あーかい部! 1話 部活動
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!
趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!
同じく1年、青野あさぎ!
面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!
独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河!
そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
「ちゃおっすあさぎちゃん、ひいろちゃん。これで3人集まったねぇ。」
「きはだで最後だからな?」
「まあまあひいろ。みんな揃ったし、今日も部活始めよ?」
「ああ!」
「ん。」
あーかい部の活動内容は、言っちゃえばケータイ小説。部のアカウントで、あーかい部の日常を投下する。執筆は交代制。
「今回の当番はあさぎだったな。」
「うん。ネタは何にしようか……?」
あーかい部の小説投稿は当番制。1人が執筆、残り2人がネタを提供(雑談)したり、投稿者のモチベーション維持(騒ぐ)をする。
もちろん、どうしても思いつかないって時は選手交代。その方がみんな早く帰れるし……ね?
「なんて、実はもう決めて来てるんだけど。」
「あさぎちゃんやる気だねぇ?」
「まあね。」
「で?今日は何について話すんだ?」
「うん。今日の話題は……『部活動』で。」
いつもこんな感じで大まかな話題を決めては、雑談の内容をまとめて投稿する。脱線なんて日常茶飯事なんだけど……。
「部活動かぁ〜。」
「ワタシ達あーかい部が発足してちょうど1ヶ月だもんな。」
「そういうこと。」
「部活動といえば、一般的にはアレだよねぇ?『友情、努力、勝利』ってやつ。」
「きはだはこの部活で『友情、努力、勝利』した?」
「わたしには無縁だねぇ。」
「『部活といえば』とか言っておいて全否定か……。」
「ひいろちゃんはあるの?」
「ワタシにもないぞ!」
「やっぱり、私達あーかい部ってあんまり部活らしくないよね。」
「そうでもないんじゃないか?ワタシ達みたいにゆるい文化部なんて他にいくらでもあるだろう。」
「オカルト部とか、天文学部とかはゆるそうだよねぇ。」
「そう?本気でやろうと思えば、屋外でテント張って……なんてできそうだし。」
「あ〜、夜通しだとガチ感出るねぇ。」
「おお、屋外で……テントだと!?しかも、夜通しなんて……なんて卑猥な!?///」
「「おい。」」
「どうしよう……今からでも兼部した方が
「オカルト部と天文学部に謝れ。」
「逆にガチな部活動だと、野球部とかかなぁ?」
「野球は人生賭けてる人多いよな。」
「切り替え早いな。」
「やっぱりプロがあると人生賭かるよねぇ。」
「もろ就職先だもんなぁ。」
「つまり、野球部の人は広義の就活をしているというわけか……。」
「みんながみんなそうじゃないと思うけどね。」
「どっちかっていうと、将来の夢なのかもねぇ。」
「プロ野球選手は、なりたい職業でいつも上位にいる印象があるな。」
「それなら、お花屋さん志望の華道部とか、パティシエ志望の料理部もガチな人多いのかな……?」
「部費はガチだよねぇ。」
「消耗品使うところは嵩むよな。」
「金銭面だと、あーかい部は……
「「「全然ガチじゃないな(ぁ)(ねぇ)。」」」
「使うのなんてパソコンくらいだし。」
「そのお陰で申請がすんなり通ったんだ、いいじゃないか。」
「しかも部室つきなんて、贅沢だよねぇ〜。」
「たまたま空いててよかったな♪」
私達あーかい部の部室には、ちょ〜っとお古なパソコンと席が隅っこに一台。それと、部屋の真ん中にはお手頃サイズのテーブルとイスが4つ。頑張れば部室に5人入れる……かな?
「そういえば、あーかい部が発足したときにはもう部室あったけど……ここって前はなんの部室だったの?」
「え?ああ、前はカーリング部が使っていたみたいだぞ。」
「またマニアックな部活だねぇ……。」
「部員が集まらなくて試合ができなかったのと、外部と合同でやった方が楽しいってことで部活はやめたらしい。」
「う〜ん、真っ当。」
「そりゃ部室も持て余すか。」
「でもよくとれたねぇ?他にも部室欲しいところなんてたくさんありそうなのに。」
「そこは白ちゃんの尽力の賜物だな。」
白ちゃんは私たちあーかい部の顧問だ。本名は白久澄河、保健室で養護教諭をしてる。
「そんなに運動部の顧問が嫌だったんだ……。」
「部室があれば活動してますアピールしやすいもんねぇ。」
「あとは活動実績さえちゃんとしていれば盤石ってわけだな。」
「……で、どう?あさぎちゃん。活動実績、作れそ?」
活動実績……つまりはこの、今みんなが読んでくれてる雑談の記録。
「うん。これだけ話せばネタは充分。あとは形を整えて投稿するだけだね。」
「さすが速いな。」
「これでも趣味でケータイ小説書いてるからね♪」
2人がご機嫌な様子でパソコンに向かうあさぎを見守っていると、しばらくして部室のドアが開く音がした。
「やっほーみんな、元気してる?」
みんなの顧問、白ちゃんが入室してきた。
「白ちゃんだぁ。」
「お疲れ白ちゃん。」
「白ちゃん先生、こんにちは。」
「お、早速やってるわね?」
「もうまとめに入っちゃってるけどな。」
「良いじゃない♪その調子でお願いね?」
そういうと白ちゃんは自分のパソコンを広げてカタカタとキーボードを叩き始めた。
「はいはい……了解ですっ。」
「なんだか、もうすっかりここが白ちゃんの仕事場になりつつあるよな。」
「ここは私の『城』だもの。3人にはしっかり守り通して貰うわよ?」
「ねえねえ白ちゃん、部室交渉すっごく頑張ったのって、なんで?」
「え?そんなのサボり場所が欲しいからに決まってるじゃない。」
「そういう割に仕事してるよな。」
「わかってないわねぇ、保健室で仕事してると、仕事にならないのよ。お盛んな子たちの恋愛相談に乗りながらじゃあ無理無理……。」
「白ちゃん恋愛経験ないもんね。」
「そうなのよ…………って、おい。」
「やば……、」
「顔がニヤけてるぞ〜あさぎ。」
「そうだよあさぎちゃん?いくら白ちゃんが天上天下唯我独身だからって、言って良いことと悪いことがあるよ。」
「おい。」
「げふんげふん……、」
「あさぎもきはだも、あんまり貶すもんじゃないぞ?」
「そうだそうだー!もっと言ってやってよひいろちゃん。」
「『夫婦喧嘩は犬も食わない』っていうだろ?」
「それを言うなら『蓼食う虫も好き好き』……おい待て。」
「しまった……、」
「あなた達ぃ……!」
「げっ、
「あ
「全員そこに直りなさーーい!」
……とまあ、こんな感じで電子の海に足跡を残してくのが、あーかい部の部活です♪
「ふぅ〜、疲れた……。ん?PINEに通知が来てる……、」
誰もが知ってるトークアプリ『PINE』。
あーかい部のケータイ小説を投稿した人が報告するのに使ってる。
ここでお話するのも、今では部活があった日の夜のささやかな楽しみとなっている。
あーかい部!(4)
あさぎ:投稿完了
白ちゃん:お疲れ様♪
きはだ:部活のやつだ
あさぎ:今日はその話しかしてないからね
きはだ:読んできた
白ちゃん:同じく
ひいろ:ワタシもいるぞ!
あさぎ:みんな読むの速いね……
白ちゃん:顧問だからね♪
ひいろ:顧問と読む速さは関係なくないか?
きはだ:ないね
あさぎ:だそうです。やり直し
白ちゃん:やり直し!?
ひいろ:やり直しwww
きはだ:草ァ!
白ちゃん:お疲れ様♪
あさぎ:そこから!?
きはだ:振り出しに戻った
ひいろ:そこからwww
きはだ:いやぁ笑った笑った
ひいろ:部活の後にPINEでトークするのも、すっかり恒例になったな
白ちゃん:もう最近のトークはほとんどがここなんだけど
あさぎ:白ちゃん……
きはだ:トモダチ…
ひいろ:強く生きるんだ
白ちゃん:どーせ天上天下唯我独身ですよーだ
あさぎ:うん
ひいろ:だな
きはだ:そうだね
白ちゃん:誰か否定してよ……




