投げた者も、投げたくて投げたのでは、無いかもしれぬ、そうせねば、


     その者が、周りにいる者に虐められるかもしれぬ」


     そう、言うのじゃそれに、「こんな事もわしが大人になった時、そういえば、


     そんな事があったの~と、笑える時がくるじゃろう」とも言っていた。 



     わずか七つの「わらし」が言う言葉では無いと、感じたものよ・・。


   

     その時、お館様が言うのじゃ、「の~龍気殿、人が石を投げる「間合い」には限界があるの、


     ならば、人がその「間合い」に近づいた時、その気配を感じることが出来るであろうか?


     また、飛んできた「石」をすんでの所でかわす事が出来るか?」 


     そう聞くのじゃ、 更に「投げた事実は残る、それを、 「かわす」のだから、


     投げた者が虐められる事もあるまい。」  と、言われての・・、


 

    わしは、「忍びの修行にそのような修行ががありますが、やってみますか」と言うと、


     「是非にたのむ」と言われて、 それからじゃな、「忍びの里」に毎日来るようになったのじゃ・・・。


 

玄海「そんな、いきさつがあったのか・・・、 長利が「忍びの里」に来るようになったのは、覚えておる。


     わしも、その頃は、 まだ、「忍びの里」におったからの。


 

     はじめは、戦国大名の四男坊が、物好きに忍者の真似事をしとるわい、と、思っておったのじゃ、


     それが、二箇月 三箇月と通い詰めての、「修行」も段々厳しいものになってくるのじゃが、


     一度たりて、弱音を吐いたことが無い、 むしろ、修行中は、目の色が変わる、


     何と言ったらいいのかの、鬼気迫るとでも言うか、 あれよ、あれよと言う間に、


     本当の「忍者の子」の中では、一番出来る「忍者」になっておった。


     

      その後、三年程、修行して、長利がとうの時じゃ、いっちょ、もんでやろうと


     「手合わせ」したら、あっと言う間に、後ろを取られて、首筋にやいばを当てられたわい、


     あん時は、「ゾクリ」としたぞい、ははは、 じゃが、長利は「忍者の子」の面倒見も良く、


     良く気がつく子での~、お~~、そうそう、何時だったか、 忍者の里の近くに小川が


     あるのじゃが、けっこう流れが速くての、あぶない場所だったのじゃが、


     「わらし」どもは、お構いなしじゃから、格好の遊び場になっての、ある時、


     「女の子」が流されて、そのわずかな、「悲鳴」なのかな?


 

     長利が急に走りだして、小川で流されて、溺れかけた「女の子」を助けた事があったの~。


     後で長利に聞いたら、「急に胸騒ぎがして、気がついたら、小川に向かって走っておった」と、


     言っていたな~、 の~龍気よ。


 


龍気「ん、うむ・・、」



お菊「あれ、龍気様、どうされたのですか? 」



玄海「はははは、その「女の子」とは、龍気の一人娘の事よ、はははは、心根は、優しい子じゃがな、


     「おてんば」な所があっての、 ま、娘にとって長利は、命の恩人ってことじゃな」


 


お菊「ま~、そうだったのですか、でも、助かって、良かったですね」



龍気「うむ、あの時は、正直、足が震えたわい、 自分が主君の為に、死ぬ事は、わしにとっては、


    むしろ誇りじゃと思う。


    が、「我が娘」が死ぬかもしれない、 と、考えたら、こうも動揺するものかと、


     自分でも驚くぐらい動揺しておった・・。」



玄海「それが、普通じゃよ、龍気よ・・、 家族の絆と言うものは、なかなか、


    切れぬもののはずじゃ・・・。」


     

    玄海がそこまで言うと、言葉を詰まらせ、やおら、横にあった徳利とっくりごと、


    ごくごくと飲み干した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ