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Over And Over 〜或る男の悲しくも儚い異世界復讐譚〜  作者: 前田ヒロフミ


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第68話 時の覇者

文字数:2675字

 俺と拳闘士ライルまでの距離は、およそ30歩くらいはあるだろう。


 勝利を確信した表情の拳闘士は雄叫びを上げ、その男の後ろには勇者と弓士が敵の最期を見届けるため、満面の笑みを浮かべて立っている。


 現在の俺が置かれている局面はというと。


 それはまさに、前門と虎、後門の狼が如く、前方には勇者達が陣取り、後方には真っ赤に燃え盛る紅蓮の炎。


 危機は好機、好機は危機というアッシュ家の家訓は、敵である者にも言えたことだった。


(勝負は時の運とは良く言ったものだと痛感する)


 血反吐を吐き、やっとの状態でその場に立ちながら、天運に見放されたことを心の中で呟く。


(本当に悔しいよな)


 ……神の祝福によって覚醒したスキルを発動すれば、必ず目の前にいる奴等を滅殺できる。


 だが、今の状況では発動できない。


 満身創痍の俺には、もう無理なのだ。


 勇者達を(たお)すことが困難になってしまったのだから。


(悔しい)


 俺は強くなりたかった。


 誰よりも強く。


 そうだ、誰かに守られるのではなく、誰かを守れる男になりたかった。


 この大陸や世界にたくさんいるであろう弱き人を。


 エミリーやカリン、ゲイルさん、ガスさんを。


 俺が守りたかった。


 誰にも負けない力が欲しい。

 

 誰にも負けない三聖をも超える力が欲しかった。


 この俺が悪の権化たる魔王、そして魔王軍を駆逐するために圧倒的な力が欲しかったのだ。


 だけど、その願い虚しく勇者達に負けた。


 勝負は時の運。


 今はその運命をただ受け入れるしかない。


 俺は今日ここで人生の幕を下ろす。 


♢♢♢


【でも、サヨナラでござるよ。なぜって、お毛々のある奴は悪即パンチ&ついでにイケメン野郎も悪即パーンチだから。このワイが再び放つ必殺ニューブローであの世に逝け、我が好敵手()よ。ロケット波動カメハメ穀潰しのダイナマイトパンチ!】


 拳闘士ライルが敵を亡き者にするため、トドメの攻撃を繰り出す。


【オリャオリャオリャオリャオリャオリャのオリャ!】


 謎の塊。


 おそらく拳闘士の体内にあるオーラを殺傷武器として形態変化させ、鉄拳から放っているのだと思う。


 新たな攻撃手段を得た鉄拳から放たれた7発のオーラは、標的の体をことごとく撃ち抜いていった。


 分かる。


 レイン・アッシュの命は風前の灯。


 でも、最後の意地を見せる時だ。


 お前らの前では死なない。


 そんな最後の意地を見せるため、()()の〈空間転移〉を発動する。


〘ギュン!〙


(フフフ、ざまぁみろ、勇者どもめ! 俺の死ぬ瞬間が見れなくて残念だったな!)


〘バッ〙


 紅蓮の炎を飛び越え、数多(あまた)の銀矢が降り注ぐ闘技場に躍り出ると、満足感でいっぱいだった。


 レイン・アッシュ、一世一代の最後の意地を勇者達に見せつけてやれたからだ。


 俺は死ぬことになったけど、不安など一つもない。


 今の世には聖騎士エミリーと聖女カリンがいる。


 三聖がいるんだ。


 魔王が統べる魔王軍によって、この大陸、そして世界に覆われた絶望の闇、そんな闇に希望の光を照らす者。


 きっと、いや絶対に聖女様、聖堂騎士様、聖騎士様がすべての魔の者を駆逐してくれるだろう。


 あの世から幼馴染のエミリー・ファインズと大恩あるカリン・リーズを見守ることにするよ。

 

 じゃ、さよならだ。


♢♢♢


 ここはいったいどこだろう? 


 まるで柔らかな陽の光に包まれている感じで、とても暖かくて心地いい。


「ちょっと光が眩しすぎて、俺の回りがどうなってるかよく分からないな」


 当たり一面に光が満ちていて、その光が乱反射を繰り返していた。


「ははは、何だか万華鏡の中にいるみたいだな。ここがあの世ってやつか?」


〈そんなわけないでしょ〉


「……誰かいるのか?」


〈いるわけないでしょ〉


「い、いや、でも、女性の声が聞こえるんだよ」


〈うん、そうだね。あたしがレイン、あなたの頭の中に話しかけているからだよ〉


「どうして、俺の名前を知っているんだ? ここはどこなんだよ?」


〈レインは死んでないから、ここは天国じゃない〉


「死んでない!? そんなバカな! 俺は確かに数多(あまた)の銀矢で体を貫かれ死んだはずだ」


〈ま、自覚ないからしょうがないのかな。レインは神の祝福によって覚醒したスキルを無自覚のうちに発動したんだよ。そのスキルがあなたの命を助けた感じかな〉


「おい、ちょっと待て。なぜ、神の祝福のことを知っている? 君は誰だ?」


〈あっ、そっかそっか、ごめんごめん。自己紹介がまだだった。あたしはサラ・アマガミ、()()サラ・アマガミだよ!〉


「せ、聖女? 聖女はカリン・リーズのはずだ!」


〈言葉足らずがあたしのダメなところかな、超反省! ()()聖女にして真なる聖女スキル所持者。それがサラ・アマガミ、あたしってこと〉


「な、何がどうなっているのか理解が追いつかない」


〈うーん、頭こんがらがるか。えーと、カリン・リーズはクラスチェンジするの。腰掛けの聖女は卒業だね〉


「クラスチェンジ? 腰掛け?」


〈おっと、流石にあたしがキツくなってきたな。()()()から神界は結構無理があった〉


「何を言ってる? ちゃんと説明してくれよ」


〈あ〜、もうダメ、そろそろ限界が近いかも。要点だけさっと言うからね、マイバディ。あなたが勇者達の攻撃で受けた傷は、あたしの回復魔法によってそれなりには治療しておいた。人間界から念じて施した関係で、今の治療がマジで精一杯。でもさ、死ぬ寸前から軽症に回復させたんだから、めっちゃ褒めてほしいくらいだよ。あ、時間がピンチ、えと、レインは強い! ガチで強いからね! 神の祝福で覚醒した二つの必殺スキルを発動して勇者達をぶっ飛ばしてやれ! サムライスキルの〈唯我独尊〉と〈刃穿〉でね♪ あたしさ、近いうちにそっち(神界)へ行くことになってるんだ。レイン・アッシュと会えるの楽しみなの♪ 忘れないでね、あたしの名前はサラ・アマガミ。レイン、あなたのバディになる女〉


「お、おい」


〈よーし、どーんと行ってこい、レイン・アッシュ! 今度こそ勇者達を天に召させてこいやー! それじゃ、またねー♪〉


 …………な、何なんだよ、あの女。


 一人で自分語りしてさ、俺の質問にはほとんど答えてなくね?


 サラ・アマガミだっけ?


 何か不思議な女だった。


 ちょっと話しただけなのに、いっぱい元気をもらった気がする。


 フフフ、そうだ、そうだよな。


 あはははははははは!


 勝負は時の運?


 ふざけるな! 俺は運なんかに頼らない。


 自分の力で無理やりにでも勝利を手繰(たぐ)り寄せてやる。


 サラ・アマガミの言う通りだ。


 俺は強い! ガチで強い!


 時の覇者たる俺は超強い!


 待ってろよ、勇者ども。


 このレイン・アッシュが今から颯爽と紅蓮の炎の中へ舞い戻り、お前達を速攻で天に召させてやる。


 さぁ、神の祝福により目覚めし必殺スキルを発動だ。


 ――唯我独尊!



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