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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第80話 ハイドリアン

文字数:2210字

「カリン!」


 聖女の命を刈るべく、見えざる者の手によって銀色の短刀が放たれた。


 俺は〈唯我独尊〉と〈縮地〉を連続発動し、カリンを救うために駆けようとするが思いとどまる。


 三聖として名の連ねる者が不意を突かれたとはいえ、短刀ごときで()られるわけがないと思ったからだ。


(流石、聖女様だ!)


 カリンは己の置かれた状況をすぐさま把握すると、体をいなして銀の刃を軽やかに躱す。


「危ないじゃない!」


 そう叫びながら、見えざる者を迎え撃つために聖女の証しである白銀の聖杖を顕現して身構えるのだった。


「エミリー!」


「分かってる!」


 長年の付き合いがある幼馴染なので、俺の声色一つですべてを理解してくれるのはとてもありがたい。


〘シュッ、シュッ、シュッ、シュッ〙


 この一瞬の隙さえも見逃さず、敵は短刀による攻撃を仕掛けてきた。


 その数は4。


 標的は俺、エミリー、カリン、そしてサラだ。


 しかし、俺達を甘く見てもらっては困る。


 各々が手にする武器の特性を活かし、難なく敵の攻撃を排除する。俺とエミリーは刀と剣で短刀を弾き返し、カリンは白銀の聖杖から爆炎を放つと跡形もなく短刀を消し去った。 


 ……うん、そう。


 俺達と言ったのは、あくまで俺達()()という意味だ。


 約一名は含まれていない。


 俺は敵の攻撃を躱した後、サラに視線を走らせる。


 すると……。


 次期聖女様は、せっせと地面に落っこちたスプーンをまだ拭いていた。「ばっちいから綺麗に拭かないとね」と真剣な表情で言いながら。


〘ガキンッ!〙


「えっ? きゃ! レ、レイン〜」


 サラの心臓を貫くため、後方から迫り来る短刀を刀で弾き返し、黒髪の少女を抱き寄せると次なる敵の攻撃に備えた。


 なぜか分からないが頬を真っ赤に染め上げるサラ。


「「レイン!」」


 そんな俺達二人の様子を目にしたエミリーとカリンがなぜか分からないけれど、茹蛸(ゆでだこ)のように顔を真っ赤っ赤にして声を張り上げる。


「「「!!」」」


 その時だった。



【ちっ!】


 

 見えざる者の舌打ちが暗闇の中から聞こえてきた。


 今の舌打ちは俺だけじゃなく、エミリーやカリンにも聞こえただろう。


 そして、それぞれが思ったはずだ。


 この敵は誰なのか? はたして何人いるのか?  


 どうしてスキルに反応しなかったのかと。


♢♢♢


 俺達は見えざる者からの波状攻撃を受け続けていた。


 その攻撃手段は短刀による投擲だけである。


「もう、どんだけ短刀を持ってるのよ!」


 聖剣と神剣を振り抜き、敵の攻撃を躱しながら聖騎士が愚痴ると聖女が呆れたように言う。


「収納魔法を会得してるなら、きっと何百何千何万もの短刀を持ってるわよ」


 俺が口に出さずともエミリーもカリンも分かっていると思う。正直なところ、相手がどれだけ短刀を保有しているかなんて関係ない。


 今の状況は悲しいかな防戦一方にある。


 それは見えざる者の波状攻撃が凄まじいからだけではなくスキルに敵の反応がまったくないため、こちらから攻撃に転じることができないのだ。


 もちろん相手の位置を見極め、攻撃を仕掛けようとも考えた。


 だが、見えざる者はバカじゃない。短刀を投げ放つと同時に移動しているのは一目瞭然。


 実際、カリンが白銀の聖杖から氷槍を繰り出し、敵に攻撃したが空振りに終わる。いや、もしかしたら見事に命中していたかもしれない。


 ……いいや、違うだろ。


 聖女は紛れもなく氷槍で敵の命を刈ったのだ。


 それでも(なお)、波状攻撃は続く。


 なぜなら、見えざる者はアンデッドだからだ。


♢♢♢


「ア、アンデッド!? この敵が?」


 波状攻撃が続く中、見えざる者はアンデッドだと三聖の二人に告げるとエミリーがいの一番に声を上げる。


「ああ、間違いない。カリン、氷槍の攻撃は命中したんだろ?」


 俺は確認の意味を込めて聖女に語りかけた。


「……そうだね、手応えはあった。でも、何もなかったように短刀を投げつけてきたから、この敵はアンデッドかなと思ってた」


「それで、カリンはこの敵に心当たりがあるんだろ?」


「あると言えばある」


「はぁ? 何で早く言わないんですか?」


「うるさい! 確証がなかったからよ!」


 見えざる者が放つ短刀を、聖騎士は黒き双剣で力任せに弾き返しながら文句を言うと、聖女は白銀の聖杖から雷矢で迎撃しながら怒鳴り散らす。


「おい、いい加減にしろ! カリン、続けてくれ」


 エミリーとカリンは時と場所なんてお構いなしに口論するので、俺はそうなる前に二人に割って入り、聖女に話の続きを促すのだった。


「この敵は影の軍団で間違いないと思う」


「影の軍団?」


「そう、王様の守護者だよ」


「えっ? 王様の守護者は勇者パーティーだろ?」


「そうだよ、レインの言う通り」


「黙れ、エミリー」


「表の守護者は勇者パーティー、いわゆる()()()だね。裏の影の軍団こそ王様の守護者でありハイドリアン」


「ハイドリアン?」


「うん。潜伏体術者(ハイドリアン)潜伏(ハイド)に特化した者の名称なの」


 ――ハイド。


 俺は魔術師メメル・フロストのハイドを体験したことがある。


 確かにサムライスキルはまったく反応しなかった。


 でも、あの時は虚空(こくう)の空間を作り出す〈サイレント〉と〈ハイド〉の併せスキル発動の効果により、メメルを探知できなかったはず。


 影の軍団であるハイドリアンは、三聖のスキルに反応しないほど完璧なハイドができるのか?


 ……そんなわけがない……そうか、そういうことか。

 

 絶え間なく襲いかかる波状攻撃よって、俺達を亡き者にしようとしている敵。


 刻下の影の軍団はハイドリアンにして、魔王の眷属に成り下がったアンデッドだ。


 そうなんだろ? 魔王よ。



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