ウォレン・エドヴァルド
魔法が好きだと言っていた王子を教えていた。
初めは弟子を取ったつもりで、ゆっくりじっくり教える予定だった。
なのに、大きな技が使えるようになった途端、不思議と私の後継者にしたくなった。
そのぐらい良い生徒だった。
でも、大きな技は自分が追い詰められてから使うのだとかを教えると少し残念そうだった無邪気な子どもの顔しているのを思い出します。
大好きな魔法を嫌いにならないでほしくて、楽しいことばかり教えてしまった。
今となっては少し笑い事のように思います。
可愛い私の弟子、アッシャー。
貴方は、今、私を追いかけていると巷の噂で聞きました。
貴方は王にならなくてはならないのに、こんなところでこんな事をしていて良いはずありません。
貴方が寂しいのを埋めたかったのか、それとも私に何かを見たのか分かりませんが、私はそんなに大層な者ではありません。
そう言えば、ドラゴンが見たいと言っていましたね。
私にたどり着けば、すぐに見ることになりますね。
なんせ、ドラゴンの巣の横に村がありますから。
崖の直ぐ上にあるので、きっと驚くでしょう。
もう長年住んでいるので、ドラゴンも慣れています。
人とドラゴンが共に暮す、そんな光景をあなたにも見せてあげたいとは思います。
「しかし、貴方の事を必要とする者に申し訳なく思います。私は…………。複雑ですね」
「エド、村長が呼んでるぞ」
「ああ。わかりました。今行きます」
会ったら何を伝えたら良いか、もう今の私には分かりませんが、心底幸せになって欲しいと思う男の子ですよ。貴方は。
日記に書くのは貴方の噂と不気味な闇の出現。そして、周辺の守りの話。
淡々と今を過ごす私を貴方は放ってはくれないようですね。
本当に後ろを付いてくる貴方の姿が浮かぶようです。
今はきっと立派になっていますね。
「私はどうしたら良いのか、この歳になっても解らないのに。貴方はどんどん前に進んで、若いというのは本当に素晴らしい事です。このまま頑張って下さい」
私は遠くで応援することしか出来ません。
そのうち、ここへ来る若者へ何があげられるでしょうか?
悩みは尽きませんが、こんな辺境の地を愛してくれると嬉しいですね。
「おい、エド」
「はい!すみません。今行きます!」
さて、次はどんな噂がここまで届くか楽しみです。
アッシャー。次に会うときは、お互い1人前になっているといいなと勝手に思いますよ。