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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第73話 あたしの名前は天神沙羅!

文字数:2289字

「君を助けにきた、サラ・アマガミ」


「……えっ?」


 俺は素っ裸のアンデッド達を蹴り飛ばし、黒髪の少女の前に躍り出ると、草むらに尻もちをつき、唖然とした顔をしているサラ・アマガミに右手を差し出して言う。


「俺と一緒に行こう」


「イヤ!」


「………………」


 時が止まるというのは、こういうことなんだなと身を持って体験する。


 スッと草むらから起き上がり、パンパンっと丈の短いスカートの汚れを両手ではたいた女の子は、身動き一つできないでいた俺の横を足早に通り過ぎていく。


(あれ? おかしいぞ……えーと、見たこともない派手な赤いリボンをあしらった服を着た今の女の子がサラ・アマガミだよな? 違うのか? ……いや絶対そうだよな)


 そんな自問自答を心の中で呟くと、この女の子が絶対にサラ・アマガミで間違いないと判断した俺は、この場から立ち去ろうとする次期聖女様に声をかける。


「俺はレイン・アッシュだ。君のおかげで勇者達に勝利することができた、本当にありがとう」


「ナンパはご遠慮ください、さようなら!」


「………………」


 まさか人生18年で二回も時が止まる体験をするとは、全くもって思わなんだ。


 こちらを見向きもせず、キツい口調でそう言い放った女の子は長い黒髪を揺らしながら颯爽と歩いていく。


(あれ? これは流石におかしいよな……だって、あの()()()()()()を認識してないぞ。ということはだ、この女の子はサラ・アマガミじゃない? 人違いなのか? ……いやいや絶対そうだよな)


 そんな二度目の自問自答を心の中で呟くと、目の前を歩いている女の子が絶対にサラ・アマガミで間違いないと再び判断した俺は、意を決して去りゆく女の子に声をかけようとした時だった。


 相棒たる女は長く美しい黒髪を(なび)かせて振り返ると、睨みを利かせるためにつぶらな黒い瞳をキッとさせる。


 その圧は凄まじく、思わずたじろいでしまうほどだ。


 そして、そこから一歩も動くなと言わんばかりの強烈な圧を放ちながら、サラ・アマガミが氷のような冷たい声で俺に語りかけてきた。


「ナンパはお断りだけど、お兄さんに質問がある」


「あまり時間はないと思う。でも、俺が答えられる範囲なら何でも答える」


 そう言った理由は、もちろんある。


 つい先程、おもいっきり蹴り飛ばしてやった素っ裸のアンデッド達、なにゆえに素っ裸なのか正直分からないが見たところでは一般市民の中年の男達。


 もちろん生きる屍、アンデッドなので蹴りぐらいでは死なず、気絶しているようだ。


 しかし、動き出すのは時間の問題だろう。


 今、近くで倒れているこいつらの動きを注意しながら眼前に立つ黒髪の少女の質問に答えようと思う。


 ふぅと息を吐き、静かに目を閉じるサラ・アマガミ。


 次の瞬間、カッと目を見開く同時に矢継ぎ早の質問が始まるのだった。


「ここはどこ? 日本じゃないよね? 外国? あたしは誘拐されたのかな? お兄さんが犯人? 日本語分かる? ニホンゴワカリマスカ? リピートアフターミー? ちっ、ノーリアクションか! その日本刀であたしを殺すつもりでしょ? それはあかんやつだからね? ラブ&ピースって知ってる? あー、分かった! あたしが超かわいいからってHなことはナッシングだからね? 初めては好きな人としたいから! さっきの変質者達にはホント参ったよ。お天道様が高い時間にもかかわらずフルフロンタルなんだもん。あっ、全裸って意味ね! 日本なら即タイーホ案件なのにさ。ここは自由奔放にも程があるよ。もし、お兄さんが全裸になったらタマキンを蹴り上げてやるので悪しからず」


「いや、あの……」


「ストップ! まだ質問は終わってない」


 あまりにもちんぷんかんぷんな質問の数々に耐えられず、腕を組んで仁王立ちする女の子に声をかけた途端、サラ・アマガミは両手をバッと前に突き出して俺の言葉を遮り、また矢継ぎ早の質問が始まる。


「もしかしてもしかすると、ここは異世界なんてことはあるのかな? これが世に言う異世界召喚ってやつ? お兄さんも召喚されてこの世界に来たって感じ? やっぱり定番中の定番で魔王を倒さないと元の世界に戻れない流れ? あたしは神様とか女神様から何のスキルももらってないんだよね。開け、ステータスオープン! ちっ、やっぱり出ない。あたしはこの世界では能無しなんだ、悲しいな。でも、そういうキャラが成り上がっていくのがデフォじゃん……ん? あれ? よく見るとあたしと同じ黒髪黒目だね、お兄さんは日本人でしょ? 言葉通じるし、絶対そうでしょ! もう、それならそうと早く言ってくれればいいのに! 白いローブを着て日本刀を持ってる男なんて怪しさレッドゾーンじゃん。両親から変な人とは目を合わすなって教えられたから。だけど、お兄さんは普通の人っぽいから安心した。さっきは変質者達から守ってくれてサンキューです!」


「…………君の()()は以上か?」


「まだあるに決まってるじゃん、これからが本番なんだから、ねっ!」


 そう言った後、人差し指と中指の二本をビシッと目に当てて変なポーズを決める女の子。


「……そ、そうか、まだあの()()があるのか」


(この女の子はサラ・アマガミではない。北部か中央に住んでいた人なんだろう。どうして()の地にいたのか、それは謎だが生存者であることは確かだ。清楚な見た目とは裏腹に砕けた感じの口調に戸惑ってしまうけれど、俺は生存者を救出することができたのだ。それがたとえサラ・アマガミでなくても、人ひとりの命を救えたのがとても嬉しい)


 そんなことを感慨深く思っていた俺に、黒髪の美少女が明るい声で言ったのだった。


「あっ、そうだそうだ、まだ自己紹介してなかったな。あたしの名前は天神沙羅! よろしくね、お兄さん♪」



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