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龍の哭くとき  作者: 風吹流霞
第壱章
19/21

18.守人

龍脈は大樹のようなものである。

分流は幹、枝は支線だ。

各務には分流の一つの流れがあり、そこから枝分かれのように支線が縦横無尽に走る。

「縦横無尽に走る支線のひとつの出口がこのあたりになる」

空き地の中央で、高井は靴で地面を軽く数回踏む。

「支線は分流ほどの強い力はもっていなくても数が多くてね。封印という手が取りにくい」

そんなことしたら、龍脈の守護者が過労死する。

「ただ、分流に比べてひとつひとつの力はそこまでじゃない」

ということで支線のほうは放置しているのだという。


「でも、溜まる・・・んだよね」


高井がつと視線を移す。わらわらと現れる群衆。古式ゆかしき鎧武者や、旧陸軍軍服を纏う軍人。

間違いない、霊だ。

昼間にこれが視えるのは、二人が視えるからであろう。

「最近ちょっと、ここの噂が増えてきたから、"掃除"しようと思ってね。"掃除"すると一時的に噂が無くなるんだ」

高井は印を結ぶ。じわりと地面に力の波紋が広がっていく。

その波紋が霊に到達すると、瞬時に消滅した。

「本来なら、守人がその役割を担っていて、そこまでたまらないようにしているんだけど、ここ数年のごたごたで守人が不在だったせいか、普通よりあちこちで溜まっているみたいなんだよね。いやあー、沸いてくる数が多くてさー。さすがの俺でも手に余るんだ。ということで、守人の君に同行してもらったわけ」

その言葉にわらわらと現れる霊。明らかに数が異常だ。

「うわっ・・!?」

その数におののくものの、慌てて明良は、鞘袋から木刀を取り出し、構える。

木刀の切っ先に力をこめると、うっすら木刀の先に光がともる。

人にはただの木刀だが、霊には真剣にもなりうる剣気、それが明良の唯一無比の武器だ。

「せやっ!!」

裂帛の気迫とともに振り下ろされた木刀は、手を伸ばしてきた霊を一刀両断に切り裂いた。

切り裂かれた霊は、四散霧消する。

利き足を一歩踏み込み、木刀を薙ぎる。霊が数体消え去った。

「やるぅ」と茶化す高井は無視した。



20体、30体、40体ほど消滅させたところで、霊の反応が途切れた。

「終わったね、ご苦労さん」

にこやかに笑う高井だったが、息切れひとつしてないのはさすがというか。

「・・・疲れた・・・」うなだれる明良に、「まあ、最初のうちはね」と笑う。

「本来なら、代替わりするときに、こういった業務も引き継がれるんだけど、今回はイレギュラーだから、少し手を出させてもらった、あとは君の仕事だね」

「うへぇ・・・」明良の顔が歪む。毎回あの数と相対するのは酷だ。


「まあ、ここまでひどい場所はそうそうないと思うよ。とくに噂の数が多い場所だからね、ここ」


高井が苦笑する。

「まあ、これで俺も本来の業務に戻れるから、ギブアンドテイクだよ」

土御門神道本庁から指示されたもの、高井はそれらすべてを宮家の二人に話していない。

そして、恐らく、彼らも気づいていてあえて指摘するつもりはないのだと思う。

それは、目の前にいる少年にも関わることなのだが・・・。

(いわなくてもいいことまで話す必要はないからな・・・)

高井はそう結論を出した。

「本来の業務?ああ、警官のほう・・・」

明良の発言に、彼は笑みを深くする。現に、目の前の少年は勘違いしている。


土御門神道本庁とて、完全な宮家の味方ではないのに――


「まあ、そういうこと」軽く手を上げて、帰宅を促す。


空には真っ赤な夕日が山の間に沈みかけていた。


高井氏は、師事した人が真言密教系なので真言密教系の術者。土御門神道本庁も完全な味方ではないという話。恐らく次が最終話。

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