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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第84話 前哨戦

文字数:2301字

「レインはあたしの王子様なの! 白馬に乗った王子様なんだから! あたし達、結婚します!」


「「「!!」」」


 俺は時の覇者となるべく〈唯我独尊〉を発動した覚えはないし、時を止めるにしても刹那の1秒だけである。


 だが、この世界の時は間違いなく5秒ほど止まった。


 サラが言い放ったワケワカメの言葉によってだ。


 エミリーとカリンは顔面蒼白のまま身動き一つせず、ただ呆然と立ち尽くす。 


 (かた)や、顎が外れるくらいあんぐりと口を開け、サラを見つめたまま凍りついてしまった俺。


 そんな三人をよそに、笑顔大満開の次期聖女様が俺達を時の呪縛から解き放つような()()の言葉を口にする。


「鬼婆二人をあたし達のスーパーハッピーウェディングに招待する気はナッシング♪ 絶対ナッシングなので、どうか悪しからず♪」


 そう言った後、黒髪の少女は聖騎士と聖女にパチっと可愛らしくウインクをする。


 この時、俺とサラの目の前に悪魔の二人が降臨したのだった。


♢♢♢


「小娘、あんたはやっぱり許せない。私は完全に堪忍袋の緒が切れたよ」


「ふふふ、わたしは我慢の限界を突破しちゃったかな。サラ・アマガミ〜、ただじゃおかないからね」


「来るなら来てみろ、鬼婆ども! あたしの愛のパワーを見せてやる!」


「…………」


 三人の女が篝火(かがりび)を境界線にして激しく睨み合う。


 俺が何を言おうと、この戦いはもう止まらない。


 こういう時は、何も語らず黙っているのが吉。


 それと誰かに肩入れする、これだけは絶対にやっちゃいけないことだ。


 そう、収まるものも収まらなくなるのだから。


「レイン! 愛のダブルパワーで鬼婆退治だよ♪」


「!?」


 今、誰にも肩入れしないと心に誓ったばかりの俺を、女三人によるキャットファイトに強制参加させるサラ・アマガミ。


「こ、こら、サラ! 早く腕を離しなさい!」


「おい、鬼婆ども、覚悟しろ! 今からあたしとレインの愛のダブルパワーで鬼婆退治だ!」


「いらんこと宣言しないの! 俺は男だ、女三人で思う存分やり合え!」


 おかしいな、サラが掴んで離さない俺の腕がまったくほどけない。


 さっきから身体強化〈剛力〉を発動してるのに。


「レイン、見損なったよ。私よりそんなぽっと出の女につくなんて。今にも涙が溢れ出そうだ」


 悲しげな顔で言うならまだしも、鬼婆顔で言われても心にくるものがないぞ、エミリー。サラだけじゃなく、この俺も同罪とばかりにぶっ飛ばすつもりなんだろ? 


 ふざけんなって感じだ。今の状況から必ず抜け出してやる。

 

「サラ、いい加減に腕を離しなさい! お兄さんからの一生のお願い!」


「レイン、わたしはあなたを導いた者なんだよ。そんな後から出てきた小娘の尻に敷かれる姿は見たくなかったな」


 カリン、君も悲しげな顔で言うならまだしも、鬼婆顔で言われても心にくるものなんてないから。俺も見たくなかったよ、ポキポキ指を鳴らす聖女様を。


 俺とサラをタコ殴りするつもりなんだろ?


 どいつもこいつもマジで何なんだよ。


 だけど、スキル持ちの、それも三聖スキルのエミリーとカリンが本気で殴りつけてくるとは思えない。


 サラ・アマガミは次期聖女様にして真なる聖女スキル所持者だが、未だ覚醒してない普通の女なのだ。


 流石にそこまで大人気ない二人じゃない。


 俺は信じている。


 エミリー・ファインズとカリン・リーズをな。


「!?」


(あ、あれ? 二人がいないぞ)


 ほんの一瞬だけ、篝火の向こう側に立っていた三聖の二人から目を離してしまう。


 次の瞬間。


 サムライスキルが()の攻撃を探知、警告してくる。


「くっ、マ、マジかよ」


 何とか視認することができた時、眼前に鬼婆の二人が拳を高く振り上げる姿があった。


「くそ! 俺の考えが甘かった!」


〘〘ブン!〙〙


 サラを殴りつけるため、二人の女から放たれた二つの拳が虚しく(くう)を切る。


 今度は紛れもなく時の覇者となった俺が〈唯我独尊〉を発動して聖騎士と聖女の拳を躱した。


 篝火を境界線に互いの陣地を交代した形となった俺とサラ、そしてエミリーとカリン。


「「レイン〜」」


 怒りに満ちた表情のエミリーとカリンは、怨嗟の声を上げる。


 おそらく身体強化〈剛力〉を発動した上で繰り出した拳だろう。その拳はサラ・アマガミの顔面を寸分違わず捉えていた。あんなのまともに食らったら、普通の人は即死する。


 確かに三聖の二人はキレているけど、まだそれなりの理性ならぬ正気は保っていると思う。


 なぜなら、エミリーは聖剣と神剣を、カリンは白銀の聖杖を手にしてないからだ。それが一種のバロメーターとなるので、今のうちに二人の女の怒りを鎮めなければならない。


「エミリー、カリン、もうやめるんだ。今回の非はサラにある。二人に誠心誠意謝罪させるから、怒りを鎮めてくれ」


 二人は成人、大人の女性なんだ。いちいち年下の子供の戯れ言を真に受けるほど愚か者ではないはずだ。


 きっと大丈夫だ、二人は闇に覆われたこの大陸に光を照らし、世界を救う者。


 だって、聖騎士様と現聖女様なのだから。


 そうだろ? エミリー、カリン。


「「いや!」」


「……え?」


 うん? おかしいな……こいつら、真正のガチ愚か者だったのかな?


「ふん、いつまで小娘を腕の中に(いだ)いてるの? 一晩中そうしているつもり? 私の怒りは鎮まるどころか燃え上がってるんだからね!」


「いや、これは二人がサラをだな」


「鼻の下を伸ばしちゃってさ、何なのよって感じだよ。別に聖騎士様に同調するわけじゃないけれど、わたしはこの怒りを鎮めるつもりはない!」


〘スラリ〙


〘ヒュッ〙


「おい、ふざけんなよ」


 エミリーが聖剣と神剣を、そしてカリンが白銀の聖杖を手にする。


 三聖の二人が狙うのは、一人の女だ。


 サラ・アマガミ。


 こうして、聖騎士、現聖女、次期聖女の(いさか)いはあらぬ方向へと動き始めるのだった。



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