悪の組織 ソッカー
サエキとヌキナは進路指導室でシッダー博士が来るのを待っていた。その様子を腕を組んで壁にもたれたワカマツが見守る。
シッダー博士「同じことをまたも言うのか、面倒な事だ。」
文句を言いながら奥の部屋からメガネの怪しいインド人が入ってきた。
サエキ「すみません、シッダー博士。このブレスレットとあの変な奴らの事を説明してもらいたくて……」
ワカマツ「変な奴らじゃなくて、ハカイソー。ソッカーの下っ端な。」
ソッカー?下っ端?
シッダー博士「ワカマツ君、説明したいんならどうぞ?」
ワカマツ「嫌ですよ。」
サエキは、じゃぁ、お前はどうしてここにいるんだ?と思ったが先生にちゃんと説明してもらおうと次の言葉を待った。
シッダー博士「悪の組織、ソッカーは人心を惑わすカルト教団。私はある日、釈迦如来から啓示を受けた。」
サエキの横に座るヌキナはスマホで録音をしているようだった。
サエキ『こんな話、録音して、どうするんだよ?』
ヌキナ『絶対バズるって!もったいないじゃん!?』
2人はヒソヒソと話をした。シッダー博士は咳払いして、2人の注意を戻した。
シッダー博士「釈迦如来は私にソッカーの野望を打ち砕き、人々を正しい教えに導く、その手助けをしてほしいと頼まれた。」
ワカマツ「その手助けが俺達、ナンマイダーさ。」
サエキはその言葉にワカマツを見た。
サエキ「な、ナンマイダー?」
シッダー博士「私はソッカーに対抗するため、ワカマツグループの協力を得て様々な道具を作り上げた。その一つが君等にあげたブレスレットだ。」
ワカマツ「奴らは人を拉致する時、時間を止める。その中で動けるように、奴らと同等以上の力で戦えるようにしたのがブレスレットと、あのスーツさ。」
ワカマツはシッダー博士の話にちょくちょく割り込んでくるが、ワカマツはワカマツグループの御曹司だ。
シッダー博士もあまりいい顔はしてないが、それを許している様子だった。
シッダー博士「ブレスレットスーツには名前がある。サエキ君のはクウカイレッド。ヌキナ君のはニチレンピンク。」
ワカマツ「そして、俺のはシンランブルーだ。」
いちいち鬱陶しいやつだ。サエキは耐えた。
話は長々と続いた。
そこは開店前の地下のバー、そこに1人の女性が入ってくる。初老のバーテンダーが店の床にモップ掛けをしていたがその気配に顔を上げる。
バーテンダー「まだ開いて、……何だフォックスか。なんか用か?」
口元の見える狐のお面をつけ、胸元の大きく開いたライダースーツの女性はバーテンダーのモップを避けてカウンター席に着いた。
フォックス「一杯奢りなさいよ。いつものあれ。」
初老のバーテンダーはため息をついてカウンターに入った。
コニャックを炭酸で割る。
バーテンダー「こればっかりだな。」バーテンダーはタバコに火をつけた。女性はその事を気にもとめず、一口それを飲んだ。
フォックス「あー、生き返るわー。」
素が出てしまった。フォックスは咳払いをした。
フォックス「……ソッカーの活動が活発になってきてる、そっちで何か掴んだことは?」
バーテンダーは片眉を上げ、煙を天井にふいた。
バーテンダー「大学に来なくなった奴らが数人出たのと奴らの新しくできた工場、アソコの電力消費が半端ねぇって話だ。それくらいかな?」
ふーん、というとフォックスは残りの酒をあおって店を出た。外でバイクの始動音が聞こえる。
バーテンダー「……飲んだら、乗るな、だ。」
走り去るバイクの音を聞きながらバーテンダーはモップ掛けを再開した。
進路指導室のシッダー博士の話は一区切り着いた。
ヌキナはめんどくさい事になったとブレスレットを受け取ったことを後悔した。それを察知してワカマツが言う。
ワカマツ「ウチの会社から謝礼は出る。1回出動したら五万だ。」
その言葉にヌキナは手を組んでワカマツを拝んだ。
ヌキナ「2回出動したら軽く1ヶ月分のコンビニの給料超えるじゃない!助かるー!」
サエキも警官学校の学費の計算をした。
サエキ「俺やります!夢のためだ!」
ヌキナ「私もやります!生活苦しいもん!」
ワカマツ「暇つぶしに悪の組織でもぶっ倒すかな。」
こうして仏具戦隊ナンマイダーは3人体制で始動した。
シッダー博士「それじゃあ、君たちにもこれを渡しておこう。時間干渉力場探知機だ。」
腕時計に偽装してあるが横のスイッチで探知モードに切り替わった。
ヌキナ「黒しかない?もっとカワいいのがいいです!ピンクとか!」
シッダー博士「ムウ、君のは、そしたら作り直すか。」
進路指導室に笑いが起こった。
???「妨害?時が止まった中で?」
???「我々の、計画を察知してる奴らが居る。」
暗がりの部屋で歪なシルエットをした男たちが何やら話をしていた。そこへ一人の人間が入ってくる。
マントの男「例の奴はできたか?」
???「おぉ、我が尊師!はい。まもなく、稼働できます。」
尊師「ホワイティ博士は?」
???「彼はこの前の妨害を受けて怪人を強化する研究をしてるようで部屋にこもってます。」
なるほど。そう言うとマントの男は玉座に座った。
尊師「皆のもの、聞くが良い!我らソッカーは新しい怪人の完成を機に本格的にこの国を乗っ取る!」
シルエットの男たちは歓喜した。
???「ついにこの時が!」
???「政治家を洗脳したかいがあったわい!」
尊師「ゆけ!ハカイソーども!人々を我が道に引きずり込むのだ!」
サエキはもらった腕時計を授業中もピコピコしていた、優秀な兄がいるせいで、あまりおもちゃを買ってもらえなかった反動からかもしれない。
サエキ「お?何だこの反応。」
バイブレーションの振動、画面にアラートの文字。
グォン!
外の景色の色が怪しい紫色に変わった。ピキッという音とともに人々が動かなくなる。
サエキ「これは……ソッカー?!」
隣の教室からワカマツとヌキナがドタバタと教室に入ってくる。
ワカマツ「サエキ!いくぞ!」
ヌキナ「サエキ君!」
窓の外にはハカイソー達が群れをなして入ってくるのが見えた。
サエキ「奴らここの生徒を拉致するつもりか?」
ワカマツ「わからん!?」
ヌキナ「とりあえず、へんしんよ!」
3人はブレスレットを取り出し左手に通すと、合掌した。
3人の体が光り、赤、青、ピンクのスーツ姿になる。
サエキ「赤き海!クウカイレッド!」
サエキはポーズをとった。それをワカマツとヌキナは引いてみていた。
ワカマツ「……何やってんだ?お前?」
サエキ「ヘヘッ1回やってみたかったんだ。それとコレも!」
サエキは窓から外に飛び出した。校舎の二階。
ドシン!
いきなり、ヒトが降ってきたのでハカイソー達は驚いた。ワカマツとヌキナは窓枠に集まった。
ワカマツ「バッカ!足並み揃えろ!」
ヌキナ「サエキ君!?仕方ないわね!」
二人も顔を合わせると窓から飛び降りた。
サエキは拳を握った。
サエキ「さぁ!どっからでもかかってこい!ハカイソー!」