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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第一章 「旅立ち」 第十八話 「犬笛・・絆」

「天眼 風をみる」


 第一章 旅立ち


   第十八話 「犬笛・・絆」


   町の中央の筋をゆっくり歩いたつもりであったが、すぐに、元の町外れに


  着いてしまった。  そう、お菊には感じられた・・・。


お菊「何だか、帰りは、あっと言う間に着いてしまいましたね・・・」


長利「そう、感じたか」


お菊「ええ、何だか、物足りない気分ですわ」


長利「ははは、そうか、どうじゃ、今度は、一人でもこれそうか?」


お菊「えぇ~、何とか、成りそうですわ・・、」 


   本当は、少し不安ではあったが、長利を心配させまいと、気丈に言った


長利「うむ、今度は、がんばるのじゃぞ・・。」


   長利には、その「風」(心)もみえていたが、お菊の心意気を大切にしたいと


   思い、あえて、それ以上は言わなかった。


長利「そうじゃ、お菊にこれを渡しておこう」 


   懐から取り出したのは、先程の「犬笛」である


お菊「これは、先程の犬笛ですよね」


長利「うむ、お菊があの屋敷で一人で暮らす時でも、何かと男手が要る事も


   あろう、例えば、裏庭に柿の木があろう」


お菊「えぇ~、去年の秋には、沢山の実が生りましたね。


   あの時は、長利様が、柿の実を採ってくださいました」


長利「今年の秋は、お菊、一人では、容易にいかんであろう、


   そんな時は、「龍気」に来てもらえばいいぞ」


お菊「龍気様ですか・・・、お屋敷に何度か、来ているのを見かけては


   いますが、話した事がありません私には、ちょっと、


   とっつきにくい方ですね・・、」


長利「そんな事は、ないぞ、龍気も役目ゆえ、あのように、


   気難しい顔をする時もあるが、懐の深い男ぞ、一度、


   話してみるがよい、その時の繋ぎとして、


   先程の「小鉄」を使えばよい、使い方は、さっきの要領じゃ、


   この犬笛をおもいっきり吹き、小鉄がきたら、


   「文」を首もとの竹筒に入れ、人差し指を小鉄の目の前に立て、


   「龍気・龍気」と言い付け、行け!と、命令してやるのじゃ、


   「お菊のにおい」・「人差し指」・「龍気」 この三つが揃うて、


    小鉄は命令を聞くからの、じゃから先程、お菊のにおいを


    小鉄におぼえさせたのじゃ、 においをわしと「関連」させるのも、


    あのやり方しかないからの、 もう小鉄はお菊を、


    わしと同じ主人と覚えておる。 後で、渡すが、小鉄専用の脇差も


    ある、 主に、夜に使う為、「刃」が月の光に反射しないように


     刀身をうるしで黒く塗りつぶしたものじゃ、


    小鉄を忍犬に選んだのも、毛の色が黒だからじゃ、


    闇夜に乗じて、 脇差を咥え、追っての足を切るように


    訓練されておる、 ま~、主人を守るのが、一番の優先と


    仕込まれておるから、 お菊を守ってくれるぞ、


    頼もしいやつじゃから、小鉄の脇差は、常にお菊が持っていて、


    いざと言う時に小鉄に渡すのじゃ、さすれば、後は、小鉄が、


    何とかしてくれる、その時は、大きな声で、「守れ」と命令するだけで


    よい、もちろん、龍気はそれ以上の働きをするがの、ははは」


お菊「何だか、すごい話ですね、私、忍術って、もっと、


   怪しげなものかと思っていたのですが、けっこう、地道な努力があるの


   ですね、考え方が変わりましたわ・・、


   そうですね、「龍気様」とも一度、ゆっくりお話してみます


    でも、龍気様にもご家族がおられるのでしょう?」


長利「うむ、本来であれば、その事は、ふせておくべき話なのじゃが、


   お菊になら、話しても大丈夫じゃろう」


お菊「え!何か、都合が悪いのですか?」


長利「うむ、忍者にとって、身内の素性を明かしてしまうのは、


   弱点になるのじゃ、もし、明らかになってしまえば、


    身内を人質に取られる事があるでの・・、 


   龍気の場合は、娘が一人居るだけで、その娘も今、


    忍術の修行中との事じゃ、聞いた話では、中々の腕前に


    成りつつあるようで、さすが、「血」は争えんと言う事じゃ」


お菊「奥方様は、居られないのですか?」


長利「うむ、その娘を産んだ時に、産後の肥立ちが悪くての、

   

   そのまま逝ってしまったのじゃ、それ以来、龍気は、独り身じゃ、」


お菊「あら、それは、お寂しいものですね・・・、」


  いつの間にか、町から、だいぶ離れ、 後ろに付いてきていた長利は、


  お菊と寄り添うように歩いていた。


長利「そうそう、言い忘れておったが、「小鉄」は、忍犬の中では、


   総大将じゃ、忍犬は、この領地のあちこちに居ての、


   まず、小鉄を触る事で、小鉄にお菊のにおいが付く、


   そのにおいを他の忍犬どもが、嗅ぐことで、他の忍犬もお菊を


   主人と覚えるのじゃ、先程の犬笛を吹いて、小鉄以外の忍犬が


   来るかも知れんが、驚かんでよいぞ、忍犬の特徴は、


   色が黒、そして、首には、先程の首輪に竹筒が付いているから、


    すぐに判ると思うが、忍犬であれば、先程の「待ち」の姿勢で


    命令を待っているので、用がない時は呼んではいかんぞ」


お菊「はい、わかりました  でも、なんだか、不思議ですね、


   主人を犬に噛まれて、亡くしている私が、今度は、


   その犬達に守られるなんて・・」


長利「うむ、お菊の旦那は、気の毒であったの・・、


   お菊の旦那を襲った犬は、犬の病なのじゃ、一度、犬があの


   病にかかると、よだれをたらし、狂ったように凶暴になり、


   人を襲うようになる。  最後は泡を吹いて、死んでしまう病じゃ、


   その病に冒された犬に噛まれると、同じように人も死んでしまうのじゃ、


   実は、忍犬には、あの病に罹った犬を見た場合は、


   その犬を殺すように命じてある・・、 かわいそうな事じゃが、


   致し方ない・・、 毎年、子供が何人も噛み殺されているからの・・・、」


お菊「そうだったのですか・・、それは、初めて聞きました。 


   そんな怖い病があるのですね・・、」


長利「お菊の話を聞いての、その時から、忍犬どもに訓練させたのじゃ、


   もっとも実際の訓練は、龍気がしておるがの、ははは」


お菊「ま~、それも、龍気様が訓練なさっておられるのですか! 


   私の主人を襲った犬は、もうとっくに死んでいるでしょうが、 


   私のような者を増やさない為には、必要な事なのですね・・・。」


長利「うむ、そうゆう事じゃの・・・、 ま~、とにかく、男手が必要な時は、


   さっきの要領で忍犬を呼び、龍気に来てもらえ、 


   わしからも、龍気にそう、伝えておくから、気軽に使ってみるがよい」


    そう言いながら、「犬笛」をお菊に渡したのであった。

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