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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第72話 遭遇

文字数:2206字

 私は今、馬車の屋根の上に一人で立っている。


 一瞬のうちに目の前から消え去っていった愛しき人。


 魔王軍先遣隊の駐屯地にいたのが魔物ではなく予想外のアンデッドなんてびっくりしたけど、それよりさらにびっくりしたのは生存者がいたこと。


 いつも冷静なレインが我を忘れて生存者を救うため、私を怒鳴りつけたのだ。


 そりゃ、生存者を助けたいって気持ちは痛いほどよく分かるよ。私だって同じ気持ちだもん。


 でも、レインの一番は私じゃなきゃダメ。 他の人を一番にするなんてもってのほか。


 それがたとえ生存者であってもね。


 私の一番はレイン。


 何よりもまず優先するのは、他の誰でもない愛しき人だ。だから、レインも私と同じ考えじゃなきダメだよ。


 レインの一番は私ってね。


 ……もう一度だけでいいからユニークスキル〈天眼〉が発現しないかなぁ。そうしたら今度は、レインが私に超ラブラブでエミリーオンリーで夢中になれって暗示をかけるのにな。


 うーん、何かイヤな予感がするんだよな。


 バカ女こと、カリン・リーズの時みたいなあのイヤな感じ……私のレインに変な女が纏わりつくのは許せないからね。


 流石にちょっと考えすぎかな。


 今回の生存者がレイン・アッシュと親しい間柄になるなんてさ。


 うん、気のせい気のせい、私の気のせい。


 もう、レインったら私をこんなところに放置して酷くない? 愛しき人は放置プレイが好きなのかな? 私は嫌いだから、さっさと生存者を救出して早く帰ってきてよね。


 ……うーん、やっぱりイヤな予感がするなぁ。


♢♢♢


 わたしは今、対魔王軍本部で汗水流して仕事に奮闘中だ。さらに言うならば、今日はいつにも増して一心不乱に仕事をしている。


 そうでもしないとどうしても考えてしまうから。


 今日の夜、わたしは愛しの人レインにとても大事な話をしなければならない。


 女神の話、暫定聖女の話、クラスチェンジの話。


 そして。


 わたしにとってもレインにとっても一番大事な話が、サラ・アマガミという女の話だ。


 わたしの想い人の相棒になる女。




 ……はぁ? ふざけんじゃないわよ!


 レインの相棒はわたし! 伴侶もわたし! 愛しの人はわたしのもの! 


 後から登場してきて全部()(サラ)うつもりかしら?


 どうりで下品な名前(サラ)だと思ったわ。


 女神曰く、超綺麗な女らしいわね。


 でも、わたしだって自分でいうもの変だけど、超超超綺麗なんだからね。


 ピチピチの16才? わたしとたったの3才差だし、16なんておこちゃまじゃないの。


 セーラー服のJK? 全然意味不明よ! あの女(女神)の説明ヘタクソ過ぎて余計に分からなくなったわよ!


 深窓の令嬢風? 風って何よ、風ってさ! まったく意味不明! あの女(女神)の説明ヘタクソ過ぎて(略)よ。


 スタイル抜群? わたしだって超スタイル抜群よ。


 黒髪のお姫様カットの清楚風? 黒髪以外は全部意味不明! あの女(女神)の説明ヘタクソ(略)よ。


 つぶらな黒い瞳は、まるでブラックホール? あの女(女神)の説明(略)よ。


 スッと通った黄金比の鼻と可愛いアヒル口は、ガチで整形したようだ? あの女(女神)の(略)よ。


 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。


 こうなるから考えないようにしてたの!


 仕事に奮闘してたの!


 教皇様()にどういうことなのか超絶尋問するため、髪をバッサバサと振り乱しながら、鬼の形相で大聖堂の中を探し回ったけど、雲隠れしたみたいで見当たらない。


 くぅ〜、もう(あったま)きた!


 今日のお昼の仕事は終わり!


 夜まで待てそうにないので、超高速でレインのところに飛ぶ! これ決定!


 今から行くね、わたしの救世主様!


♢♢♢


 俺は今、()の地にいた生存者を救うべく薄暗い森林の中を駆けている。


「必ず助けてみせる。生存者の救出を第一に考えるんだ」


 魔王軍先遣隊の駐屯地にいたのは、想定外の254人の生きる屍、アンデッドだった。


 俺の心は激しく揺れていた。


 なぜならば、今回の敵は元人間のアンデッド達だからだ。


 それはまさに言葉通りで、魔術師メメル・フロストのように魔王の眷属となった者と異なり、その姿形は人間だった時と何ら変わらない。


 いくら敵として襲いかかってこようとも、幼少の子供相手に刀を振りかざし、そして斬りつける非人道的行為などできるのだろうか。


 同じアンデッドでも勇者達と()の地にいる254人は、根本的に違うはず。


 ……それでも、やるしかない。


 たとえ女や幼き子が生きる屍、アンデッドであろうと、俺は〈刀穿〉を放って敵を天に召させるんだ。


 魔王によって誰がアンデッド云々(うんぬん)の話は忘れよう。


 俺がやるべきことはこの手で生存者の命を守ること、それ以上でもそれ以下でもない。


「!!」


 己の決意を新たにし、〈唯我独尊〉と〈縮地〉を併用発動して森林の中を駆け抜けていた時、サムライスキルが生存者の移動速度の上昇を告げてきた。


「くっ、走り出したのか」


 ダメだ、走っちゃダメだ! 君が向かう先にいるのは人間じゃない、アンデッドなんだ。


 この()の地で、たった一つの人間の反応。


 君だろ? サラ・アマガミ。


「俺が必ず君を助けてみせる」


 アンデッド達が標的を見つけたのか、集団で襲いかかっている。


 その数は8。


 前方、歩300のところにサラ・アマガミはいる。


「蹴散らしてやる、アンデッド!」


 相棒たる女、サラ・アマガミを救うべく締めの〈唯我独尊〉と〈縮地〉を発動して駆ける。


「きゃぁああ! 何よ、このオジサン達! キモッ! お巡りさん、助けて〜」


〘ドカッ!〙


「君を助けにきた、サラ・アマガミ」


「……えっ?」


 こうして、俺はサラ・アマガミ、またの名を天神沙羅と()の地にて初めて出会うのだった。



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