決戦
その日、サエキは無断でまた学校を休んだ。自分でも悪いことにしかならないと思いつつも、一度ついた闘志の炎は消えなかった。
サエキ「ここか……」
かつて、なんとかサティアンとか言われていた、山深くにそびえる、工場群。敷地内には多数のハカイソー達が警備に当たっているのが見えた。
サエキ「間違いない、ソッカーのアジトの一つだ。」
サエキは刀印を抜刀し空に五芒星と九字を切ると手印を素早く作った。
サエキ「臨兵闘者皆陣烈在前!風神!」
ズヒュゥン!
サエキの体から風神が出現する。左手の刀印を顔の前に持ってきて風神に指示を出す。
サエキ「風神に命令する。暴れてこい!急急如律令!」
風神「お任せあれ!」
敷地内には突如現れた、筋骨隆々の大男にバッタ、バッタとハカイソー達が倒されていく。
ボッ!ボボッ!ボボボッ!風を切る音だけが聞こえる目にも留まらぬ速さのパンチの連打。
ギー!独特な叫び声をあげ、吹き飛ばされるハカイソー達。
風神の突風の如き正拳突きにハカイソー達は成す術がない。風神にハカイソー達が集まっていく隙にサエキは建屋の中に入った。
しかし、サエキの前にタコ足の怪人が現れた。
LT卿「変身もせずに、一人で乗り込んでくるとは、大胆だな!クウカイレッド!」
四方からハカイソーが躍り出てくる。
サエキ「しまった罠か?!」
サエキがにやりと笑う。
サエキ「と、でも言うと思ったのか?」
LT卿「なに!?」
サエキ「迦楼羅天!燃やせ!」
迦楼羅天「御意に!」
迦楼羅天が口から激しい炎をタコ足怪人に吐きかける。周りに居たハカイソー達も炎に巻かれた。
LT卿「ぐわぁぁー!あ、新手だと!?聞いてないぞー!!」
炎にもがいていたタコ足怪人は黒焦げになって動かなくなった。ハカイソー達もその場に倒れていた。
サエキ「まずそうなたこ焼きだ。」『俺だけでも、ナンマイダーに変身しなくても、いけちまってるじゃないか!ちくしょう!』
なぜか涙が出てしまう。理由が分からないまま、サエキは風神を外に残して、そのまま地下に降りていった。
そこではモノアイのサイボーグとハカイソー達が、腰の曲がった老人を取り囲んでいた。その老人は足を挫いたのか、床に倒れて後退りしている。
PL伯爵「フハハハ!なぜ逃げる、ジジイ!ハカイソーになれば永遠の若さが手に入るんだぞ!?」
老人「ワシはこのままがええ。」
サエキ「まて!」
サエキはその老人の前に立ちハカイソー達を阻んだ。
サエキ「!マルボロの爺さん!?どうしてこんな所に?!」
PL伯爵「出たな!クウカイレッド!」
老人「いつの間にか、ここにつれてこられてたんじゃ!」
サエキ「そうなのか、俺が時間を稼ぐ!迦楼羅天!」
迦楼羅天「応!」
迦楼羅天はハカイソー達に突っ込んでいった。炎を吐く以外はハカイソーと力は互角か、それよりちょっと高いかといったところだが、組手でハカイソー達の関節を外していった。
迦楼羅天「オラァ!」
ばきん!コキッ!
ギィィー!外れた腕を押さえて、たまらず、後ろにハカイソーが倒れる。
迦楼羅天が老人とハカイソー達の間に逃げ道、空間を作った。
サエキ「さぁ、今のうちだ!」サエキは左手で帝釈天印を作って迦楼羅天の操作で忙しかった。
老人に背を向けていた。老人は立ち上がると背中側に手をやった。
老人「すまんな……」
その手にはキラリと光る刃物が握られていた。
スゥッ!老人は亀の怪人に姿を変える。
WM老師『死ね!クウカイレッド!』
その時、シンランブルーがその場に飛び込んできた。
ワカマツ「雷光キック!」電気をまとったキックがWM老師の背中を襲う。
WM老師「ぐわぁ!」
WM老師は甲羅を蹴られ、前につんのめりながな内臓部品をまき散らし、
ボンッ!
内部から爆発した。水分が多かったのか火は出ない。
内臓のすえた、焦げた匂いがあがる。
ワカマツ「サエキ!変身しろ!そのままでは危険だ!」
サエキ「ワカマツ!?どうしてここが?!」
ワカマツ「話はあとだ!早く、変身しろ!」
突然のシンランブルーの乱入にたじろぐPL伯爵の懐にニチレンピンクが両手でパイルバンカーを持って突っ込んでいった。
PL伯爵「お前ら!どこから!?」
ヌキナ「クリカラパイル!」
ドグシャァ!
キカイがPL伯爵の体に接触した瞬間、高速で杭が打ち出されその体を貫く。PL伯爵は痛みに立っていられず床に倒れた。
PL伯爵「ガカッガ!?ピー!」
床でのたうち回っていたPL伯爵が活動を停止する。
サエキは合掌してクウカイレッドに変身した。
サエキ「お前らどうして?」
ワカマツ「ブレスレットの一玉が発信機になってるのさ。」
ヌキナ「サエキ君!遅くなってごめんね!」
サエキ「お、俺は、」『お前らに置いて行かれた気がしてた。だから、見返してやろうと一人で頑張ってた。』
けど、一人じゃ無理だった。ワカマツに助けてもらわなかったら今ごろあの世行きだった。
サエキ「うぐ、うおぉぉぉっ」
クウカイレッドはマスクを両手で覆った。独りよがり、見栄、一人でできると慢心していた自分を恥じた。
人は誰かの支えなしに生きられない、大願成就にはみんなの協力が大事なのだと知った。
ワカマツ「安心しろ!俺たちがついてる!」
ヌキナ「私達、仲間だもん!」
そこにオウム顔の怪人が走ってやってきた。
オウムマン「PL伯爵、WM老師!」
ソッカーの幹部怪人達はことごとく討ち取られた後だった。
サエキ「LT卿とか言うのも、上でたこ焼きになってるぜ!」
ワカマツ「まずそうだったな?」
ヌキナが力強くウンウンと頷く。
オウムマン「おのれ、ナンマイダー、よくもやってくれたな!かくなる上は!」
オウムマンが二人の怪人に巨大化光線を浴びせる。閉所空間、地下空間で巨大化する二人の怪人。
ワカマツ「まずい!二人とも外に逃げるんだ!」
サエキ「おぉ!」
ヌキナ「早く早く!」
ドカァァァ!
巨大化した怪人達が地下をぶち破って、山の中にそびえたった。
ワカマツ「俺たちも仏具合体だ!ジョードー!」
サエキ「おう!来い!シンゴーン!」
ヌキナ「出番よ!サン=ロータス!」
ナンマイダーは光になって巨大メカのコックピットに座る。
ナンマイダー「「「仏具合体!」」」
3体の巨大ロボが組み合わさって人型の超巨大ロボットになる。
ナンマイダー「「「フドーソン!!!」」」
ワカマツ「よし!一気にかたをつける!」
ヌキナ「あれね!」
サエキ「アレ?」
サエキは隣に座るヌキナに質問した。それに、呆れたワカマツが答える。
ワカマツ「アレじゃない、リューオーキャノンだ!高いんだぞ!」
サエキ「気を取り直して。」
ナンマイダー「「「リューオーキャノン!」」」
フドーソンの体の前に巨大な大筒が出現し、胸のマークとドッキングする。空気中の如来パワーが砲口に集まる。
巨大化したPL伯爵もWM老師も最新のフドーソンの武器に驚いてたじろいでいる。
ナンマイダー「「「グンシャリバスター!!!」」」
チュドォォォン!
PL伯爵&WM老師「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
怪人達は木っ端微塵となった。フドーソンは消え。ナンマイダーが大地に降り立つ。
サエキ「俺は、ナンマイダーだ!」
ワカマツ「“俺達”、だろ?」
ヌキナ「そーよ、そーよ!みんなでナンマイダーよ!」
変身を解くと三人は私服だった。
サエキ「アレ?お前らも休んだのか?」
ヌキナ「そりゃ、そうよ!」
ワカマツ「病欠。サエキみたいに無断欠席じゃないから安心しろ!」
サエキ「あ~、俺もそうするんだった。」
三人は笑った。