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Duo  作者: nata de coco
愛妻家の朝食
1/5

日常は平穏なり

「おはよー 朝だよー」


 ほぼこちらの収入に頼っているといえるであろう、同居人が部屋に入ってきた。


 こちらとしては、納期の迫った作品を仕上げるべく徹夜で作業していたものだから 、なんかもう朝というかむしろ深夜テンションなのだが、とりあえず


「おはよ」


 とだけ言ってみた。


「今日も寝てないのー?

最近寝なさすぎー

まぁいいやー

ゆーきの体だしねー

こっちにはなんも関係ない!」


「うん、そっちには何も関係ない」


収入面では大いなる影響が起こるだろうがね。言わないけれども。


「やっぱだめー

生活できなくなっちゃうからやっぱり体大事にしてー」


 ちゃんとわかってるしこいつ


「そんでさー

とりあえず今からバイトだから、朝ごはん作っといたからねー

作ったばっかだから多分あったかいだろうけど、もし冷めてたらレンジで30秒くらいレンジでチンしてねー

あと、その絵の具だらけのツナギ、早く洗っちゃいたいから、ネットの中にいれて、洗濯機に放りこんどくんだよ、臭いんだからね、それ

それじゃあ行ってきまーす」



 同居人はそう言い残して、バタバタと足音を立てながら部屋をあとにした。


 最近主婦化してきて、良い感じ


 そんな同居人に小さく「いってらっしゃい」とだけ言った。







 ・・・もう朝なのか


 カーテンを開けてみると、どんよりとした雲が空を覆っていて、特に朝の気分を満喫できるものではなかった。


 先ほどまで没頭していた作業を止め、ツナギの乳ポケットから、ショートホープのメンソールを取り出して、口にくわえ、火をつけた。


 おいしい


 タバコ味のメンソールでメジャーなタバコはラッキーストライクライトメンソールとハイライトメンソールとこれくらいなんじゃないかって思う。はちみつフレーバーなのも素敵。短いけど太いのも乙なもの。オッサンタバコなのがちょっと残念。パッケージ可愛いのに。


 肺胞がひとつひとつ機能低下しているのを感じながら、その冷酷ながらも上品で優雅な煙を口腔内で舐めつくし、搾りかすを吹き飛ばすという作業を3分ほど繰り返す。


 搾りかすが部屋全体に充満してきたところで、目がしみてきたので、ここから脱出することに決めた。

 









 居間に出ると、机の上にはラップのかかった皿が一つだけ置いてあった。


 中身は野菜サラダである。


 ラップ越しに触ってみたところ、冷えているようだったので、同居人の言いつけどおりレンジで30秒ほどチンしてみた。


食す。


 生温かくなった葉肉は歯牙により砕かれ、中から生温かいエキスがあふれだしてくる。口内に広がる、大草原をほうふつとさせるような感覚。そのあまりの壮大さに頭をクラクラさせつつ、食塊を食道内へと流しこむ。生温かいさわやかさが後味に残り、しばらく余韻に浸ることにした。




・・・すっごいまずい

 なんか少しでもおいしく聞こえるように言ってみたけど、要するにこれって生温かい雑草じゃんね。青臭いよ。口のなかキモいよ。うん。


 なぜ同居人はこんなものをチンしろと言ったのか


 その時机上に書置きが置いてあるのを見つけた。




『ゆーきへ

ホントに温めたら、めちゃくちゃ頭悪いよねー

そこまでおろかじゃないと思うけどー』




・・・



とりあえず

生温かいサラダを冷蔵庫の中にぶち込みつつ


腹にたまるものを食すため


同居人のバイト先へと向かうことにした。








「いらっしゃいませー。何名様ですかー?一名様ですよねー?

はーい、喫煙テーブルに一名入りまーす」


 カッターシャツに黒の綿パン、ウエスト・エプロン姿の同居人があった。


「会いに来てくれたのー?そんなにさみしかったー?」


「あほいえ。野菜サラダだけじゃ朝飯にならん」


「ちゃんとチンした?」


「するかっての」


ちゃんと言いつけどおりしましたけどね。

悪かったですね、頭悪くて。


「ご注文はー?」


「ホットコーヒー」


「モーニングは?」


「小倉、あとハムじゃなくてベーコンで」


「了解―」


同居人は髪をさらさら揺らしながら、厨房へと走っていった。


飲食店なのに、髪結ばないとかどうなのさ


と以前に聞いてみたところ


「とりあえず特例ってことでー」


とか言っていたのだが事の真相はいかがなものだろうか。


どうでもいいけど。






ホットコーヒーとモーニング(小倉トースト及びベーコンエッグ)が運ばれてきたので食す


ベーコンエッグはさっさと食べて

小倉トーストとコーヒーの甘みと苦みの往復運動をゆっくりと楽しむ


口内な残念な青臭さはとっくに消えたところで小倉トーストをたいらげた。


残ったコーヒーのおやつには煙草が一番だと思う。

といううことでポケットから煙草をとりだして火をつけると

どこかしこから同居人がやってきて

ニコニコしながら目の前に座った。





「仕事は?」


「ゆーき以外にお客さんがいなくて暇なんだー

一本吸ってこーっと」


同居人はエプロンの乳ポケットからキャスターマイルドを取り出した。


口にくわえて、「んー」とか言いながらそれを前に突き出してきたので、火をつけてやる


キス顔極まりない。可愛いよね、ってことは置いといて


「暇でも一応仕事中だろ?」


「ゆーきだって仕事中に吸うでしょー?」


「こっちは画家、そっちは接客業」


「お客さん来たら消すもんねー」


同居人は大きな目を細めて、うっとりした表情を見せながら、こちらに煙を吹き付けてきた


キャスター特有の、甘ったるいバニラの香り













この優雅で幸せで

そんでもって気だるい朝をもって、今日も一日が始まる。





・ホープのメンソール


JTが出しているタバコです


作者はこれが本命煙草



・キャスターマイルド


こちらもJTが出している煙草です


バニラ味と、甘ったるいにおいが特徴


作者はこれのメンソールにたまに浮気します

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