マインドリセット
シッダー博士「コイツラか、ワカマツグループの炎上事件を扇動して、ワカマツ君の陰口を女子生徒に吹き込んでたのは。」
モーゴ「けっ!」
キーゴ「どうすんだよー、捕まっちゃったじゃん。」
ヌキナは進路指導室のシッダー博士の所に小さな怪人たちを連行した。20cmもない小さな怪人2人は手錠をかけられテーブルに置かれている。
シッダー博士「お手柄だよ?ヌキナ君。日当に色を付けれるように進言しておくよ。」
ヌキナ「さすが博士!気が利くぅっ!」
ヌキナは飛び跳ねて喜んだ。
シッダー博士「さて、コイツラを家でバラしてみるかな?」
博士の頭と眼鏡が光る。2人の怪人は恐怖におののいた。
モーゴ「たすけて!解体される!そこのおじょーちゃん!」
キーゴ「何でもするから、命だけはっ!?」
シッダー博士は無言で2人の小さな怪人をかばんに詰めた。
モーゴ&キーゴ「ひぇぇー!」
ヌキナ「私、しーらない!」
山のとある道教施設。そこに初老のバーテンダーとフォックスは揃って建物の中に入っていった。フォックスは始終、バツの悪そうな顔をしている。
バーテンダーは牛と馬の顔をした門番に観音開きの扉を開けるように言った。
牛頭「だめだ!前鬼、女狐!」
馬頭「悪いが、たもとを分かった、お前達を通すわけには行かん!」
門前で揉めていると両開きの片方が開いて、赤い和服の角の生えた長い髪の美しい女性が出てきた。
鬼女「エンノ様が久しぶりに会いたがってるよ、アンタ。」
バーテンダーは変化を解いて青い鬼になった。
前鬼「後鬼、エンノ様は息災であられるか?」
後鬼と呼ばれた鬼女は頷いた。後鬼はフォックスにも声をかけた。
後鬼「女狐もあがりな。」
フォックス「……おじゃまします。」
中には3人の男が2人を待ち構えていた。
前鬼「ご無沙汰しておりますエンノ様。」
行者の格好をした齢をめした男性が目を細める。
エンノ「お前も年をとったな前鬼。」
エンノは白く長い髭を撫でている。
エンノ「オナゴは年を取らんようじゃがな。ワッハッハッハ。」
後鬼「イヤですよ!」
ホホホと笑い前鬼の肩を思いっきりしばく。前鬼は痛みに悶絶する。
前鬼「いててて、えー、今日は皆様にご協力いただきたく参った次第でして。」
男たちはそれ見たことかというテイで、顔を見合わせた。
エンノ「お主の読み通りだな、陰陽S?」
エンノの向かいに座り二人を見ていた陰陽師姿の男が口を開いた。
陰陽S「最初からわかってたことだ。女狐だけでソッカーに立ち向かうなど、無理だったのだ。頭は冷えたか?女狐。」
フォックス「……はい。申し訳ありませんでした。」
フォックスは3人に頭を下げた。
それを見たエンノと陰陽Sの真ん中、奥に座る道士風の白髪の男性がフォックスと前鬼の言いたいことを当てた。
???「大方、ナンマイダーと協力してほしいと、いうのであろう?」
前鬼「左様です。バンコ様。」
バンコ「我らの目的は知っておろう。」
バンコは鋭い目線をフォックス達に投げかけた。
フォックス「……道教で日本を。」
陰陽S「そうだな。ナンマイダーは釈迦如来。女狐は稲荷神道。我らは道教。」
エンノ「そこにソッカーとか言うカルト教団。」
バンコ「ソッカーとナンマイダー達が共倒れになってくれれば、我らにとって上々。今のところ、ソッカーが押されとるのだろう?ナンマイダーもやられてもらわんとなぁ。」
フォックス「それでは、うちの生徒が!?」
エンノと陰陽Sはヤレヤレとため息をついた。
エンノ「……まだまだ若いな女狐よ。」
フォックス「くっ!」フォックスは怒りに震える右腕を左手で押さえた。
陰陽S「まあ、申し訳程度だがこれを渡してやろう。」
陰陽Sは懐から白地に黒の文字の札を3枚、フォックスに授けた。
陰陽S「護符だ。ソイツらの背中に貼ってやれ。効果は除難だ。」
フォックス「ありがとうございます!」
後鬼「……ところでアンタ。今日は帰れませんよ?」
前鬼「えぇ……」前鬼は後鬼に捕まるとズルズルと奥の部屋に連れて行かれた。
モーゴとキーゴは進路指導室のシッダー博士の端末から書き込みをしていた。時折、あーでもない、こーでもない、と相談している。
ワカマツ、サエキ、ヌキナはその様子を不思議そうに眺めていた。
シッダー博士が彼らの疑問に先回りして応えた。
シッダー博士「マインドリセット。マインドコントロールを解除したんだ。
もう、彼らはソッカーの怪人ではない。今はワカマツグループの擁護記事を書かせている。」
なるほどー。と、3人は納得して頷いた。
モーゴ「ダメだ。嘘煙幕だけじゃ限界だー!」
キーゴ「社長のセクハラも捏造したが決定打が足りない。」
ワカマツは嘘、捏造に嫌気が差しているのか苦い顔をしていた。
モーゴ「俺たちにできるのは此処までだな!」
キーゴ「後やれることがあるとすれば正義と悪の対立構造だ。」
ワカマツ「というと?」ワカマツは2人の怪人の話に食いついた。
モーゴ「悪の世襲社長。」
キーゴ「正義の譲禅社長。ってな感じで世襲じゃない人物を後釜に据えるのさ。」
ワカマツは目を輝かせた。これでグループ存続の道は開ける。
ワカマツ「俺、じっちゃんに言ってみるよ!」
サエキ「でも、いいのか?お前のお父さん、悪者になっちまうぜ?」
ワカマツ「身から出た錆だよ。それに父の人生と俺の人生は違うんだし。あの人にグループが潰されるわけには行かない。会社を守るのに血や情は必要ないんだ。」
ワカマツの決意は固く、善は急げと、先に帰ってしまった。
サエキは放課後、校舎の端からグラウンドで練習をしているサッカー部員たちを見ていた。
ヌキナ「サエキ君!先、帰るねー!」
ヌキナが駐輪場から抜き出した自転車にまたがり帰っていった。
サエキ「おーう。」サエキは心ここにあらずと言った返事をした。そこをフシミに背中を叩かれた。叩かれる前にサエキの鼻はフシミが近くにいることに気がついていた。
フシミ「元気ないぞ!?少年!!」
サエキは痛みにのけぞった。
サエキ「イッテェー、フシミ先生。」
フシミ「どうしたんだね?」フシミはニコニコして言う。
サエキ「俺、これから受験勉強に集中しようと思ってて、けど……」
フシミ「諦めきれないよねぇ、私も。」
サエキ「先生も?」
フシミ「ううん?コッチの話。」
そうだ。と言い、フシミは指を立てる。
フシミ「サッカーに関連した何かをすればいいんじゃない?皆、選手である必要なんかない。夢のカタチは人それぞれだもん。」
サエキ「そっかぁ。オレなんか見つけます。サッカー関連のこと。」
フシミ「頑張れ、サエキ君!」