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避暑地

夏休み前にシッダー博士に作ってもらったスマホの無料通話アプリ、無料と言うこともあり、それを使ってヌキナからアイドル活動の話や家族の愚痴などの鬼電が連日かかってきてサエキは勉強どころではなかった。

サエキ「ヌキナは進路どーするの?」

ヌキナ「私は人の賞味期限を大事にするわ。今を楽しむのが一番よ!」

サエキ「刹那的じゃないか?さすがに?」

ヌキナ「じゃあ、聞くけど、いい大学を出て、いい会社に勤めて、いい家庭を持つ、それを維持する、逸脱したら負け組。そんな疲れる生活をずっと続けるの?そこに幸せはあるの?それは誰が作ったレールなの?」

サエキ『誰が?作ったレール(価値観)かぁ』「…………」

サエキには答えがなかった。自分の将来の夢もその価値観レールに沿ったものでしかないからだ。受験に失敗したら負け組。レールを少しでも外れたら負け組。外れないように常に努力をし続ける、たとえそれが幸せでなくても。

ヌキナ「好きに生きて、理不尽に死ぬ。私はそうでありたいし、後悔はない。」

サエキ「人それぞれだなぁ。」

ヌキナ「ということで、ワカマツくんに頼んで私とサエキ君の3人で海に行くことになったから!」

サエキ「えぇ!?」

ヌキナ「明日迎えに行くから、ワカマツ君に用意するものとか聞いといて?」

サエキ「急すぎる!」

ヌキナ「勉強も大事だけど、息抜きしなきゃ!じゃ、切るねー!」ポロン!通話を終了しました。

サエキ「ちょッ!待てよ!」

唐突すぎて草も生えない。サエキは生き方の違いを思い知らされた。


ワカマツグループのシャトルバスが3人を森深い山々に囲まれたビーチへと運ぶ。

ワカマツ「ホントはグループの福利厚生施設でお前たちは入っちゃダメなんだからな。」

ヌキナ「分かってるって!」

サエキ「ありがたや、ありがたや。」

サエキは手をすり合わせてワカマツを拝んでいる。

ワカマツ「貸切じゃないから他の社員もいるから。」

2人「?」

それがどういうことか、ヌキナと特にサエキにはよくわかってなかった。


ビーチで海水浴をしに水着に着替える。

ヌキナ「節約と思ってスク水できたけど……」

ビキニ姿ではしゃぐ女性社員たちがいる中にあって。

スク水は目立ったが、男性社員たちはそろってヌキナのアイドル活動で引き締まったボディラインに鼻の下を伸ばしていた。

サエキは走って海の中に入った。腰までつかれる場所まで。

サエキ『ここならバレない。』(なにが?)

ワカマツ「泳ぐのかー?!サエキー!」

砂浜からワカマツが海に入っていったサエキに声をかけた。

サエキ「お、おーう!お前らも早く来いよー!」

ヌキナ「私たちも行きましょう?」砂浜の二人も後に続いて海に入った。

日中、海水浴を楽しんだ3人は、ワカマツグループのホテルで懐石料理のビュッフェを楽しんだ。

ヌキナ「すごい!食べ放題なの?!これ!?めっちゃおいしいんだけど!!」

ヌキナは大興奮であった。その調子でテーブルの向かいに座るワカマツに質問をぶつける。

ヌキナ「ここってワカマツグループ社員の家族も来れるの?!」

ワカマツ「お、おう。」

ヌキナ「やった!私、将来ワカマツグループ社員のお嫁さんになる!決めたわ!」

横で刺身にがっついて聞いていたサエキはヌキナに言う。

サエキ「ヌキナさん、アイドル活動はどうすんだよ?」

ヌキナ「当然、続けて、30くらいで引退したら、結婚するのよ!今から婚活市場をチェックしとかないと!」

ヌキナは鼻息が荒い。

ワカマツ「……ホテルの裏手がちょっとした肝試しスポットになってる、行く?」

サエキ「お、いいね!」サエキはそういうので女性に腕をつかまれるのが、たまらなく好きだった。頼られてるのが生きる喜びを与えてくれるからだ。

ヌキナ「えー?私、怖いの苦手なんだけど……」

サエキ『デュフフ、ますます好都合。』

サエキの顔色から色々、察したワカマツは言う。

ワカマツ「……他の女性社員とかも呼んで合同でやるか人数は多いほうが盛り上がるし。」

サエキ「いいね!賛成!」


夜の0時にホテルの裏手に男女が集まり、ペアで時間差で森に入っていく。ゴールは墓場の奥のお寺。時折、先行した、女性の悲鳴が聞こえてきた。

ヌキナ「めっちゃ、怖いんだけど。」

サエキ「次は、俺たちの番か。」

ヌキナは順番待ちの段階でサエキの腕にしがみついていた。

ソレを後ろで見ていた、女性社員とペアになったワカマツがどんだけ怖がりなんだと呆れて言う。

ワカマツ「ヌキナさん、やめとく?」

ヌキナ「いいえ!夏のバカンスはこの時しか楽しめないもの!」

ヌキナとサエキは森へと入っていった。


中は結構、闇の深い森になっており、肝試しスポットと言われるだけのことはあった。

ヌキナ「……なんだか、霧が出てきてない?」(ガタガタ)

サエキ「ホントだ。」

辺りに霧りがスーッと立ち込めてきて、急にヌキナが悲鳴をあげる。

ヌキナ「やだ!今、足首掴まれたんだけど!?」

ヌキナは立ち止まり少しパニックを起こしかけていた。

ヌキナ「なんなの?!なんか来る!」

ヌキナの顔は真っ青であった。腕をつかまれてるサエキの方はと言うと生きがいみたいなのを感じて目を細めていた。

サエキ「大丈夫でしよ……?」ヌキナの方に向き直る。

しがみついていた手が白すぎる。サエキは悲鳴を上げてその手を振り払った。

ヌキナ「ぎゃー!」

2人の間に骸骨が立っていた。

サエキ「ワカマツ!演出?!」

2人は霧から出てくる骸骨達に取り囲まれる。

ヌキナ「助けてー!!」

サエキ「ヌキナさん!くっそ!何がどうなってる!」

サエキ『ワカマツのやつ、やりすぎだろ?!』

ヌキナは元来た方向へ両手を上げて逃げていった。

サエキも骸骨の間をすり抜けて寺に走っていった。

息があがる頃、

サエキはどれだけ走っても寺につかないことを不安になってきた。いつしか月もだいぶ傾いていた。

どれだけ歩いたのだろうか?

サエキ「まずい、森から出られないぞ……」

その時、霧の中から目の前に陰陽師姿の男が現れた。

陰陽S「待っていたぞ。クウカイレッド。俺は陰陽Sとでも名乗っておこうか。」

サエキ「?!陰陽師?!」サエキはびっくりした。

骸骨の次は陰陽師?演出にしては凝りすぎていた。

現代の服装ではない、映画でしか見ないような姿だ。

その隣からはフォックスも出てきた。

サエキ「フォックス!?どうなってんだ?!」

混乱するサエキをよそに、陰陽Sは続ける。

陰陽S「お前は選ばれた。これからの戦いには陰陽道が必要になってくるだろう。お前は陰陽師にならなければならない。」

サエキ「そんな、どうやって?」

いきなり、陰陽師になれと言われても。どうやってなるのかも、修行の時間もサエキには見当もつかなかった。

陰陽S「そこらは、おいおいわかるさ。じゃあな、夢で会おう。」

陰陽師とフォックスは霧に消えた。

サエキ「え?!ちょ!」


ガバッ!

サエキ『ハァハァ、……なんだ夢?だったのか?』

隣にはワカマツもヌキナも寝息を立てている。

しかし、サエキには足の歩き疲れた感覚がちゃんと残っていた。

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