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龍の哭くとき  作者: 風吹流霞
第壱章
18/21

17.顎


じりじりと容赦ない太陽がアスファルトを焦がす。

盆地である各務は、夏暑く冬寒い。


「あつ・・・」


ソーダ水の棒アイスをかじる。

もうすぐインターハイが始まる。インターハイが終わると3年生は引退だ。

2年生エースである明良も部長にと推薦されそうだが、断っている。

元々、守人の訓練の一環で始めたもの。手段が目的化してしまっては本末転倒である。

守人としての出動は五月の龍脈開放以来、音沙汰なしだった。

龍脈の守護者である季和に何度も同行を打診したが、彼女は首を縦に振らなかった。


『明良は部活が忙しいでしょう?』


確かに忙しいので、明良はぐうの音も出なかった。

それならと夜中、家に突撃してみたら出立した後だったり。

龍脈の結界は各務のあちこちに張り巡らされており、その詳細は守護者以外ほとんどの人が知らされていない。

つまり季和の案内なくして、龍脈の結界にたどり着くことはできない。

潔くあきらめるしかなかった。

何か釈然としない、明良は鉄紺色の鞘袋を肩にかけ直した。


「あーきーらくーん」

「・・・」


無視したかった。


「一之宮明良くーん」


ため息をひとつついて、明良は振り返る。

「何やってんすか、高井さん」

コンビニの外看板に頬杖をつくようにし、こちらに笑顔を見せる男性。

各務署刑事課のエリート警察官であり、土御門神道本庁の末端に席を連ねる術者、高井涼。

土御門神道本庁の上層部から覚えもめでたい。実際優秀な人物なのであろう。

「明良くん、おにーさんのお手伝いしない?」

「手伝い?」と明良は首をかしげる。

「ほんの2,3時間、バイト代もだすよ?」

にこにこと笑いながら、高井は応える。

有無を言わさぬその笑顔に結局、明良のほうが折れた。



さくさくと草を踏む音が響く。

背の高い草が茫々と生えている空き地にたどり着く。

目の前には立ち入り禁止の看板が掲げられた鉄格子。

「上から許可はもらっているんでね」と高井は事もなく鉄格子を開ける。

きいと不気味な金属音が響いた。

「ここって・・・」明良の背中がうすら寒くなった。

龍脈の影響もあってか、各務は心霊現象や噂などに事欠かない。

この場所はその噂が特に多い場所だった。

古戦場だったとか、各務は東西の要所で古戦場だらけなので間違いない。

旧陸軍の工場跡だとか、こちらは噂の域を出ない。


「四之宮のお嬢さんに、霊とは人のイメージだと聞いたことはない?」


空き地の中央で高井がにやっと笑って、明良に話しかけてきた。

にやっと笑うと、平凡な印象ががらりと変化する。

そこにいたのは、警察官の高井ではなく、土御門神道本庁の高井涼であった。

平凡そのものの顔と、切れ者の顔、高井はその二つの顔をうまく使い分ける。

切れ者と言われるゆえんはそこにあるのだろう。

霊とは人のイメージ、それは龍脈開放の時に季和から聞いた。

そして、幽霊駅の駅長が立つその下に龍脈の入り口を発見した。


はっとする、まさかな・・・。


高井を見ると、再びにやっと笑われた。その笑みは「肯定」だ。


「ここは龍のあぎとなんだ」


ああ、やはり、そうなんだと明良は自分の推測は確信に至る。

「龍脈がらみか・・・」


龍のあぎと、つまり龍脈の口なのだから。

明良視点。冒頭、彼がかじってたアイスは〇リ〇リくん。

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