十二本の剣と鍛冶屋の話
サンクリア地方に来たのは今日の今朝方の事だった。
この土地には伝説がある。
ある鍛冶屋が最強の武器を作りたいと願い、近くの寺院に毎日のようにお祈りに行っていた。
105回めにお祈りに行った夜、鍛冶屋は夢を見た。
天女が十二振りの剣を差し出し言った。
十二振りの剣を作りなさい。
同じものでは駄目です。
違うものを十二振り作りなさい。
魔法を使い、仕上げなさい。
しかし、鍛冶屋は魔法が使えません。
「私は魔法が使えません」
「大丈夫、魔力と色鮮やかな魔法を使えるようにしときます」
そして、目覚めると男は魔法が使えるようになっていた。
これを鍛刀に使わなければと次の日から刀を作り始めた。
それから、男は狂ったように十二振りの刀を作った。
その十二振りは全て集めると願いが叶うと言われているが、十二振りは散り散りにあり、何処かで誰かに使われているのだろう。
「俺の剣もその一振りだと鑑定されてます」
「リグドーの剣が……ほう」
リーランドがじっくり見ているのをウェルとアッシュが横で見ていた。
「どんな効果があるんだ?」
「身体強化と属性強化が自動付与です」
「それは凄いな」
「強いのか?」
アッシュが聞くとリグドーが笑顔で言った。
「はい!強いです!」
「そりゃ、凄いな!まぁ、俺は剣はこれしか持たないからな」
「形変わってますよね。その剣も」
「うん。刀って言うんだよ。俺の師匠が使ってたからな。卒業する時に何振りか持ってるうちの一つを貰った」
「ラディアス・トリスタン氏か。刀って東の方で使われてる剣だろ?」
「ああ。向こうで習ったらしい。よくは知らないがな。まぁ、それよりも伝説の話だろ。今は」
「まぁ、俺の剣は後期に作られたものらしいので、そこまで価値は無いと思いますけどね」
そう言って話を終わらせた。
連れ合い馬車の中は俺たちと商人が複数人乗って居てなんとも不思議な感じだ。
街はもう見えてきてて、そこで皆と買い出しだ。
「リグドー、そういえば、王宮から手紙が来てた。渡しておく」
アッシュが中身を確認した素振りもなく、手渡した。
「ありがとうございます!弟たちだと思います」
しばらく眺めて、とても暗い顔をしていた。
「なにかあったか?」
「孤児院が売られてしまうとか書かれてて」
「それは聞いてたから、そのうち収まると思う。王室が買い取る予定だ」
「アッシュ〜〜〜〜〜!!それを先に言ってくださいよ〜〜!!」
リグドーが安堵して心配して損したと笑った。
「待遇も良くなるぞ」
「それはとてもありがたいです」
「あんちゃん達、もうすぐ着くぞ」
そうして、伝説残るサンクリア地方の街に到着したのだった。